大雨でホタルは減る? 各地の名所に聞いた豪雨の影響と回復の実態

2026-06-28 05:10 ウェザーニュース

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梅雨の時期は、しとしとと降る雨だけでなく、時には激しい大雨に見舞われることもあります。

近年は短時間強雨や線状降水帯の発生など、極端な気象現象がニュースになることも増えています。

そうした中、ウェザーニュースには「大雨の後、ホタルが減ったように感じる」といった声も寄せられているのです。

そこで今回は、ホタルが多く生息する地域の方々に話を伺い、その実感や地域の様子について聞いてみました。

大雨の影響はホタルに?幼虫に?

ホタルは川辺のコケなどに産み付けられた卵からふ化し、幼虫は水中で淡水貝類のカワニナを食べながら成長します。その後、数回の脱皮を経てさなぎになり、やがて成虫となります。では、大雨によって幼虫が流されたり、エサとなるカワニナが減ったりすることで、ホタルの数に影響は出るのでしょうか。

実際のところ、大雨とホタルの関係については地域によって受け止め方も異なるようです。ホタルが多く生息する各地の関係者に話を聞きました。
ホタルの幼虫がエサとする淡水貝類のカワニナ
大雨による大きな変化は感じていないという地域もあります。その一つが、「田代ホタル祭り」で知られる福岡県八女市の田代川流域です。

「正確な個体数を調査しているわけではありませんが、大雨の後にホタルが目に見えて減ったり、生息場所が変わったりした印象はありません。これまで増減を実感したのは下水道整備による環境変化の時で、水質の変化によってカワニナのエサとなる有機物が減ったことが影響したのではないかと考えています」(「田代ホタル祭り」関係者)
信州有数のホタルの名所として知られる長野県辰野町でも、雨の影響は「わからない」といいます。

「ホタルの数は年によって増減しますが、それが雨によるものかどうかはわかりません。幼虫が育つ時期の雨量は関係するかもしれませんが、この地域は天竜川から水を供給しており、水路が決壊するような豪雨も少ないため、影響ははっきりしません。

ただ、かつては水質悪化でホタルが絶滅の危機に瀕しました。幼虫の放流や人工水路の整備、カワニナの保護・増殖などによってホタルの乱舞を復活させ、現在も保全活動を続けています」(辰野町役場・垣内貴峰さん)

豪雨による環境変化は大きい?

徳島県三好市山城町のホタル(2015年撮影)
一方で、大雨によるホタルへの影響を感じている地域もあります。

「今年はホタルが少なくて、『雨が多かった影響だろう』という話になることはあります」というのが、徳島県三好市観光協会の大西裕之さんです。三好市では、「ホタルの里公園」がある山城町の黒川谷のほか、池田町の鮎苔谷(あいくるしだに)川、馬路(うまじ)川、漆川(しつかわ)などでホタルが多く見られるといいます。

「ひどい雨では、幼虫のエサとなるカワニナが流されてしまいます。また、河川が大きな被害を受けるような豪雨災害が起きると、ホタルがほぼ全滅したような状況になることもあります。

2004年の豪雨では鮎苔谷川の野呂内谷地区、2018年の豪雨では山城町の黒川谷で谷そのものが大きく荒れてしまい、ホタルが回復するまでにも何年もかかりました」(大西さん)

豪雨で姿を消したホタルが再び乱舞するまで

大きな被害をもたらした2017年の九州北部豪雨。写真は豪雨により浸水した福岡県朝倉市(2017年7月6日撮影、写真/時事)
大雨により激減してしまったホタルが、地元の人の努力もあって回復した例もあります。

熊本県球磨郡山江村は、2020年7月の豪雨災害に見舞われた地域です。

当時、本州付近に停滞する梅雨前線に向かって東シナ海から暖かく湿った空気が流れ込み、熊本県周辺では線状降水帯が形成されました。球磨川流域では24時間に500mmを超える記録的な大雨となり、球磨川やその支流が氾濫。人吉市や球磨村を中心に甚大な被害が発生し、その後、河川や橋、村道などの復旧工事が行われました。
「あの時の雨は生半可なものではなく、地形が変わるほどでした。私が養殖しているヤマメも全滅してしまいました」と話すのは、山江村でヤマメ養殖をしている横谷俊治さんです。

「その年の6月にはホタルが乱舞していたのに、翌年は5〜6匹しか見かけないほど激減しました。カワニナも減ってしまいましたね。

豪雨の翌年からヤマメ養殖を少しずつ再開したのですが、その水路でカワニナにエサをやって増やしました。3〜4年でカワニナがだいぶ増え、2023〜24年ごろからホタルも戻ってきました。護岸工事による影響はまだありますが、今年のホタルは以前に匹敵するほど回復しています。見に来てくれる人は皆『すごい、すごい』と喜んでくれますよ」(横谷俊治さん)
福岡県有数のホタルの名所・宝珠山川(ほうしゅやまがわ)でも、大雨による被害を乗り越えてホタルが回復してきました。朝倉郡東峰村の「棚田親水公園」では毎年6月の第1土曜日に「宝珠山ほたる祭」が開かれており、宝珠山ほたるを育てる会が保全活動を続けています。

朝倉地域は、2012年と2017年の7月に発生した九州北部豪雨で大きな被害を受けました。

2012年は停滞する梅雨前線の影響で記録的な大雨となり、河川の氾濫や土砂災害が発生。さらに2017年には線状降水帯による豪雨で、朝倉市では24時間で545.5mmの雨を観測しました。この雨量は、朝倉での観測史上最多となっています(2026年6月22日現在)。
「2012年の大雨でホタルが減って、ほたる祭りの中止を検討したことがありました。

さらに壊滅的な被害となったのが、2017年7月の九州北部豪雨です。ホタルの数は100匹程度まで減ってしまいました。ほたる祭りも開催が危ぶまれましたが、地元や交流のあった福岡の子どもたちが折ってくれたホタルの折り紙を展示するなどして、何とか続けることができました」(宝珠山ほたるを育てる会会長・川村清孝さん)
豪雨被害を乗り越え、棚田親水公園に戻ってきたホタル
宝珠山ほたるを育てる会の人たちはホタルを養殖することにしたといいます。

「ホタルを交尾させて卵をタオルに産み付けさせるのです。水を切らさないよう管理すると、約1ヵ月で初め真珠色だった卵が黒っぽくなり、ふ化します。その幼虫を川に放流するのです。

元に戻るには10年はかかると言われたのですが、9年目の今年はだいぶ戻ったと思います。毎年ホタルを見に来てくれる人も『徐々に増えてるんじゃないか』と言ってくれていて、ここ3年ほどは自然に増えるのにまかせて養殖もやめています。
もう九州北部豪雨のような大きな災害はないと思いますが、最近は急に川の水が増えたりすることがあるので心配なところはあります」(川村さん)

美しく飛び交うホタルの光は、豊かな自然環境だけでなく、それを守り続ける人々の地道な取り組みに支えられています。ホタルを眺める機会があれば、その生息環境や自然の変化にも思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。
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