地球温暖化のウソ? ホント?(28)南方の虫が日本列島を北上しているって、本当?

2026-07-26 05:10 ウェザーニュース

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桜の開花日が早まったり、猛暑で農作物が育たなかったり、北海道でも真夏日や猛暑日が増えたりと、地球温暖化の影響は至る所に見られます。

その影響は小さな生き物である虫たちにも及んでいます。

地球温暖化との関係で昆虫の世界にどのようなことが起こっているのか、気候変動問題の専門家である江守正多さん(東京大学 未来ビジョン研究センター教授)の監修のもと見ていきましょう。

Q1/南方のチョウやセミ、カメムシなどが北上しているって、本当?

西日本から分布を広げているナガサキアゲハ

◆A/本当です。ナガサキアゲハやクマゼミなどが生息域を北方へ広げています。

日本列島に限っただけでも、多くの昆虫類が北へと生息域を広げています。

たとえば、ナガサキアゲハはかつて西日本で主に観察されていましたが、近年は生息域を北方へ広げています。

国土交通省河川局は2005年1月に発表した「平成15年度『河川水辺の国勢調査』結果の概要について」の中で次のことを記しています。

~文献による国内の記録では、本種(注/ナガサキアゲハ)は1920年代までは四国南部、九州以南に分布していたものが、1980年代初頭には近畿地方、1997年には静岡県浜松市まで生息域が拡大し、2000年までに神奈川県、埼玉県内でも目撃されるなど、この20年あまりで急速に北上を始めたことがうかがい知れます。なお、近年の研究では、本種の北上の経過と各地の気温の相関関係を分析し、年間の平均気温が15度程度に上昇すると、ナガサキアゲハの分布がみられるようになると報告されています。~

ナガサキアゲハは東北地方の宮城県でも観察されたという報告もあります。
ツマグロヒョウモンというチョウも、以前は西日本を中心に生息していましたが、今では東北地方南部でも見られます。ツマグロヒョウモンも、この20~30年で急速に分布を広げました。

チョウだけではありません。クマゼミ、ホソミイトトンボ、カメムシの一種のアカスジカスミカメなど、多くの昆虫の北上が確認されています。これには、地球温暖化も影響していると考えられています。

Q2/ヤブカが日本列島をどんどん北上しているって、本当?

黒と白のしま模様が特徴のヒトスジシマカ(ヤブカ)。近年は生息域が北へ広がっている

◆A/本当です。ヤブカの一種(ヒトスジシマカ)の生息域は本州最北部に達しました。

刺されるとかゆくなるだけでなく、感染症を媒介することもある蚊は、人にとってやっかいな存在です。

その蚊の一種で、体長約5mm、黒と白のしま模様のあるヒトスジシマカ(一般的には、ヤブカ/藪蚊の一種として知られます)は、その名のとおり、藪や公園、墓地などにいます。

以前は北日本ではほとんど見られず、1950年ごろまでは北関東が日本における北限とされていました。
しかし、次第に北上し、2000年には岩手県南部の一関市や秋田県北部の能代市で、2009~2014年には岩手県中部の盛岡市や秋田県北部の大館市で生息が確認されました。さらに2015年には、青森県の青森市や八戸市でも確認され、生息域は本州最北部に達しました。

ヒトスジシマカはこの60年余りで、約400kmも生息域を北上させたことがわかります。

ヒトスジシマカは年平均気温11℃以上で定着することができるという目安があります。

青森市の1991~2020年の平均気温の平年値は10.7℃ですが、2016~2020年の平均を見ると11.1℃、さらに2021~2025年の平均は12.0℃となり、ヒトスジシマカの生息域である「11℃以上の場所」に入ったことがわかります。

このまま気温上昇、地球温暖化が進めば、将来はヒトスジシマカが北海道にも本格的に“上陸”することを懸念する向きもあります。

Q3/北方の虫は温暖化ですみかを追われているの?

◆A/地球温暖化が高山性の昆虫などに影響を与えているという報告があります。

北上したり増えたりしている昆虫だけではありません。

地球温暖化が寒い地域を好む昆虫や高山にすむ昆虫に影響を与えているという報告もあります。

たとえば、ミツバチに似たハチのマルハナバチにも影響を与えています。

温暖化により、花の開花時期とマルハナバチの活動時期にずれが生じる可能性も

北海道大学が2025年9月に発表したプレスリリース「高山帯のマルハナバチは温暖化でどうなるか?」には「温暖化で花が早く咲く一方、マルハナバチの活動時期はそれほど早まらず、両者の間に時期的なずれが生じる。そのずれが大きい年ほど、高山性マルハナバチの一部の種では翌年の個体数が減少することが、12年間に及ぶ調査で示された」旨が書かれています。

また、環境省は2014年10月に「モニタリングサイト1000高山帯調査とりまとめ報告書の公表について(お知らせ)」と題して、冒頭に次の文章を載せています。

~環境省生物多様性センターでは、モニタリングサイト1000事業の一環として実施している高山帯調査について、調査が始まった平成21年度から24年度までの調査成果のとりまとめを行いました。
(中略)
高山帯は温暖化により高山帯特有の動植物種の減少や消失などの著しい影響を受けると考えられており、今回の結果はこれを懸念させるものとなりました。
(後略)~

地球温暖化が昆虫など高山帯の動植物の減少、さらには消失までに大きな影響を与える可能性があることが、環境省によって明言されていることがわかります。

Q4/地球温暖化は昆虫などの生態系にどんな影響を与えているの?

◆A/昆虫を含む生き物の分布や活動時期が変わると、生態系のつながりが崩れます。農業や健康などを通じて私たち人間にも影響が及ぶ可能性があります。

こうした変化は、生態系や私たちの暮らしにどのような影響をもたらすのでしょうか。

「自然の中では、植物の花粉を運ぶ虫、虫を食べる鳥、枯れ葉や死骸を分解する虫など、さまざまな生き物が長い時間の中で複雑な関係を築いてきました。昆虫は、そのつながりを支える大切な一員です。

今回見てきたように、温暖化は昆虫の分布や活動する時期を変え、植物やほかの生き物との関係に『ずれ』を生じさせます。大切なのは、ある虫が増えた、減ったということだけでなく、生態系全体のつながりが変わる可能性があるという点です。

そうした変化は、人間社会にも無関係ではありません。農業では受粉や害虫、健康の面では感染症を運ぶ昆虫などを通じて、私たちの暮らしや健康に影響が及ぶ可能性があります。
また、生き物が人間社会から受けている影響は地球温暖化だけではないことも忘れてはいけません。生息地の破壊や分断、農薬などによる汚染、外来種、過剰な採取や捕獲といった問題が同時に進み、互いに影響を強め合っています。

だからこそ、どの生き物が、どこで、いつ現れるのかを注意深く見ていくことが大切です。昆虫の分布や活動時期の変化は、自然界で起きている異変を私たちが感じ取るための、大切な手がかりになるかもしれません」(江守さん)

昆虫の変化は、地球温暖化が自然環境や私たちの暮らしに及ぼす影響を考える上で、大切な手がかりの一つです。身近な自然の変化にも目を向けてみませんか。

ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、皆さんと一緒に地球の未来を考えていきます。
【気候変動特集】ウェザーニュースと考える地球の未来
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監修/江守正多 東京大学 未来ビジョン研究センター 教授(@seitaemori)

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