海賊リスクは「穏やかな海」で高まる? シンガポール海峡で増える背景とは

2026-08-19 16:00 ウェザーニュース

シェアする

x_shareline_share
copy_share

リンクをコピーしました

シェアする

x_shareline_share
copy_share

リンクをコピーしました

世界の海賊・武装強盗事件は、いまシンガポール海峡に集中しています。2025年には、世界で報告された事件のおよそ6割がこの海域で発生しました。

海賊の活動は社会情勢だけでなく、海の荒れ具合など気象条件にも影響を受けます。なぜシンガポール海峡で事件が増えているのか、海の状態との関係から見ていきます。

世界の海賊被害はシンガポール海峡に集中

ICC国際海事局(IMB)の2025年統計によると、世界で報告された海賊・武装強盗事件137件のうち、約80件がシンガポール海峡で発生しました。全体のおよそ6割を占めています。

「海賊」と聞くと、インド洋西部にあるソマリア沖や、紅海とインド洋を結ぶアデン湾を思い浮かべる人もいるかもしれません。2000年代後半には、船舶の乗っ取りや人質拘束を伴う事件が相次ぎ、世界の海運に大きな影響を与えました。

しかし現在、事件の発生数で見ると中心となっているのはインド洋周辺ではなく、世界でも船の往来が多いシンガポール海峡へと変化しています。

件数が多い=最も危険とは限らない

ただし、発生件数が多い海域ほど危険というわけではありません。

シンガポール海峡で多いのは、夜間に小型船で近づき、船の備品や金属類などを盗むケースです。2025年の事件数は2024年の43件から約80件へ増加しましたが、船の乗っ取りや発砲は確認されていません。また、多くの事件では乗組員への被害も確認されていません。

一方、ソマリア沖では2025年の事件は5件でしたが、船の乗っ取りや人質拘束など、危険度の高い事件が中心でした。

つまり、シンガポール海峡は「発生件数が多い海域」、ソマリア周辺は「一件あたりの危険度が高い海域」といった違いがあります。

※シンガポール海峡で発生している事件の多くは、各国の領海内で起きているため、国際的には「海賊(Piracy)」ではなく「船舶に対する武装強盗(Armed Robbery against Ships)」に分類されます。一般的には海賊事件として扱われることもありますが、発生場所によって呼び方が異なります。

なぜシンガポール海峡で事件が増えているのか

背景には、いくつかの要因があります。

シンガポール海峡では、経済的な困難を背景に、小規模な犯罪グループによる窃盗が発生しています。

一方、ソマリア周辺では、中東情勢の変化によって各国の警戒態勢が変わり、以前より海賊対策が届きにくくなっています。

そして、もう一つ重要なのが「海の状態」です。

海賊が使う小型船は、波が高い場所では安全に航行しにくく、船に近づくことも難しくなります。そのため、海が荒れる時期には活動しにくく、穏やかな時期には活動しやすくなる傾向があります。

海が穏やかな場所ほど狙われやすい

実際に海の状態と事件の発生場所を比べると、その関係が見えてきます。

アラビア海では、南西モンスーンによって海が荒れる時期は海賊事件は少なくなります。代わりに、陸に近く比較的波が穏やかなアデン湾やソマリア沿岸では事件が発生しやすくなります。

シンガポール海峡も同様です。

マレー半島とスマトラ島に囲まれたこの海峡は、周囲の陸地に守られているため、外からの大きな波が入りにくく、年間を通じて比較的穏やかな海が続きます。

穏やかな海は船舶にとって航行しやすい環境である一方、小型船で接近する海賊にとっても活動しやすい条件になります。

海が荒れていても油断は禁物

ただ、海が荒れていれば危険がなくなるわけではありません。

海の状態は、海賊が活動しやすいかどうかを左右する一つの要素です。実際には、治安情勢や周辺の警戒態勢、最新の発生情報なども合わせて判断する必要があります。

船舶では、夜間の照明管理、不審船への警戒、侵入されやすい場所の監視など、基本的な対策を継続することが被害防止につながります。

万が一の場合も、乗組員の安全を最優先にし、無理な抵抗を避けて速やかに関係機関へ通報することが重要です。

海の状態を知ることが安全運航につながる

海賊・武装強盗事件は、社会情勢や治安だけでなく、海の状態にも影響を受けています。

穏やかな海は船にとって安全に航行しやすい環境ですが、同時に小型船が活動しやすい環境にもなります。

気象や海の変化を把握することは、航行の安全を考えるうえで重要な情報の一つです。
ウェザーニューズでは、世界各地の気象・海洋データをもとに、海上輸送に関わるみなさまへ最新の気象情報を提供しています。

海の状態を正しく把握し、変化を予測することは、安全な航行やリスク管理につながります。今後も海の安全を支える情報発信を続けていきます。

参考
※船舶の航行データ(AIS)はKpler社が提供するMarine Trafficデータを利用しています。

写真:ウェザーリポート(ウェザーニュースアプリからの投稿)
Hako toriさん

シェアする

x_shareline_share
copy_share

リンクをコピーしました

お天気ニュース

各エリアの天気予報

アクセスランキング

アメダスランキング

気温

降水量

湿度

  • 順位

    地点

    観測値

    ()

    ()

    ()

お天気ニュース

ウェザーニュース公式SNS
  • https://gvs.weathernews.jp/onebox/img/sns_facebook.svg
  • https://gvs.weathernews.jp/onebox/img/sns_x.svg
  • https://gvs.weathernews.jp/onebox/img/sns_line.svg
  • https://gvs.weathernews.jp/onebox/img/sns_youtube.svg
  • https://gvs.weathernews.jp/onebox/img/sns_insta.webp
  • https://gvs.weathernews.jp/onebox/img/sns_tiktok.svg