気温上昇がりんごに与える影響は?
国立環境研究所が運営する「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」では、このまま地球温暖化が進むと、「2060年代には現在のりんごの主力産地の多くが暖地りんごの産地と同等の気温となると予測され、適応策をとらない場合、東北中部の平野部まで現在よりも栽培しにくい気候となる」としています。
温暖化による気温上昇がりんごに与える悪影響には、どのようなものがありますか。
「気温の上昇が進んでも、適応した品種開発などの取り組みなどによって、将来的に長野県でりんごが作れなくなることはありません。ただし、現時点で気温上昇がりんごに与える悪影響として考えられる要素が3つあります。
1つめは凍害(とうがい)、寒さによる被害です。りんごは果樹の中では寒さに強い植物ですが、春の気温の高まりにつれて耐凍性は次第に低下していきます。冬の終わりから春の初めにかけての早い時期に気温の高い日が訪れると、りんごも早く休眠から覚めることになります。
そこに寒の戻りがやってくると、耐凍性が低下した状態のりんごの木は凍傷と同じ状態になり、ひどい場合には枯れてしまうこともあります。
2つめは霜害(そうがい)、遅霜による被害です。早い時期の気温上昇でりんごの生育が早まってしまうと、遅霜にあたる機会も増えてしまいます。特に開花期に遅霜にあたるとめしべが凍傷になって枯れて、花が死んでしまい実が付かなくるという深刻なダメージを受けてしまうのです。
そこまでひどくない軽症の場合でも、果実の表面に『サビ』と呼ばれる肌がざらざらになって品質が落ちてしまうといった問題が生じる場合があります。
2022・23年の長野県では遅霜にあたって収量が激減しました。2024年はあたらなかったので、今年は収量的には悪くない状況です」(江口さん)
凍害や霜害は寒さが原因というイメージでしたが、気温の上昇による生育の早まりが影響しているのですね。
「3つめが生育期間中の高温障害です。2024年も春から夏にかけての生育期の気温が高く、日焼けが生じたり、障害とは一概に言えませんが、赤いりんごは色が付きにくくなったりします」(江口さん)
「気温の上昇が進んでも、適応した品種開発などの取り組みなどによって、将来的に長野県でりんごが作れなくなることはありません。ただし、現時点で気温上昇がりんごに与える悪影響として考えられる要素が3つあります。
1つめは凍害(とうがい)、寒さによる被害です。りんごは果樹の中では寒さに強い植物ですが、春の気温の高まりにつれて耐凍性は次第に低下していきます。冬の終わりから春の初めにかけての早い時期に気温の高い日が訪れると、りんごも早く休眠から覚めることになります。
そこに寒の戻りがやってくると、耐凍性が低下した状態のりんごの木は凍傷と同じ状態になり、ひどい場合には枯れてしまうこともあります。
2つめは霜害(そうがい)、遅霜による被害です。早い時期の気温上昇でりんごの生育が早まってしまうと、遅霜にあたる機会も増えてしまいます。特に開花期に遅霜にあたるとめしべが凍傷になって枯れて、花が死んでしまい実が付かなくるという深刻なダメージを受けてしまうのです。
そこまでひどくない軽症の場合でも、果実の表面に『サビ』と呼ばれる肌がざらざらになって品質が落ちてしまうといった問題が生じる場合があります。
2022・23年の長野県では遅霜にあたって収量が激減しました。2024年はあたらなかったので、今年は収量的には悪くない状況です」(江口さん)
凍害や霜害は寒さが原因というイメージでしたが、気温の上昇による生育の早まりが影響しているのですね。
「3つめが生育期間中の高温障害です。2024年も春から夏にかけての生育期の気温が高く、日焼けが生じたり、障害とは一概に言えませんが、赤いりんごは色が付きにくくなったりします」(江口さん)
「色付きのよくないりんごは、品質としてはやや落ちた扱いになってしまうので、生産現場では大きな問題ととらえているのではないかと思います。
県も生産現場でもこの3要素を、りんごに対する気温上昇の影響として認識しています。特に標高の低い産地や、早い時期に収穫する早生(わせ)品種のほうがこうした影響を受けやすいです」(江口さん)
県も生産現場でもこの3要素を、りんごに対する気温上昇の影響として認識しています。特に標高の低い産地や、早い時期に収穫する早生(わせ)品種のほうがこうした影響を受けやすいです」(江口さん)
見た目と中身のギャップが生じやすい!?
気温上昇はりんごの見た目と中身のギャップを生みやすいという問題もあるようです。
「気温上昇によって糖度(甘さ)・酸度(酸っぱさ)・硬度(硬さ)に影響を与えることが研究でわかっています。
ただし、みなさんが『おいしい』と感じられる基準、食味のとらえ方はそれぞれ異なりますので、味の評価をお伝えするのはなかなか難しいです」(半田さん)
りんごは見た目の印象も重要です。
「長野県のりんごは『ふじ』や『つがる』など赤い品種が主流です。赤いりんごは赤くないと消費者の方々の購買意欲は下がります。
ところが気温上昇によって色付きの悪いりんごが赤く色付くのを待っていると、中身が熟しすぎる過熟(かじゅく)になってしまうという外観と中身のミスマッチが生じやすくもなるのです」(江口さん)
逆にしっかり色付いていなくても中身の熟した食味の良いりんごも多いということでしょうか。
「生産者の皆さんは“おいしいりんごを届けたい”という思いで栽培をしているので、味重視で収穫時期を決定した結果、色付きが不十分ということもあります。見た目の印象よりも味は良いので、是非食べて欲しいと思います」(半田さん)
「気温上昇によって糖度(甘さ)・酸度(酸っぱさ)・硬度(硬さ)に影響を与えることが研究でわかっています。
ただし、みなさんが『おいしい』と感じられる基準、食味のとらえ方はそれぞれ異なりますので、味の評価をお伝えするのはなかなか難しいです」(半田さん)
りんごは見た目の印象も重要です。
「長野県のりんごは『ふじ』や『つがる』など赤い品種が主流です。赤いりんごは赤くないと消費者の方々の購買意欲は下がります。
ところが気温上昇によって色付きの悪いりんごが赤く色付くのを待っていると、中身が熟しすぎる過熟(かじゅく)になってしまうという外観と中身のミスマッチが生じやすくもなるのです」(江口さん)
逆にしっかり色付いていなくても中身の熟した食味の良いりんごも多いということでしょうか。
「生産者の皆さんは“おいしいりんごを届けたい”という思いで栽培をしているので、味重視で収穫時期を決定した結果、色付きが不十分ということもあります。見た目の印象よりも味は良いので、是非食べて欲しいと思います」(半田さん)
高温でも色が付きやすい「シナノホッペ」に期待
気温上昇による悪影響を解決するためにどのような方策が採られているのでしょうか。
「色付きについては、多少気温が上がっても色付きがよく、品質が維持できるような品種がありますので。まだ評価の最中ですが、品種の選定で回避できればと考えています。
ただ、りんごは果樹ですから、野菜やイネのように1年ごとに栽培するものではありません。いったん植えれば10年、20年間というふうに栽培が続きます。簡単に品種を変えるというのは難しいところもありますが、徐々に適応した品種に変えつつ、将来的にりんごの生産を続けていきたいと考えています」(江口さん)
具体的な新品種はありますか。
「高温の耐性品種として長野県果樹試験場で開発した『シナノホッペ』という品種があります」(江口さん)
「色付きについては、多少気温が上がっても色付きがよく、品質が維持できるような品種がありますので。まだ評価の最中ですが、品種の選定で回避できればと考えています。
ただ、りんごは果樹ですから、野菜やイネのように1年ごとに栽培するものではありません。いったん植えれば10年、20年間というふうに栽培が続きます。簡単に品種を変えるというのは難しいところもありますが、徐々に適応した品種に変えつつ、将来的にりんごの生産を続けていきたいと考えています」(江口さん)
具体的な新品種はありますか。
「高温の耐性品種として長野県果樹試験場で開発した『シナノホッペ』という品種があります」(江口さん)
シナノホッペは親である「ふじ」と同じように蜜が入ることの多い品種だそうです。
「シナノホッペは晩生(おくて)で成熟期が試験場のある須坂市で10月下旬から11月上旬あたりと気温が下がっている時期です。赤い色付きもとてもよく、今後どこまで高温に対応できるかということを評価研究しているところです。
その他にも生産段階の選択肢としては『シナノゴールド』もあります。シナノゴールドは黄色の品種で、気温上昇による赤の着色不良という問題が発生しません。
このため、黄色の品種も有望と考えていますが、一般的にりんご=赤のイメージが強く、市場からの引き合いは強くないのです。黄色りんごの評価を上げていくことも必要と考えています」(江口さん)
長野県のりんごの将来についてはどのようにお考えでしょうか。
「シナノホッペは現地ではすでに栽培されていますし、スーパーマーケットなどの店頭でも並んでいます。
ただ量的にはまだ少ない状況なので、今後は全国的にも主力品種として広く展開できるように、『気温が高くなってもシナノホッペは赤い色が付きやすいですよ』とか、『作りやすいですよ』というような情報提供を生産者へもしていきたいと考えています。
長野県のりんごの将来についてはどのようにお考えでしょうか。
「長野県は果樹の中でもりんごの生産量がいちばん多く、栽培面積もすごく広いです。そのため、りんごは農家さんをはじめ、たくさんの人たちの生活を支えています。今後も消費者によいりんごを届けられるよう、シナノホッペのような高温に対応しやすい品種の開発はもちろん、気温が上がった環境でもりんごを栽培できるような対応策の検討を進めていきます」(江口さん)
温暖化による気温の上昇により、主産地のひとつである長野県にもいくつかの影響が生じているようですが、それを回避するための取り組みも続けられています。
ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、皆さんと一緒に地球の未来を考えていきます。まずは気候変動について知るところから、一緒に取り組んでいきましょう。
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「シナノホッペは晩生(おくて)で成熟期が試験場のある須坂市で10月下旬から11月上旬あたりと気温が下がっている時期です。赤い色付きもとてもよく、今後どこまで高温に対応できるかということを評価研究しているところです。
その他にも生産段階の選択肢としては『シナノゴールド』もあります。シナノゴールドは黄色の品種で、気温上昇による赤の着色不良という問題が発生しません。
このため、黄色の品種も有望と考えていますが、一般的にりんご=赤のイメージが強く、市場からの引き合いは強くないのです。黄色りんごの評価を上げていくことも必要と考えています」(江口さん)
長野県のりんごの将来についてはどのようにお考えでしょうか。
「シナノホッペは現地ではすでに栽培されていますし、スーパーマーケットなどの店頭でも並んでいます。
ただ量的にはまだ少ない状況なので、今後は全国的にも主力品種として広く展開できるように、『気温が高くなってもシナノホッペは赤い色が付きやすいですよ』とか、『作りやすいですよ』というような情報提供を生産者へもしていきたいと考えています。
長野県のりんごの将来についてはどのようにお考えでしょうか。
「長野県は果樹の中でもりんごの生産量がいちばん多く、栽培面積もすごく広いです。そのため、りんごは農家さんをはじめ、たくさんの人たちの生活を支えています。今後も消費者によいりんごを届けられるよう、シナノホッペのような高温に対応しやすい品種の開発はもちろん、気温が上がった環境でもりんごを栽培できるような対応策の検討を進めていきます」(江口さん)
温暖化による気温の上昇により、主産地のひとつである長野県にもいくつかの影響が生じているようですが、それを回避するための取り組みも続けられています。
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