食品値上げの裏に「ナフサ」 日本の代替調達を支える海上物流

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食品や日用品の値上げが続いています。その背景には、原材料や包装資材の価格上昇があります。さらに、その価格を左右する要因の一つが、遠く離れた中東の海上物流です。日本の暮らしにどのような影響が及んでいるのでしょうか。

食品や日用品の値上げ相次ぐ 背景にナフサの価格上昇

8月に入り、加工食品を中心に値上げが相次いでいます。帝国データバンクの調査では、原材料価格に加え、包装資材などのコスト上昇も値上げの要因となっています。

こうした包装資材などの原料の一つが「ナフサ」です。ナフサは原油を精製する際にできる石油製品で、プラスチックや合成樹脂など、さまざまな石油化学製品の原料になります。

食品そのものの原料ではありませんが、食品を包むフィルムやトレー、容器などに使われています。そのため、ナフサの価格が上昇すると、包装資材などを通じて食品の製造コストにも影響します。

中東情勢による海上物流の混乱は、日本のナフサ調達にも影響を及ぼしています。

日本のナフサ調達は中東に大きく依存

日本のナフサ調達は、国内生産に加えて海外からの輸入に頼っています。2024年時点では、約4割が国内、約4割が中東、残る約2割がその他の地域からとなっています。

中東から日本へ原油や石油製品を運ぶ際に重要なのが、ペルシャ湾とインド洋をつなぐホルムズ海峡です。

2026年3月以降、中東情勢の悪化によってホルムズ海峡を通る海上輸送が大きく制約され、日本は中東以外からの調達を増やす必要に迫られました。
経済産業省によると、中東以外からのナフサ輸入は、平時の月約45万キロリットルから増加し、4月には約110万キロリットル、5月には135万キロリットルを超えました。米国やアルジェリア、ペルーなどからの代替調達が進み、5月には平時の3倍を超える水準となっています。

「なくなった」のではなく「調達先を変えた」

ここで重要なのは、日本のナフサがなくなったわけではないということです。

中東からの調達が難しくなったため、米国や中南米など、新たな地域からの調達を増やして供給を維持しています。

ただ、調達先を変えれば、それで問題が解決するわけではありません。

中東よりも遠い地域から運ぶことになれば、航海距離や日数が長くなります。船の燃料費や運航費、保険料なども増えるため、ナフサの調達コストを押し上げる可能性があります。

海上物流の変化がコストを押し上げる

さらに、ナフサを運ぶ船は「どの海を通るか」という問題にも直面しています。

アルジェリアなど地中海側からアジアへ運ぶ場合、本来はスエズ運河を経由するルートが有力です。しかし、紅海周辺の安全上の懸念から、アフリカ南端の喜望峰を回るルートを選ぶ船が増えています。

喜望峰を回ると航海距離が大きく伸びるため、燃料費などの負担も増えます。また、喜望峰周辺から南インド洋にかけては、強い風や高いうねりなどに注意が必要な海域があります。

船は天候や海の状態を見ながら、速度を落としたり、荒天を避けて航路を変更したりすることがあります。こうした対応で航海が長引けば、物流コストがさらに増える可能性があります。

ナフサの安定供給には、「どこから買うか」だけでなく、「どの航路で、どれだけの時間をかけて運ぶか」も関係しています。

ナフサ価格は落ち着いても影響は残る

ナフサ価格は中東情勢の緊迫化を受けて急騰し、過去最高水準まで上昇しました。その後は下落に転じ、6月には高値から水準を下げています。

ただ、ナフサ価格が下がったからといって、すぐに店頭価格が元に戻るわけではありません。

食品メーカーが負担するコストには、原材料だけでなく、包装資材、物流、エネルギーなどさまざまな費用が含まれます。特に包装資材は、ナフサなど石油化学製品の価格変動の影響を受けます。

帝国データバンクの調査でも、2026年7月の食品値上げでは、原材料高に加えて物流費や包装・資材の上昇が大きな要因となりました。中東情勢による原油・ナフサ価格の上昇も、トレーやフィルムなどの資材価格を押し上げる要因となっています。

海の変化が、食卓の価格につながる

ナフサは普段の生活ではあまり意識することはありませんが、食品の袋やトレー、容器、日用品のプラスチック製品など、身近なものの原料になっています。

日本は資源の多くを海外から運んでいるため、海上物流の変化は決して遠い話ではありません。

海の向こうで起きた変化が、船の航路や輸送コストを通じて、私たちが毎日手にする食品や日用品にも影響します。今後も原料価格や物流コストの高止まりが続けば、食品や日用品の価格に影響が及ぶ可能性があります。

参考
・経済産業省「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保」「エネルギーを巡る最近の動向について」
・LNEWS「食品値上げ/物流費・包装資材高騰で値上げ続く、通年2万品目台へ突入か」
・化学工業日報「4~6月の国産ナフサ11・8万円 上げ幅含め最高」
・e-Stat「普通貿易統計/貿易統計_全国分/品別国別表 輸入」

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