弦月、望月、十六夜の月、有り明けの月……。知っておきたい月の呼び名

2026-03-06 05:10 ウェザーニュース

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春先は花粉や黄砂の影響で月の見え方も変わりやすい時期です。この機会に、月の呼び名に目を向けてみるのも面白いかもしれません。

満月が過ぎた月は「十六夜(いざよい)の月」と呼ばれていることを知っていますか?私たちが地球から見る月は日々、形を変えて見えます。満ちていったり欠けていったりします。古来、月はその満ち欠けなどによって、さまざまな呼ばれ方をされていました。旧暦による呼び名、月の形状による呼び名、天文学的な呼び名などがあります。
『万葉集』『古今和歌集』『枕草子』『源氏物語』などにも、多くの月が登場します。

さて、どんな月があるのでしょうか。

(1)晦(つごもり)、朔(さく)、新月(しんげつ)

これらはどれも「月が見えないこと」に関する言葉です。朔、新月には月は見えず、晦には非常に細い月が見えることが多いのですが、見えない場合もあります。朔、新月には、月は太陽と同じ方向にあって、地球から月は見えません。

晦と朔は旧暦に関係する言葉です。旧暦では、晦は月末を意味し、朔は1日を意味します。

晦は「月隠り(つきごもり)」が転じた言葉です。文字どおり「月が隠れる」ということですね。

晦は「みそか」ともいいます。「おおみそか」の「みそか」です。

おおみそか(大晦日)は1年の最終日のことですが、毎月の末日は「みそか(晦日)」で、これは「晦(つごもり)」と同じ意味です。だから、大晦日は大晦(おおつごもり)ともいいます。

また、朔日(さくじつ)は、毎月1日のことです。この1日(ついたち)の語源は「月立ち(つきたち)」で、月末の晦や晦日と同様に、月に関係しています。

新月は天文学上の用語です。

(2)三日月(みかづき)

新月から数えて三日目前後に出る月が三日月です。三日目の月だから「三日月」という、ストレートなネーミングですね。細く、弓形をしています。

ふりさけて三日月見れば一目見し人の眉引(まよびき)思ほゆるかも

これは奈良時代の公卿で歌人の大伴家持(おおとものやかもち)の和歌です。

「空を振り仰いで三日月を見ると、一目だけ見た人の引き眉が思われることだよ」といった意味です。

三日月はフランス語で“croissant”といいます。パンの名前にもなっている「クロワッサン」です。確かにクロワッサンは三日月型が多いですね。

“croissant”の動詞は“croître”で「増える、成長する」の意味。三日月は、これから大きくなって、満ちていく月でもあるのですね。

(3)半月(はんげつ)、弦月(げんげつ)、弓張(ゆみは)り月、上弦(じょうげん)の月、下弦(かげん)の月

これらはいずれも半円形に輝く月です。地球から見て、月が太陽から90°の方向にあるとき、月は半円形に見えます。

弦月と弓張り月は、月を弓とそれに張った弦になぞらえた言い方です。

上弦の月と下弦の月は月の光り輝く側が異なります。

上弦の月は月の右側の半分が光って見えます。太陽の光が月の右側に当たり、その部分だけが私たちに見えるためです。上弦の月は新月から数えて約7.5日後に見えます。

反対に、下弦の月は月の左側だけが光って見えます。太陽の光が月の左側に当たり、その部分だけが私たちに見えるためです。下弦の月は新月から数えて約22.5日後に見えます。

(4)満月(まんげつ)、望月(もちづき)

まん丸に輝いて見える月が満月であり、望月です。

旧暦の毎月15日の夜、特に旧暦8月15日の夜を「十五夜」といいます。この日の前後は満月(望月)になります。

特に有名な十五夜は「中秋(仲秋)の名月」で、旧暦8月15日の月を指します。秋の真ん中の中秋のまん丸お月さんです。

大正時代に作られた童謡『十五夜お月さん』(作詞:野口雨情、作曲:本居長世)は、中秋の名月のころを背景にした歌です。

中秋の名月といえば、平安時代初期に書かれた『竹取物語』の「なよ竹のかぐや姫」は中秋の名月の夜に月に帰っていきます。三日月でも弓張り月でもなく、満月の夜に月に帰っていくところは、月での満たされた暮らしを暗示しているようです。

また、望月というと、平安時代に栄華を誇った藤原道長の和歌「この世をば我が世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」を思い起こす人もいるでしょう。

(5)十六夜(いざよい)の月、既望(きぼう)

十六夜は旧暦16日の夜のことで、そのときに見える月が十六夜の月です。十六夜だけで、十六夜の月を表すこともあります。

十六夜は「いざよふ」という古語の動詞が由来です。いざよふには「ためらう、ぐずぐずする」の意味があって、満月を過ぎて昇るのが遅い月を「ためらい、もったいぶって出てくる」と表現したことから、十六夜という言葉が生まれたといわれます。

月の出の時刻は、毎日約50分ずつ遅れていきます。これには、月が地球の周りを回っている(公転している)ことが関係しています。

毎日遅れて出てくるのだから、十六夜の月だけが「もったいぶって出てくる」わけではありませんが、十五夜の満月は日没後すぐの夕方ごろに昇るのに、その翌日の十六夜は、日が暮れてもまだ出てきません。このことで、十六夜の月の出は遅く感じたため、いざよっているように思ったのでしょう。

十六夜というと、鎌倉時代に書かれた『十六夜日記』を思い起こす人もいるでしょう。著者の阿仏尼(あぶつに)が旧暦10月16日(12月16日という説もあり)に京都を出発したことが、この書名の由来です。

既望は「既に望(もち)=満月が過ぎた」ことを意味します。満月(十五夜)を過ぎた日の月=旧暦16日の月という点では、既望と十六夜は同じです。

(6)立ち待ち月、居待(いま)ち月、臥(ふ)し待ち月、寝待(ねま)ち月、更(ふ)け待ち月

立ち待ち月は旧暦17日の夜、居待ち月は旧暦18日の夜、臥し待ち月と寝待ち月は旧暦19日の夜、更け待ち月は旧暦20日の夜に昇る月です。

これらは月の出を待ちわびることを表していて、立ち待ち月は文字どおり立って待ち、居待ち月は座って待つ。臥し待ち月と寝待ち月も、文字どおり臥して、あるいは寝て待つ。更け待ち月は夜の更けるころまで待ちます。

古(いにしえ)の人々は、それほどまでに月に畏敬の念や憧れ、親しみを抱いていたのでしょう。『竹取物語』の「なよ竹のかぐや姫」が月からやってきたことからも、そのことはうかがえます。

(7)有り明けの月

有り明けの月は夜が明けても空になお残っている月です。

有り明けの月も和歌によく詠まれています。

〜今来(いまこ)むといひしばかりに長月の有明(ありあけ)の月を待ち出でつるかな〜
ーー素性法師(そせいほうし/平安時代前期の僧)

「『今すぐ行くよ』とあなたがおっしゃったばかりに、9月の長い夜を待っていると、有り明けの月が出てしまいましたよ」といった意味です。

今なら、「○時まで待っていたよ」となりそうですが、昔は月が時の代わりもしていたのですね。

しかも、それに感情も乗せている。古の人々にとって、月は日にちであり、時であり、感情を表現する存在でもあったことがうかがえます。


単に「月が見えるなあ」とか「月が出ているね」とかだけでなく、どんな月が見えるのか、その月はどんな月なのか、月の呼び名なども知ると、日々の暮らしがより豊かになるかもしれません。

外に出るときは、スマホから目を離し、時には空を見上げて、月に思いを馳せてみるのもよいのではないでしょうか。
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参考資料
参考資料『月と太陽ってどんな星?』(著者/縣 秀彦、発行所/誠文堂新光社)、『まんが 百人一首大辞典』(監修者/吉海直人、発行所/西東社)、国立天文台「いろいろな月」、同「月の形はどうして変わるのですか?」
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