「とちおとめ」と「とちあいか」暑さに強いのは? 温暖化で変わるいちご栽培

2026-03-14 05:00 ウェザーニュース

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春らしい陽射しの日が続いていますが、春にフェアやキャンペーンの主役となることが多いのがいちごです。たくさんの品種が出回っていますが、人気の「とちおとめ」と「とちあいか」の違いを知っているでしょうか。

どちらも栃木県で生まれた栽培品種なのですが、「とちあいか」は近年シェアを伸ばしてきているといいます。鍵となるのが“暑さ”ですが、いちごにどのような影響があるのでしょうか。

「とちおとめ」「とちあいか」って?

栃木県は、全国1位の収穫量を誇る“いちご王国”。栃木県は農業産出額で全国第9位と農業が盛んですが、重要な品目の1つがいちごです。

なかでも「とちおとめ」は、鮮やかな赤色、甘みと酸味のバランスのよさから、全国的に人気のいちご品種です。そして、近年見かけることが増えているのが「とちあいか」です。

全国各地で独自品種の開発にしのぎを削る“いちご品種戦国時代”ではありますが、「とちあいか」の登場と普及の背景に気候変動による産地への温暖化の影響があるといいます。

“いちご王国”が温暖化!?

日本の年平均気温は1898~2024年の間に100年あたり1.40℃の割合で上昇、栃木県でも2.3℃の割合の上昇となっています。これは決して小さな変化ではなく、いちごにも影響が現れています。

気温の変化、特に夏から秋にかけての高温により、いちご栽培に変化があるといいます。

「いちご栽培において8〜9月の温度の影響が大きいです。

いちごの苗は、秋に気温が下がって日が短くなるタイミングで花芽(はなめ)ができます。『花芽分化』といいますが、ごく小さな花芽を顕微鏡で確認できたら、苗をハウスに植え替えて収穫するまで育てます。しかし、育苗期の9月に暑さが続くと花芽分化が遅れてしまいます。
花芽分化の遅れは収穫時期の遅れにつながります。いちごは11〜12月が単価がよく農家が収益を上げるポイントとなるので、時期のズレは困ります。

『とちおとめ』を前倒しで育てることを試みた時期もありましたが、なかなかうまくいきませんでした」(栃木県農業総合研究センターいちご研究所開発研究室・特別研究員畠山昭嗣さん)

高温による影響は花芽分化だけではありません。

「葉の“焼け”症状や根への悪影響、生育不良なども引き起こします。

害虫では、アザミウマ類の発生期間が長くなっています。アザミウマ類は花が咲くと発生し、果実の表面を食べられると色つやが悪くなります。被害が大きくなりやすい害虫で、生産現場でもかなり問題となっています。

また、苗を枯らしてしまうイチゴ炭疽病(たんそびょう)の病原菌は28℃程度で活発になるのですが、夏季に熱帯夜が増えれば感染リスクが高くなります」(畠山さん)

そのほか、気候変動による大雨や台風などの増大で、栽培施設への浸水被害へのリスクも増しています。

いちご栽培での適応策

いちご生産の現場ではさまざまな対策が講じられています。

「病害虫対策としては、薬剤防除以外に防虫ネットの活用や天敵農薬の利用などが普及しています。ハダニに対してのチリカブリダニのように害虫を食べてくれる虫です。葉に水がかからないような水やり方法で炭疽病の発生を抑制するといった対策もあります。

大型のエアコンで夜冷やす『夜冷庫』を活用して花芽分化の時期を調節したり、換気を十分に行い、遮光ネットをかけて『育苗ハウス』の昇温を抑制するなどの対策を行っている農家もあります。

また、根の茎に近い部分であるクラウン部近くにチューブを配置して、冷水を通すことで冷却して生育をコントロールする方法もあります」(畠山さん)
収穫前の「とちあいか」。近年は暑さで花芽分化が遅れる傾向にあるが、「とちおとめ」よりも花芽分化が早い
では、近年シェアが増えている「とちあいか」は、暑さに強いのでしょうか。

「現在のところ『とちあいか』は暑さに強い品種といえるほどデータがあるわけではありません。『とちあいか』も近年の暑さの影響は受けており、花芽分化にも遅れはみられます。

ただ、『とちあいか』は『とちおとめ』と同じ条件で育てても、花芽ができるのが10日ほど早いのです。

また、『とちおとめ』はいちごの病気である萎黄病(いおうびょう)に弱いのですが、『とちあいか』は萎黄病に比較的強いです。

『とちあいか』は、果実の大きさが一回り大きめで、光沢のある鮮やかな赤色です。食味は酸味が少なく甘みが際立ち、しっかりとした良好な食感です。

収穫量が『とちおとめ』より3割ほど高く、病気にも強いことから県内の農家で栽培が増えています。これまで県内いちご栽培の多くを占めていた『とちおとめ』とは違った特性をもつ『とちあいか』の導入により、栃木からいちごを安定して出荷できることにつながっているといえるでしょう」(畠山さん)

安定した栽培でいちご生産の持続を

温暖化は現在も進行しており、このまま進むと収量低下や病害虫などの被害が深刻化する懸念もあります。

将来にわたっていちご生産が行われるためには、さらなる対策が必要となるかもしれません。

「いちごは基本的に涼しさを好む植物なので、さらに暑くなれば栽培が難しくなります。高温のなかでも、安定的に『とちあいか』で花芽形成し、健全に定植できる技術を確立したいと考えています。

栃木県はいちご収穫量で57年連続日本一となっています。農家が安定していちご生産できるよう、暑さ対策の技術を確立して、日本一を継続できるようしていきたいと思っています」(畠山さん)

気候変動の影響はすでに日本の食料生産の現場に現れており、さまざまな適応策が必要とされています。

ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、皆さんと一緒に地球の未来を考えていきます。
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参考資料
栃木県農政部「栃木県 農作物生産における 気候変動適応ガイド(第1版)」、文部科学省及び気象庁「日本の気候変動 2025—大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書—」
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