地球温暖化で“お茶の味”が変わる!? 茶畑で起きている異変

2026-05-31 05:00 ウェザーニュース

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5月は本来、新茶を楽しむ爽やかな季節ですが、今年はすでに夏のような暑さの日も目立っています。

気象庁では、40℃を越える気温が毎年のように観測される状況を受けて、2026年4月から「酷暑日」という新たな名称の使用を開始しました。

四季や自然のありようの変化に地球温暖化の影響が指摘されていますが、お茶の味や茶摘みの時期にまで波及しかねないといいます。

日本の茶生産量の3〜4割を占める茶どころ静岡県での変化、対策など専門家に伺います。

暑い夏だと茶の味に影響?

日本の年平均気温は変動を繰り返しながらも長期的には上昇しています。その割合は、1898〜2025年の間100年あたり1.44℃にも。それに伴って多くの地域で真夏日・猛暑日、熱帯夜の年間日数が増えているほか、季節の気温や降水量なども変化しています。

静岡県農林技術研究所茶業研究センター茶生産技術科科長の小林栄人さんは、「静岡県でも春先の気温上昇や夏の高温・少雨などによる茶栽培への影響が懸念されており、栽培農家の関心も高い」と話します。

冬の間休んでいた茶の樹は、春暖かくなってくると芽を出しはじめます。立春から88日目にあたる八十八夜はその年最初の収穫期の目安であり、新芽を摘み取って作られたお茶が今の時季に出回る「一番茶」「新茶」です。

その後にも茶の樹は芽を出し続け、「二番茶」「三番茶」と9月くらいまで収穫が続きます。
「新芽は10~25℃の間は温度が高いほど生育が進みますが、10℃以下では伸長が鈍く、35℃以上では生育が著しく低下します。

新芽の生育は、昼夜の温度差が適度にあるほど伸長します。夜の気温が高いと新芽の呼吸量が増えて昼間に作られた養分を消耗してしまうからです。

お茶の旨味成分の1つであるアミノ酸も、夜の気温が低いなかで育った茶ほど含有量が増えます。

夏の高温も、二番茶・三番茶の生育に影響し、味や収量の低下のリスクとなります。農家の皆さんからは、夏の暑さで生育が遅れているといった不安も寄せられています」(小林さん)
気温の変化により、雨の降り方が変わってしまうことも問題となります。

「新芽の生育期に降雨がないと、約9日で土壌の水分状態が生育に影響が出る程度に乾燥してしまい、20日以上で収量が約30%減少してしまいます。

夏の少雨の場合は、まず三番茶、四番茶の生育に悪影響となります。さらに根にダメージを与えてしまうことで、次の年の一番茶の収量減にもつながる可能性があります」(小林さん)
夏から秋にかけて高温が続くこともよくありません。

「茶の収穫を終えた秋の畑では枝を切って整え、次の年に備えます。新芽が揃って生育し、収穫時に古葉や木茎が混入するのを防ぐための、茶畑の重要な管理です。

ただ、整枝のあとも暖かくて再萌芽(さいほうが)してしまうと、一番茶の新芽になる冬芽の耐凍性が低くなるため、芽の生育が止まる日平均気温が18〜19℃以下になってから行うことがポイントとなります。ところが、秋に初めて19℃以下に低下した日は、40年前は9月中旬〜10月上旬だったのが、現在は10月上旬〜下旬と、2〜3週間もずれています。

秋整枝(あきせいし/秋に茶樹の表面を刈りそろえる作業)のタイミングを誤れば、秋の早朝の寒さや春先の遅霜で新芽の生育が不良になる凍霜害(とうそうがい)のリスクとなってしまいます」(小林さん)

産地で進められる適応策

各茶園では様々な対策が講じられています。

「スプリンクラーを設置している農家では、降雨の少ない夏季等に灌水(かんすい)を行っています。夏季に雨が降らないと茶葉の光合成を行う力が弱くなってしまいますが、灌水することで光合成が維持され、しっかり成長するため秋に刈る枝葉の量が増えるのです。

ほかに、藁などの敷草やマルチと呼ばれるプラスチックフィルムを敷設(ふせつ)して土壌からの水分の蒸発を抑えたり、遮光(しゃこう)用の棚のある茶園では、寒冷紗(かんれいしゃ)などの遮光資材を用いて高温になるのを防ぐといった対策を行なう農家もあります。

気温や降水量、湿度の変化により病害虫の発生パターンが変わることもあるため、病気や害虫の発生を観察して防除を行うことが重要です」(小林さん)
静岡県では新しい茶の品種も開発されています。

「『やぶきた』は静岡県内で生み出された日本茶の代表品種ですが、高温への適性は高くありません。

そこで国が高温に強い品種としている『さえみどり』などをはじめ、静岡県で育成した『つゆひかり』『しずゆたか』などへの植え替えをはかっています。『つゆひかり』『しずゆたか』は近年の気象条件でも生育が極めて良好で、病気にも強く、収穫量が多い品種として期待されています」(小林さん)

温暖化の進む未来の茶栽培

温暖化で一番茶の摘採期も早まる!?
ただ、温暖化は今後も進行し、21世紀末の日本では年平均気温の上昇が予測されています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の温暖化シナリオでは、温暖化対策が進んだ低排出シナリオ「RCP2.6」でも約1.4℃、温室効果ガスの排出が高いまま推移した「RCP8.5」では約4.5℃上昇すると予測されています。

「猛暑日や熱帯夜はより増加し、豪雨や干ばつのリスクも高くなるとされています。静岡県の一番茶の摘採期(てきさいき)は、21世紀末には約2週間早まると予測されています。
今後も、高温・少雨などに対応した新品種の育成をはじめ、灌水や整剪枝(せいせんし/枝や葉を整える管理)、液体肥料などの利用技術に加え、高温耐性や栄養吸収効率を高める新しい資材『バイオスティミュラント』の活用など、さらなる研究が必要になります。

今後も国内外の多くの方々 に日本の美味しいお茶が届けられるように農家や関係者の皆さんと一緒に取り組んでまいります」(小林さん)

今夏、スーパーエルニーニョ現象の可能性が指摘され、日本は高温になると予想されていますが、茶など農作物の生育への影響についても注意が必要です。

ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、皆さんと一緒に地球の未来を考えていきます。

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