ホルムズ封鎖から半年 物流コスト増が秋の食品値上げに影響

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ホルムズ海峡の封鎖から半年。9月の飲食料品の値上げは、今年最多の4,923品目に上ります。背景には、原油やナフサの価格上昇に加え、ホルムズ海峡の混乱による物流コストの増加があります。

海峡を避けるための遠回りや調達先の変更は、私たちの身近な食品や日用品の価格にどう影響しているのでしょうか。
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9月の値上げは今年最多 背景に原油・ナフサ高

ホルムズ海峡の封鎖から半年。影響は少しずつ私たちの暮らしにも及んでいます。

9月の飲食料品の値上げは、今年最多となる4,923品目に上ります。帝国データバンクの調査では、1か月の値上げ品目が4,000を超えるのは2025年4月以来、1年5か月ぶりです。

背景の一つにあるのが、中東情勢の悪化による原油やナフサの価格上昇です。

ホルムズ海峡の混乱を受け、日本は原料の調達先や輸送ルートを変えてきました。供給を維持する一方で、以前よりも長い時間と多くの費用をかけて原料を運ぶ状況が続いています。

海峡は開いていても、輸送は平時に戻らず

ホルムズ海峡では現在も一部の船が通航しています。

ウェザーニューズが船のAIS(船舶自動識別装置)のデータを分析したところ、2026年8月に海峡を通過した船は96隻でした。前年同月の2,165隻から約95.6%減少しています。

そして、海峡手前にあたるペルシャ湾内では、多くの船が通航を控えて待機しています。8月17日時点では、1,000隻を超える船が停泊・待機していました。

船会社は、海峡を通れるかどうかだけでなく、乗組員の安全や到着時刻、その後の航海への影響なども考えて航路を決めます。そのため、条件が揃わなければ海峡が完全に閉鎖されていなくても、以前のように安定した輸送ルートとして使うことは難しい状況です。

さらに、長期間の待機は船にも負担をかけます。海水温が高い海域では船底にフジツボが付着しやすくなり、船の速度が落ちたり、燃料を多く使ったりする原因になります。

ホルムズ海峡を避けた先の紅海周辺にも安全上のリスクがあり、企業は危険を避けて遠回りするか、リスクを抱えて近いルートを使うか、航路や貨物ごとに判断しています。
関連記事「ホルムズ海峡での意外なリスク 巨大タンカーの脚を引っ張る“フジツボ」

日本は調達先を分散

日本は長年、原油や石油製品を中東に大きく依存してきました。

ホルムズ海峡の混乱を受け、供給を確保するために輸入先の分散を進めています。

財務省の貿易統計を見ると、2025年6月から2026年6月にかけて、中東への依存度には大きな変化がありました。

特にナフサ関連の主要品目では、2025年6月に54.81%だった中東からの輸入割合が、2026年6月には14.81%まで低下しています。

一方、原油も93.76%から64.57%まで低下しましたが、依然として輸入量の約3分の2を中東に頼っています。

つまり、日本の輸入が一斉に「中東離れ」しているわけではありません。品目によって調達先の変更が大きく進んだものと、依然として中東への依存が高いものがあります。
関連記事「食品値上げの裏に「ナフサ」 日本の代替調達を支える海上物流」

遠回りが物流コストを押し上げる

調達先や輸送ルートを変えることで、原料の供給そのものは維持されています。しかし、その裏側では「遠回りするための費用」が増えています。

例えば、米国南部から大型タンカーで日本へ原油を運ぶ場合、喜望峰を回ることがあります。中東から日本まで一般に20~30日程度の航海が、45~60日程度に延びるケースもあります。

航海が長くなれば、その分だけ燃料費が増えます。また、1隻の船が1回の輸送にかかる時間も長くなるため、年間に運べる回数が減り、船の不足や運賃上昇につながる可能性があります。

実際、航路変更によって航海日数が19日から48日に延びたケースでは、燃料費が1航海あたり約126万ドル(約1億6千万円)から約287万ドル(4億5千万円)に増えました。

こうした「封鎖を避けるための物流コスト」が、企業の負担を押し上げています。
関連記事「ホルムズ海峡で1,000隻超が待機迂回ルートにも気象リスク、日本への影響は」

日本の物流にも広がる影響

輸送方法にも変化が起きています。

出光興産は、サウジアラビア産原油の調達を続けながら、輸送ルートを分散する方針を示しています。世界の物流でも、危険な海域を避けるため、海上で別の船に貨物を移すなど、これまでとは異なる運び方が行われています。

そのなかで政府は8月26日、ホルムズ海峡を経由しない原油・ナフサの調達で増えた輸送費を支援する制度を発表しました。

追加の輸送費が支援の対象となったことからも、現在の物流が「危険を避けるための費用」や「遠回りするための費用」を抱えながら維持されていることが分かります。

実際に2026年4月以降、国内の主要エネルギーの輸入価格は大きく上昇しています。7月には値上がりのペースがやや落ち着いたものの、原油やナフサは前年の1.5~1.7倍以上という高い水準が続いています。

物流コストは、どこで暮らしに響くのか

こうしたコストの増加は、私たちの身近な商品にも影響する可能性があります。

ナフサは食品トレイやペットボトルなどのプラスチック製品の原料に使われています。原油は工場やトラック、船などを動かす燃料になります。

原料の仕入れ、商品の製造、輸送と、さまざまな段階で費用が増えれば、企業の負担も大きくなります。こうした負担が積み重なることで、時間差を伴って食品や日用品の価格に反映される可能性があります。
また、影響は農業や漁業にも及びます。

ホルムズ海峡を通る肥料の輸送が滞れば、肥料の価格上昇を通じて農作物の生産コストが増える可能性があります。また、燃料価格の上昇は、燃料を多く使う漁業の負担も大きくします。

ホルムズ海峡の封鎖は、単に原油が届きにくくなるだけの問題ではありません。

調達先を変えたり、遠回りしたりすることで、原料の輸送には以前より多くの燃料と時間が必要になっています。供給を維持するために変わった物流の仕組みそのものが、コストを押し上げています。

その影響が、秋以降の食品や日用品の価格にどこまで及ぶのか、今後も注目されます。
関連記事「ホルムズ海峡の混乱で燃料高 日本の漁業にも影響」
関連記事「ホルムズ海峡の混乱で肥料価格に影響か 日本の食料価格にも波及の可能性」

参考
・Reuters:Add a month at sea and $2.5 million - what it costs oil tankers to flee Hormuz and Bab el-Mandeb
・日経経済新聞:原油・ナフサ、ホルムズ代替の輸送費補助 調達多様化へ政府計画決定
・関連記事:「ホルムズ海峡で1,000隻超が待機 迂回ルートにも気象リスク、日本への影響は」
・関連記事:「ホルムズ海峡での意外なリスク 巨大タンカーの脚を引っ張る“フジツボ”」
・関連記事:「食品値上げの裏に『ナフサ』 日本の代替調達を支える海上物流」
・関連記事:「ホルムズ海峡の混乱で変わる原油輸送 日本の暮らしやガソリン価格への影響は?」
・関連記事: 「ホルムズ海峡の混乱で肥料価格に影響か 日本の食料価格にも波及の可能性」
※船舶の航行データ(AIS)はKpler社が提供するMarine Trafficデータを利用しています。

写真:ウェザーリポート(ウェザーニュースアプリからの投稿)
空   (宮城県)さん
ボクちゃんさん

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