サツマイモの産地に異変? 北海道で栽培拡大、南の産地に迫る猛暑の影響

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焼き芋にサツマイモご飯、大学芋など、サツマイモのおいしい季節がやってきました。

昔から救荒作物として日本人の生活になじんできたサツマイモですが、実はルーツはメキシコを中心とする熱帯アメリカ。

これまで寒さには弱いイモとして、福島県あたりが経済栽培の北限とされてきました。ところが、近年は北海道でサツマイモの栽培が広がっているといいます。その背景には、気候の変化もあるようです。

寒さに弱いサツマイモが北海道で?

北海道でサツマイモ栽培が広がっています。北海道の作付面積は2005年の5haから2023年には100haへと拡大し、収穫量も2023年に約1870tとなっています。

国内のサツマイモ生産は、鹿児島県、茨城県、宮崎県の3県で約8割を占めています。“暖かいところのイモ”であるサツマイモの栽培が、なぜ北海道で広まりつつあるのでしょうか。
「サツマイモ栽培では、猛暑や夜間の高温による小粒化・品質低下が問題となっており、生産者の努力だけでは対応しきれない状況も生じています。鹿児島などの従来の主要産地で高温リスクが高まっているのです。

一方、北海道では、従来の主要産地と比べてサツマイモにとってより好適で、極端な高温リスクの少ない栽培環境が整いつつあります。そのため北日本・北海道へと栽培が広がっているのです」と、国際環境NGOグリーンピース・ジャパン、気候変動・エネルギー担当の豊田育生さんは説明します。

グリーンピース・ジャパンでは、気象データの分析や生産者への調査などを通じて、気候変動による農業への影響を調べ、調査報告書「秋の味覚が告げる気候変動の影響」として発表しています。

気温上昇や夜間の高温、病害虫も

暖かい地域を原産とするサツマイモですが、気温が高すぎると生育に影響が出るといいます。

日本いも類研究会によると、サツマイモは30℃で中程度の高温ストレスを受け、35℃では生育が低下するとされています。鹿児島では、生育期間に当たる6〜10月の真夏日の日数が、1966〜1975年の平均67日から2016〜2025年には90日へと、約50年間で23日増えています。
「サツマイモは耐候性が高い作物とされていますが、6月から9月、10月にかけての栽培期(本圃生育期)に、24℃を超える高温にさらされると、光合成産物がいも(塊根)よりも葉や茎へ優先的に分配されるようになり、いもの成長が抑えられてしまいます。

いもの小粒化や軽量化は収量低下を引き起こします。実際に夏季の気温偏差が高くなると、全国の収量が低下するという、統計的に有意な負の相関関係が確認されています。

また、いもは夜間に栄養分が蓄えられて大きくなりますが、大きくなる期間(肥大期)に夜間の気温が22℃を超えると、成長が著しく妨げられます。

今回の調査でも、『日中に暑くても夜間に気温が下がるという寒暖のリズムが失われることで、サツマイモが成長のタイミングを逃してしまう』という現場の声が上がっています」(豊田さん)

高温に対応できず成長が遅れたサツマイモ、シルクスイート ©︎Yoko Miyamoto

気温の変化は直接サツマイモの成長に影響するだけでなく、病害虫の発生などにも関わるといいます。

「表面のコブの発生や小玉化といった品質低下のほかにも、コガネムシの増加による食害、降雨不足や干ばつによるツルの枯死・不作などが報告されています。

こうした気温上昇や夜間の高温に対し、主力品種の耐暑性が不足していたり、植え付け時期の変更や土壌・畝の管理を行っても猛暑や乾燥の影響を抑えきれなかったりと、個々の生産者の努力だけでは対応が困難になってきている問題もあります」(豊田さん)
こうした影響に対応するため、栽培方法にもさまざまな工夫が求められています。

「現在、植え付け時期の前倒しや畝のつくり方、土壌構成の見直しなどの工夫が行われています。また、灌漑・水管理方法の改善や、日よけ対策をするなどの適応策が考えられます。営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の設置による遮熱・日よけ環境の活用も一つの手段になり得るでしょう」(豊田さん)
今後も温暖化が進むことで、栽培への影響に加え、作業を担う生産者の負担が増すことも懸念されます。

「気候の変化が急速に進み、土壌改良や水やりを行っても高温・猛暑の影響を防ぎきれないことや、降雨が不規則になり、雨が降らない時期にツルが枯れたり、いもが十分に肥大しない問題があります。過酷な労働環境も大きな課題であり、夏場の猛暑下における屋外作業の危険性と身体的負担は年々深刻化しています」(豊田さん)

温暖化で産地はどう変わる?

気候変動の影響は、サツマイモだけでなく、さまざまな作物の生産にも及んでいます。

「今回グリーンピースが行ったサツマイモ、ナシ、ブドウ、米の調査では、気候変動が各作物の栽培において品質低下や病害虫の増加をもたらしていることがわかりました。さらに、果樹や作物全般において、気候変動に伴い栽培適地が北上する傾向が指摘されています。ブドウの栽培適地の北上や、サツマイモ栽培の北海道への広がりなど、地理的な生産域の変化がみられます。

西日本や南日本の主要産地では、夏場の直射日光や持続的な酷暑による被害が非常に顕著です。また、北日本や東日本の従来は冷涼であった地域でも、極端な高温や猛暑が発生し、作物の栽培や労働環境に影響を及ぼしています。

暖冬による害虫の越冬や例年よりも1〜2週間早い発生、長引く活動期間により、従来の農薬散布暦が通用しなくなったり、品種転換を検討しなくてはいけなくなったりと、さまざまな影響がみられます」(豊田さん)
日本では今後も温暖化が進むと予測されており、作物を育てる地域や栽培方法にも変化が求められそうです。身近な秋の味覚をこれからも楽しめるよう、生産者の工夫や産地で起きている変化にも目を向けていきたいですね。

温暖化の影響は私たちの生活にも大きな変化をもたらす可能性があります。ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、みなさんと一緒に地球の未来を考えていきます。まずは気候変動について知るところから、一緒に取り組んでいきましょう。
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参考資料
グリーンピース・ジャパン「秋の味覚が告げる気候変動の影響」(https://www.greenpeace.org/japan/wp/wp-content/uploads/2026/09/5e133f80559361ceebcb31ee45dd40d0.pdf)、北海道開発局開発調査課「気候変動への適応に関する調査~北海道産さつまいも栽培の課題と取組事例~」、日本いも類研究会「さつまいもの栽培特性・条件」、Gajanayake, B., Reddy, K.R., Shankle, M.W. (2015).Quantifying Growth and Developmental Responses ofSweetpotato to Mid- and Late-Season Temperature.Agronomy Journal, 107(5), 1854-1862.

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