欧州5カ国の熱波、社会・経済的影響は約20.2兆円(約1,122億ユーロ)と試算

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2026年夏は欧州各地で熱波が相次ぎ、フランス、スペイン、イタリア、ギリシャ、ポルトガルの5カ国では、健康被害をはじめ、農業や電力、経済活動など幅広い分野に影響が及びました。

ウェザーニューズでは、今年の夏の熱波を振り返り、この5カ国で生じた社会・経済への影響を独自に試算しました。その結果、影響額は5カ国合わせて約20.2兆円(約1,122億ユーロ)にのぼると推定されます。

5カ国の社会・経済的影響は約20.2兆円

※推計は円建て基準で1ユーロ=180円で参考換算しています。各国の数値は概算であり、端数処理のため合計と一致しない場合があります。山火事による直接的な被害は別途算定しています。

高温と乾燥で作物が生育不良 農業への打撃が鮮明に

欧州委員会共同研究センター(JRC)が9月28日に公表した報告では、夏の高温と降水不足による農業被害が浮き彫りになりました。

西・中欧を中心に干ばつで土壌水分が低下し作物の生育が早まった結果、穀粒や塊茎などが十分に育たず、一部地域では大幅な減収や収穫を断念するケースもみられました。

9月時点のJRCの見通しでは、EUの主要夏作物の予想収量は過去5年平均を下回り、大豆で15%、青刈りトウモロコシで14%、テンサイで11%、穀粒トウモロコシで8%、ジャガイモで7%低い水準が見込まれています。

また、草地や飼料の減少による畜産業への影響も懸念されています。

フランス:相次ぐ熱波、死亡者数が通常予想される水準を大きく上回る

フランスでは夏に複数回の熱波が発生し、人命に重い影響を与えました。

フランス公衆衛生局によると、熱波が発生した期間中の死亡者数は、通常予想される水準を大きく上回りました。6月17日〜7月2日は少なくとも5,764人、7月3日〜22日は1,243人、7月27日〜8月20日は817人、合わせて7,800人を超える死亡者数の増加があったと推計されています。

なお、これは熱中症などによる死亡者を直接数えたものではありません。熱波の期間中に、通常なら予想される死亡者数より何人多く亡くなったかを統計的に推計したものです。つまり、過酷な気象が社会の健康インフラにいかに大きな負荷をかけたかを示しています。

スペイン:1869年以降で最も暑い夏 降水量は平年の56%

スペイン気象庁(AEMET)によると、2026年6〜8月の本土の平均気温は24.5℃で平年を2.4℃上回り、1869年以降で最も暑い夏となりました。

熱波は複数回発生し、9月上旬まで高温が続きました。また、夏季の降水量は平年の56%にとどまり、1961年以降で3番目に少ない記録的な水不足となりました。

深刻な渇水と極端な高温が重なったことで、農業生産をはじめとする地域産業はかつてない強い打撃を受けています。

イタリア:冷房需要と労働生産性の低下が顕著

イタリアでも夏季の高温と乾燥が広い範囲を襲いました。

JRCの分析によると、国内の広域で35℃を超える猛暑日が平年より大幅に増加しています。

猛烈な暑さは農作物の生育や水利用に打撃を与えただけでなく、冷房需要の急増を招いて電力網に負荷をかけました。さらに屋外作業の中断や効率低下を招き、労働生産性を押し下げています。

ギリシャ:観光と農業に影 行動制約が地域経済の重荷に

ギリシャでも夏の厳しい暑さが主要産業に影を落としました。

観光需要が集中する夏季に過度の高温が続いたことで、日中の屋外活動が制約され、旅行者の行動変化が観光関連事業に影響を及ぼしています。

また農業分野では高温と水不足が作物の生育を妨げ、灌漑需要の急増が電力消費を押し上げる要因となりました。

ポルトガル:水不足が深刻 農業と屋外作業を熱波が圧迫

ポルトガルでも高温と乾燥が長引き、農業や水資源、電力需要に影響がみられました。

土壌水分の不足によって灌漑需要が増加し、限られた水とエネルギーの確保が大きな課題となりました。

また建設現場や農作業などの屋外作業では暑さ対策による作業効率の低下を余儀なくされ、観光分野でも活動の制約が生じました。天候悪化による生産性の低下が地域社会の経済活動を幅広く圧迫した実態が、試算結果にも示されています。

欧州の農作物減収は食品価格へ波及 日本の食卓にも影響のおそれ

2026年夏の熱波は、人々の健康だけでなく社会経済に約20.2兆円もの大きな爪痕を残しました。夏が過ぎた今、懸念は農産物の収穫量減少や食品価格の高騰という長期的な課題へ移行しています。

欧州での作柄悪化は国際市場を通じて波及し、輸入に頼る日本国内の食料品や外食価格に跳ね返る可能性があります。

異常気象は決して遠い異国の問題ではなく、私たちの生活実感や家計に直結する課題として今後も注視していく必要があります。
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◼︎算出根拠と推計方法
今回の試算では、各国の気象データや人口・経済統計、農業・エネルギー関連データなどの公開情報をもとに、人的・健康影響、農業、電力、観光、労働生産性など、各国で確認された主な影響を経済価値に換算しています。

算定にあたっては、夏季終了後に公表された各国政府・公的機関の実績データとも照合し、裏付けが十分でない一部の人的影響などは本記事掲載額から除外しています。また、同時期に発生した山火事による直接的な被害は、本記事とは分けて別途算定しています。

なお、本試算は公的機関による確定被害額ではなく、一定の前提条件に基づくウェザーニューズ独自算定による推定値です。円建ての推計額を基準とし、ユーロへの参考換算には1ユーロ=180円を使用しています。

◼︎主な出典・参考情報
・欧州委員会共同研究センター(JRC):MARS Bulletin、European Drought Observatory
・Santé publique France:2026年熱波期間中の全死因超過死亡
・スペイン気象庁(AEMET):2026年夏季気候総括
・各国気象機関、政府・統計機関:人口、経済、農業、電力、健康関連統計

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