暑すぎるとビールは売れない?気温と需要の「境目」を探る

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「暑くなればビールが売れる」。そんな夏の常識に反し、ビール大手4社の2026年7月のビール類販売数量は前年同月比7%減となりました。

一方、国内外の研究では、気温が上がるほどビールなどの酒類が売れやすくなることが分かっています。ただ、ある程度以上の暑さになると、販売の伸びが鈍る可能性もあります。

2026年7月の実績と研究から、「売れる暑さ」の条件をみていきます。
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「暑いとビールが売れる」には根拠がある

日本のビール・発泡酒の販売データを調べた研究では、最高気温が高いほど購入量が増える傾向が確認されています。米国の研究でも、気温が上がるとビールなど酒類の販売が増えることが分かっています。

つまり、「暑い日にビールが飲みたくなる」という感覚には、データ上の裏付けがあります。

ただし、気温が上がれば上がるほど、同じように売れ続けるわけではありません。

約32℃を超えると、売れ行きの伸びが鈍る?

米国の2006~2023年の販売データを分析した2026年の研究では、気温が上がるにつれて酒類の販売は増えるものの、約32℃を超えると販売の伸びが小さくなる傾向が示されました。

これは「32℃を超えるとビールが売れなくなる」という意味ではありません。暑さによる追い風が、それ以上の暑さでは弱くなるということです。

極端な暑さでは、外出や外食を控えたり、アルコールより水分補給を優先したりする人が増える可能性があります。研究で理由が確認されたわけではありませんが、「暑いから飲みたい」と「暑すぎるから出かけたくない」がぶつかることで、販売の伸びが鈍るとも考えられます。

※約32℃という数字は米国の研究結果で、日本でも同じ温度が境目になるとは限りません。

2026年7月の7%減は「暑すぎたから」ではない

では、2026年7月の7%減は「暑すぎた」ことが原因なのでしょうか。そうとは言い切れません。

2026年7月は北・東・西日本で平年を上回る高温となり、40℃以上を観測した地点もありました。一方、前年の2025年7月は、北・東・西日本のすべてで7月として過去最高の暑さとなり、少雨・多照にも恵まれていました。

2026年は地域によって前年より涼しかったり、7月上旬に雨や曇りが多かったりと、前年とは天気が異なります。さらに、節約志向や価格、商品の選ばれ方なども販売に影響します。

そのため、今回の7%減を「暑すぎたからビールが売れなかった」と説明することはできません。ただ、「暑い=前年より売れる」とも限らないことは、今回の分析から分かりました。
2025年7月2026年7月
地域気温差降水日照気温差降水日照
北日本+4.5℃46%145%+1.7℃127%92%
東日本+2.7℃56%162%+1.6℃70%122%
西日本+2.2℃49%159%+1.9℃48%138%
※数値は、月平均気温の平年差、月降水量・月間日照時間の平年比。平年値は1991~2020年。

売れるのは「暑い日」ではなく「楽しめる暑さ」

ビール販売を天気から考えるなら、最高気温だけを見るのでは不十分です。

晴れていて外出しやすく、夕方も暑さが残る休日なら、レジャーや食事など「ビールを飲む機会」が増えやすくなります。一方、極端な暑さに加えて大雨や蒸し暑さが重なれば、外出や外食そのものが減り、気温ほど販売が伸びない可能性があります。

つまり、「明日は35℃だから売れる」ではなく、「明日は人がビールを楽しめる天気なのか」を見ることが重要です。

「暑すぎるとビールが売れない」ことは、今回のデータだけでは証明できません。しかし、研究からは、暑さによる販売の追い風には限界がある可能性が見えてきました。日本で「売れる暑さ」を見つけるには、気温だけでなく、雨や湿度、日照、休日などを組み合わせて、人の行動まで見る必要があると考えられます。

ビールが売れるのは、単に「暑い日」ではなく、人が外に出て、食事をして、「今日は一杯飲みたい」と思える日。

天気予報も「何℃になるか」だけでなく、その暑さで人がどう過ごすのかまで捉えることが、ビール需要を読む鍵になりそうです。

※本稿執筆時点では8月のビール販売実績が発表されていないため、2026年夏全体ではなく、7月の販売実績と気象状況を対象にしています。

※主な出典・参考情報
・食料醸界新聞社(2026年8月18日)「ビール4社 7月のビール類93%」
・時事通信/nippon.com(2026年8月13日)「7月の大手4社ビール類販売、7%減=節約志向や天候不順で」
・大石敦志(2006)「日別POSデータによるビール・発泡酒の需要分析」『食品経済研究』第34号
・Hirche, Haensch and Lockshin(2021)“Comparing the day temperature and holiday effects on retail sales of alcoholic beverages”
・Lee, Jeon and Lee(2026)“Climate Change and Alcohol Use: Evidence from US Retail Sales Data” SSRN Working Paper
・気象庁「2026年7月の天候」
・気象庁「2025年7月の天候」
・気象庁「東日本太平洋側・2026年7月の7日ごとの地域平均気象データ」
・財務省「酒税に関する資料」
※研究結果は、対象国、分析期間、対象商品、研究手法が異なります。米国の研究結果が、2026年7月の日本のビール類販売減少の原因を直接証明するものではありません。本文には、公表データを基にした推論を含みます。

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