オマーン沖でタンカー座礁 日本の暮らしにも関わる海上輸送のリスク

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オマーン沖で座礁した原油タンカーから流れ出た油が、オマーン南部の海岸に到達しています。現地では強風や高波が続いており、油がさらに広がることや、海の生き物への影響が心配されています。

今回の事故は日本から遠く離れた場所で起きていますが、日本が使う原油の多くは中東から海を渡って運ばれています。中東周辺の海上輸送に問題が起きれば、燃料や電気、物流などを通じて、私たちの生活にも影響する可能性があります。

タンカーから流れ出た油が海岸へ

オマーン沖で座礁した原油タンカー「キャロライン・ベゼンギ」から流れ出た油が、オマーン南部の海岸に到達しています。船には約80万バレルのロシア産原油が積まれていたとみられます。

オマーン環境庁は8月10日(月)、海の上に広がった油が約390平方キロメートルに達し、海岸まで最短約7kmに迫っていると発表しました。その後、8月12日(水)には海岸への到達が報じられ、8月15日(土)にはラス・マドラカで約12kmにわたって油による汚れが確認されています。

油は風や海の流れ、波によって運ばれます。現地では夏の時期に吹く強い南~南西の風と高波が続いており、油が海岸に流れ着いた一因とみられます。

今後も風や波の状況によって、油がどこまで広がり、どの海岸に流れ着くかが変わる可能性があります。

アデン湾で速度が急低下

ウェザーニューズが船舶の位置情報(AIS)データを分析したところ、キャロライン・ベゼンギは日本時間の6月6日(土)7時51分頃、イエメン南岸沖のアデン湾東部で速度が急低下しました。

当時、同船はスエズ運河を抜けてインド洋へ向かう航路を進んでおり、AISの目的地情報では、インド西部のシッカ港へ向かっていました。

速度は約9.0~9.7ノットから1.0~2.0ノット程度まで低下し、その後は低速で北東方向へ移動しました。日本時間の6月12日(金)7時26分を最後にAISで位置を確認できなくなっています。

その後、6月30日にオマーン沖で座礁したとされています。

海の生態系に長期的な影響も

ペルシャウ

タンカーが座礁したのは、オマーン南部のクリアムリア諸島にあるアル・キブリヤ島の西側付近です。

ユネスコによると、周辺にはサンゴ礁や多様な魚が生息し、ウミガメが産卵に訪れます。クジラやイルカも確認されているほか、ペルシャウ(海鳥)の繁殖地として、オマーン国内で唯一確認されている場所です。

油が海岸や浅い海に広がると、魚やウミガメ、海鳥などが油に触れるおそれがあります。砂浜や海底に油が残れば、影響が長く続く可能性もあります。

現在、流れ出た油を回収する作業やタンカーを安定させる作業が進められていますが、現地では風が強く波も高いため、作業が難しい状況です。

強風と高波で油がさらに広がるおそれ

油がどこへ流れるかは、風や海の流れ、波の状況によって変わります。

オマーン南部では夏の時期に「ハリーフ」と呼ばれる季節風が吹き、南~南西からの風と高い波が続きます。この風や波によって、海に流れ出た油が海岸に運ばれたり、広い範囲に広がったりする可能性があります。

ウェザーニューズの予報では、8月末にかけてアラビア海沿岸で南~南西の風が続き、オマーン沖では3~4mの波となる見込みです。

風や波が強い状態が続けば油がさらに広がるとともに、海が荒れていることで油を回収するなどの作業も難しい状態が続く可能性があります。

なぜ日本にも関係するのか

今回流出した油が日本まで流れてくるわけではありません。

しかし、オマーンを含む中東周辺は、日本のエネルギー供給にとって重要な地域です。日本は原油輸入の約94.7%を中東に依存しています。

中東周辺でタンカー事故や攻撃が相次ぎ、船が安全に航行できなくなれば、原油の輸送が滞ったり、運ぶための費用が上昇したりする可能性があります。

そうなれば、原油価格を通じてガソリンや灯油、電気、物流など、私たちの暮らしにも影響が及ぶおそれがあります。

今回の事故は、遠く離れたオマーンの出来事に見えて、日本のエネルギーが海外から海を通って運ばれていることを改めて考えるきっかけとなる事故です。

「影の船団」が抱える課題

キャロライン・ベゼンギは、ロシア産原油の輸送に関わったとして、英国の制裁対象となっています。

国際油濁補償基金は、世界に600~1,100隻の影の船団があるとしています。船の安全管理や保険の状況が十分に確認できない場合、事故が起きた際に、誰が責任を負い、油の回収や被害への補償を行うのかが難しくなります。

今回の事故では流れ出た油が海岸まで達しました。油がどこへ向かうのかを早く把握することに加え、事故が起きたときに誰が対応し、被害をどう補償するのかが課題となっています。

※「影の船団」とは、制裁を回避して原油などを輸送するために使われ、所有者や船籍、保険関係が不透明な場合が多い船舶群を指す通称

ウェザーリポート(イギリス海軍の23型フリゲート/2023年退役)

ウェザーニューズでは、現地の風や波、海の流れなどを確認しながら、油がどこまで広がり、今後どの方向へ流れやすいのかを追っていきます。

遠く離れた海で起きた事故でも、日本の暮らしは海を通じて世界とつながっています。今後も現地の状況を確認しながら、環境への影響や日本へのつながりをお伝えします。

参考
・Oman Observer:Oil slick from grounded ship 'Caroline Bezengi' extends 390sqkm off Oman’s Dhofar coast
・Times of Oman:12km-of-coastline-in-ras-madrakah-affected-by-oil-spill-ea
・Anadolu Ajansı:Oil leaking from grounded tanker started reaching Oman mainland: UN shipping agency
・ITOPF:Fate of Oil Spills
・UNESCO:Al Hallaniyyat Islands Proposed Nature Reserve
・Curtin University:Oil spill still contaminating sensitive Mauritius mangroves three years on
・GOV.UK:List of Russia sanctions targets, 24 February 2026
・IOPC Funds:THE POTENTIAL IMPACT OF SANCTIONS ON THE INTERNATIONAL LIABILITY AND COMPENSATION REGIME
※船舶の航行データ(AIS)はKpler社が提供するMarine Trafficデータを利用しています。


TOP画像:AFP PHOTO / OMAN TV / HANDOUT

写真:ウェザーリポート(ウェザーニュースアプリからの投稿)
しおかぜ࿓さん

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