温暖化・猛暑でぶどう産地がピンチ!? ぶどうへの気候変動の影響

2025-10-16 05:10 ウェザーニュース

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果物のおいしい季節、みずみずしいぶどうをたっぷり味わった人も多いことでしょう。しかし、今年6月から異例の暑さに日本列島が包まれ、それから続いた猛暑による農作物への影響が憂慮されていました。

山梨県のぶどう狩り園の「久保田園」の久保田雅史さんは、「7月の高温などにより全体的に粒が小さく軽くなりました。高温で糖度が上がらない、色がつかないなどの影響があります。今年は気温の変化とぶどうの生長のタイミングがずれ、出来に影響しました」といいます。

ぶどうは、国内の果実産出額の1位を占めるほど人気の高い果物ですが、近年は気候変動による影響が懸念されているといいます。温暖化でぶどう栽培にどのような影響があるのでしょうか。

気温との関係が深いぶどう栽培

日本の年平均気温は、1898~2024年の間に100年あたり1.40℃のペースで上昇しています。特にここ数年は記録的な高温が増えています。

温暖化の影響は、農業生産の現場にも変化をもたらしています。ぶどうでも、果皮の色が品種本来のものとならない着色不良、果面の日焼け、果粒が十分に大きくならない、発芽や満開のタイミングが早まることが指摘されています。
たとえば、人気品種の「巨峰」は、満開後50〜92日の平均気温が果皮の色に影響することがわかっていますが、将来温暖化が進み適応策を導入しなかった場合、着色不良地域が大きく拡大してしまうことが予想されています。

ぶどうへの温暖化の影響に詳しい神戸大学大学院農学研究科附属食資源教育研究センター助教の上森真広先生は、「国内の果樹ではりんごや日本ナシで開花期が早くなったことが報告されています。ぶどうでも同様の傾向がみられており、これまでの経験による栽培がうまくいかなくなる可能性がある」といいます。

「デラウェア」と温暖化の影響

上森先生は国内生産ぶどうの代表的な品種の1つ、「デラウェア」への温暖化への影響について調べました。

「大阪府羽曳野市で1963〜2010年の48年間にわたる気温と発芽日や満開日などのデータをもとに温暖化の影響を検証しました。

その結果、気温上昇と呼応するように、発芽日、満開日が早まっていることが明らかとなりました」(上森先生)
「ぶどうの発芽や満開のタイミングは、病害虫防除や種なしにするためのジベレリン処理の適期に関わります。

この発芽や満開が温暖化の影響を受けて大きく変動しているため、過去の経験にもとづいた栽培管理が難しくなっています」(上森先生)

上森先生は、「デラウェア」栽培への今後の温暖化の影響についても調べました。気温から「デラウェア」の発芽日、満開日を予測するモデルを開発し、IPCCの2つの温室効果ガス排出予想シナリオで検証したのです。
「2050年までの気温上昇により、現在(2011〜2020年)と比べ、発芽日で1〜3日程度、満開日が4〜7日程度早まることがわかりました。

この程度であれば栽培管理の高度化で対応可能と考えられます。

2050年以降については、温室効果ガス排出が低めを想定している2℃上昇シナリオ(RCP2.6)であれば気温は2050年前後と同じくらいと考えられます。

一方、温室効果ガス排出を高めに想定している4℃上昇シナリオ(RCP8.5)では、栽培管理だけでは対応が難しくなることが予想されます。

そのため、加温栽培の作型の見直しや他の果樹への転換なども含めて検討する必要があるかもしれません」(上森先生)

将来ぶどう栽培は?

巨峰の花。開花時期の気温も出来に影響する
今年の気象もぶどう栽培に影響しているようです。久保田園では「4〜5月の乾燥、花が咲くタイミングの6月後半の低温、粒が大きくなる7月に高温になり過ぎ」と、異常な天候により出来に影響の出た品種があったといいます。

「ぶどうなど果樹栽培では、植え替えが一年生作物よりも難しく、温暖化への適応策は10年、20年先を見据えて検討する必要があります。幅広い温暖化の影響予測に対応できるように、今のうちから将来の適応策の策定を進めることが重要です」(上森先生)

私たちがおいしく食べられているぶどうは、農家などの努力によって、気候と技術のギリギリのバランスの上に成り立っているのかもしれません。これまでぶどう栽培で保たれてきたバランスが崩れてしまうということは、植物全般への影響も考えなければなりません。温暖化の影響を軽減するためにも、今、私たちができることは何かを考えていきたいですね。

ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、様々な情報をわかりやすく解説し、皆さんと一緒に地球の未来を考えていきます。
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参考資料
上森真広氏ほか「長期観測データに基づいたブドウ'デラウェア'の発育への温暖化の影響評価と発育予測モデルの開発に関する研究」、農林水産省「農業生産における 気候変動適応ガイドぶどう編」
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