ホルムズ海峡の混乱で燃料高 日本の漁業にも影響

2026-08-12 10:00 ウェザーニュース

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ホルムズ海峡の混乱を背景に燃料価格の上昇が続き、日本の漁業への影響が各地でみられています。カツオ漁では航海を短縮する動きがあるほか、潤滑油や出荷資材の調達にも影響が及んでいます。

燃料不足・高騰で操業を短縮する動き

2026年春に静岡県の御前崎港で軽油が不足し、通常は週6日行われるシラス漁が一時、週2日に制限されました。鹿児島県垂水市でも中国から養殖カンパチの稚魚を運ぶ船が必要な燃料を確保できず、輸入が遅れる事例もありました。

さらに6月以降は、燃料代を抑えるため、カツオ漁船が航海を短くして操業する動きも報告されています。影響は船の燃料だけでなく、漁船の機械に使う潤滑油や、水揚げした魚を出荷する資材にも及んでいます。

ウェザーニューズが船舶の位置情報(AIS=船の位置や進路を送信するシステム)のデータを分析したところ、2026年7月にホルムズ海峡を通過した船舶は218隻で、前年同月の453隻から約52%減少しました。

1日当たりの平均通航数も前年同月の14.6隻から7.0隻に減少し、夏に入っても通航量は前年の半分以下の状態が続いています。

カツオ漁は遠い漁場まで行かず航海を短縮

中東情勢を背景とした燃料価格の上昇は、魚の群れを追って長距離を航行するカツオ漁にも影響しています。

6月4日の衆議院予算委員会では、宮崎県日南市の南郷漁協に所属するカツオ一本釣り漁船について、通常は約1週間かけて遠い漁場まで向かうところを、燃料を節約するため航海を早めに切り上げている状況が報告されました。

カツオは季節とともに日本近海を北上するため、漁船も魚群を追って長距離を移動します。そのため燃料価格の影響を受けやすく、大型船では重油代が年間約1億円に上ります。委員会では、国の補助を受けても重油価格は20%以上上昇していることが説明されました。

航海を短くすれば、その分だけ魚群を探せる範囲や時間は限られます。燃料価格の上昇は経費を押し上げるだけでなく、漁獲量にも影響を及ぼす可能性があります。

台風期の定置網漁では潤滑油の不足も

夏の漁業では、船の燃料だけでなく、機械を動かす潤滑油も欠かせません。

宮崎県延岡市の大型定置網漁では、網を巻き上げる機械に使うタービンオイル(機械を滑らかに動かすための潤滑油)を交換したくても、必要な量を確保できない事例が報告されました。

台風が近づくと、海中に設置した定置網を巻き上げて陸へ避難させる必要があります。しかし、ローラーが途中で止まれば、網がロープに絡んで切れるなど、大きな被害につながるおそれがあります。現場で使われている網は1枚約3,000万円、5枚では約1億5,000万円になると説明されました。

農林水産省によると、山口県でも漁船用エンジンオイルを石油元売会社が直接販売する対応が取られるなど、潤滑油の供給をめぐる影響は複数の県で確認されています。

漁業用A重油は1L128円 2008年の最高値を上回る

燃料価格の上昇も続いています。

水産庁によると、全漁連が京浜地区で供給する漁業用A重油の価格は、7月1日時点で1L当たり128円となりました。

2008年には、燃料価格の高騰を受けて全国の漁業者が一斉休漁を実施しました。当時、A重油価格は翌8月に1L当たり124.6円まで上昇しましたが、2026年7月の価格はこの水準を上回っています。

漁業用A重油価格の推移
年月漁業用A重油価格
2004年1月43円/L
2008年8月125円/L
2009年4月60円/L
2014年7月103円/L
2016年3月56円/L
2018年11月94円/L
2020年5月56円/L
2022年3月109円/L
2023年9月115円/L
2026年3月128円/L
2026年7月128円/L

魚箱など出荷資材にもコスト増

影響は、魚を獲った後の出荷にも広がっています。

東京都は6月24日、中東情勢による資材価格の高騰を受け、島しょ地域の漁業者を対象に、出荷用の魚箱などの購入支援を拡充すると発表しました。

東京都漁業協同組合連合会の資材の平均仕入れ価格が2026年4月と比べて30%以上上昇した場合、補助率を購入経費の3分の2以内から5分の4以内へ引き上げます。

水産物の出荷には発泡スチロール製の魚箱や保護用フィルムなどが必要です。燃料だけでなく、こうした資材の価格も上昇すれば、漁業者の負担はさらに大きくなります。

魚価への影響も

こうした影響は魚の価格にも表れ始めています。

東京都中央卸売市場の統計によると、豊洲市場の6月の冷凍メバチの平均卸売価格は1kg当たり1,699円で、前年同月の1,157円から約47%上昇しました。2021年以降では最も高い月平均となっています。

ホルムズ海峡をめぐる混乱の影響は、漁船を動かす燃料だけでなく、機械の維持や出荷資材にも広がっています。こうした状況が長引けば、水揚げ量や市場への入荷量に影響し、消費者が店頭で購入する魚の価格にも波及する可能性があります。
ホルムズ海峡をめぐる混乱は、燃料価格の上昇だけでなく、漁船の操業や機械の維持、出荷資材の調達など、日本の漁業のさまざまな場面に影響を及ぼしています。こうした状況が長引けば、水揚げ量や市場への入荷量を通じて、消費者が購入する魚の価格にも影響が広がる可能性があります。

ウェザーニューズでは、船舶の位置情報(AIS)の分析などを通して、世界の物流や海上輸送の変化が日本の暮らしに与える影響について、今後もお伝えしていきます。

写真:ウェザーリポート(ウェザーニュースアプリからの投稿)
Yukiさん
ラズリさん
すばるαさん
気仙のホヤ大好きさん

参考
※船舶の航行データ(AIS)はKpler社が提供するMarine Trafficデータを利用しています。

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