暑すぎて野菜が育たない? 食卓を支える「耐暑性品種」の実力

2026-07-14 09:00 ウェザーニュース

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梅雨明けの便りも聞かれるようになり、いよいよ夏本番を迎える季節となりました。日本には四季があり、季節ごとに食べ物や暮らしを工夫してきました。

ところが近年は世界的な気候変動の影響により、季節感がゆらぎつつあります。生活への影響が大きいところでは、農業でも高温障害の発生や栽培適地の北上などが問題となっています。解決策の一つとして注目されているのが“品種の開発”です。

猛暑で変わる野菜売り場

野菜の入荷量や価格の不安定化、品質への影響などが話題になる機会が増えています。気候変動の影響は、野菜売り場にも及んでいます。

「産地や生産の現場では、さまざまな変化が生じています。なかでも大きいのは、想定を超える暑さの影響です」と話すスーパーマーケット「アキダイ」(本社・東京都練馬区)の秋葉弘道社長は続けます。

「例えば、トウモロコシは以前は10月半ばごろまで出回っていましたが、近年は時期が1ヵ月ほど早まってきています。そのため、秋祭り用の注文に応えられなくなったり、近郊から仕入れる『朝採りコーン』が半月ほど早く終わったりすることもあります。

また、売り場に並びにくくなっているものもあります。春に出回る花わさびや葉わさびは、高温の影響で入荷がほとんどなくなっています。サクランボの人気品種『佐藤錦』も栽培が難しくなっていると聞きます」(秋葉社長)

高温がミニトマト栽培の大きな壁に

日本有数の種苗会社として世界中の生産現場に種を届けているサカタのタネ(本社・神奈川県横浜市)でも、「気候変動については重要な課題の一つとして認識しています」としています。

日本の年平均気温は1898~2025年の間に100年あたり1.44℃の割合で上昇しています。サカタのタネでは、高温下でも安定した生産と品質を実現できる品種の開発を進めていますが、その一例がミニトマトです。

「近年、気候変動の影響による猛暑日の増加により、ミニトマト栽培では高温対策が大きな課題となっています」(サカタのタネ・コーポレートコミュニケーション部 中野真由さん)
東京都中央卸売市場のミニトマト卸売平均価格をみても、2024年と2025年はいずれも高温の影響を受けた夏から秋にかけて価格が大きく上昇しました。

「高温環境下では、花粉の受精能力が低下し、着果不良が起こります。また、実が青い状態でも収穫できる大玉トマトとは異なり、ミニトマトは熟して赤くなった状態で収穫・出荷する必要があります。

しかし、気温が高い時期に収穫が遅れると、すぐに果実が割れる『裂果』や果実が軟らかくなる『軟果』につながります。

こうした問題は収量や出荷品質の低下につながり、生産現場の大きな負担となっています」(中野さん)

暑さに負けない品種を作る技術

高温環境における安定生産を目指して開発された耐暑性品種のミニトマト「キャロルポポ」(写真提供:サカタのタネ)

こういった問題の解決策として注目されているのが耐暑性品種です。“新しいタネ”はどのように開発されたのでしょうか。

「野菜などの新しい品種を作り出すことを育種(ブリーディング)といいます。

まず膨大な遺伝資源の中から、目標に合わせたタネを選んで栽培します。採れたタネから再び選抜を繰り返し、親となる系統を作ります。
次に異なる親系統を交配してできたタネを採ります。この過程を繰り返して、目的とした形質を発揮する新品種を作り出すのです。

新しいミニトマトの『キャロルポポ』という品種は、夏の暑い時期でも樹勢を維持できるほか、花粉の受精能力が落ちにくい、果実が割れにくい、果実サイズがそろうなどの性質を兼ね備えています。2024年11月下旬から種子を発売しており、安定した生産が期待されています。
また、果肉が厚いため果実も軟らかくなりにくく、出荷時の青果品質はもちろん、店頭での棚持ちや食味がよいことも特長です。さらに、花が付きすぎず摘花作業を省力化できるほか、収穫できる果実の高さがそろうことで収穫もしやすく、生産現場の負担軽減にも役立ちます。

サカタのタネでは、大玉トマト、ミニトマト、ダイコン、ブロッコリー、ニンジン、スイートコーン、キャベツなど、さまざまな品目の耐暑性品種を開発しているといいます。例えば夏ダイコンでは、高温期に発生しやすい内部の変色や病害を抑え、品質を維持しやすい品種の開発も進められています。

「『育種10年』という言葉がありますが、育種はタネまきから栽培、交配、タネを採り選抜という繰り返しが必要です。10年先の環境や食生活を見据え、地道な努力を積み重ねて開発しています」(中野さん)

未来の食卓を守るために

耐暑性のあるダイコン品種「夏秋自慢」(写真提供:サカタのタネ)

日本では今後も温暖化が進むと予測されており、種苗会社に期待される役割も大きくなります。

「気候変動の進行に伴い、高温や不安定な気象条件に対応できる品種の重要性は今後さらに高まると考えています。当社としても、耐暑性をはじめとした環境適応性の高い品種の開発は、引き続き重要なテーマとして取り組んでまいります。

さらに、気候変動への対応は品種の力だけで完結するものではなく、品種の力を最大限に引き出すための資材や栽培技術を組み合わせた取り組みが重要です。当社はこうした総合的なアプローチを通じて、現場の課題解決に向けた選択肢を提案できるよう尽力いたします」(中野さん)

気候変動の影響で高温による野菜への影響が大きくなる中、安定して野菜を生産できる背景には、品種改良による適応策がありました。生産者が栽培しやすく、流通でも品質を保ちやすい品種の開発は、私たちの食卓を支える重要な取り組みの一つとなっています。

ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、皆さんと一緒に地球の未来を考えていきます。
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