熊本地震から1か月、災害後の「心」はどう変化する? 被災者・支援者が気を付けたいこと
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最大震度7を観測した令和8年熊本地震の発生から1ヵ月余りが経ちました。熊本県内では死者38人などの直接被害に加え、なお2170人が避難生活を余儀なくされており(内閣府、8月31日発表)、自治体や医療関係者らによる災害関連死防止への取り組みが続けられています。
大規模災害後は被災者や避難生活者の持病の悪化や体調不良など、身体面への対処はもちろん、被災者を支える人も含めた「心のケア」も重要になります。
災害後の心にはどのような変化が起こるのでしょうか。また、被災者や支援者、周囲の人はどのようなことに気を付ければよいのでしょうか。
災害後の心のケアの重要性や注意点について、ふくしま心のケアセンターの前田正治所長(福島県立医科大学・特任教授)に伺いました。
大規模災害後は被災者や避難生活者の持病の悪化や体調不良など、身体面への対処はもちろん、被災者を支える人も含めた「心のケア」も重要になります。
災害後の心にはどのような変化が起こるのでしょうか。また、被災者や支援者、周囲の人はどのようなことに気を付ければよいのでしょうか。
災害後の心のケアの重要性や注意点について、ふくしま心のケアセンターの前田正治所長(福島県立医科大学・特任教授)に伺いました。
災害後の心はどのように変化する?
被災後の心の変化には一般的な経過があるのでしょうか。
「ビバリー・ラファエルというオーストラリアの医学者の研究では、被災者の心は発災直後の『茫然自失期』から『高揚期(ハネムーン期)』を経て、『幻滅期』に至るカーブを描くとされています。
それぞれの期間の長さは災害の規模や個人差がありますが、発災直後は、事態の深刻さや、これまでの日常などを失ったことを十分に実感できず、“何をどれくらい失ったのかがピンとこない。とにかく今を生きるのが精一杯”という『茫然自失期』にあります。その後、“とにかく頑張れば何とかなる”という期待をもつのが『高揚期』です。
特に医療関係者などの支援者は、高揚期に頑張りすぎる傾向があり、ラファエルのモデルがよく当てはまります。ところが、高揚感が次第に失われると、“取り返しがつかない状態になった。もう元には戻れない”という『燃え尽き(バーンアウト)』に陥ることがあります」(前田先生)
「燃え尽き」の怖さはどのような点にあるのでしょうか。
「最も問題なのは、“何をしても無駄だ”という達成感の低下です。頑張っても成果が得られない状態が続くと、専門用語でいう『学習性無力感(Learned helplessness)』に陥ります。その先には無力感や絶望感、孤立感があり、自殺という重大な結果につながる可能性もあります。
こうした幻滅期が訪れるのは発災からしばらく経ってからの場合が多く、令和8年熊本地震では、1ヵ月あまりが経った今頃から、被災者も支援者も特に注意が必要な時期といえるでしょう。
特に地元自治体の職員や医療関係者などは、支援者である一方で被災者でもあるケースが少なくなく、『役割葛藤』が生じて学習性無力感に陥りやすくなります。上司らが状況を把握し、必要に応じて休みを取らせるなど、心身のケアを躊躇なく行ってください。
一方、私の実感では、被災者自身には高揚期がほとんどみられず、茫然自失期からそのまま幻滅期に入ってしまう方が非常に多いと感じています」(前田先生)
「ビバリー・ラファエルというオーストラリアの医学者の研究では、被災者の心は発災直後の『茫然自失期』から『高揚期(ハネムーン期)』を経て、『幻滅期』に至るカーブを描くとされています。
それぞれの期間の長さは災害の規模や個人差がありますが、発災直後は、事態の深刻さや、これまでの日常などを失ったことを十分に実感できず、“何をどれくらい失ったのかがピンとこない。とにかく今を生きるのが精一杯”という『茫然自失期』にあります。その後、“とにかく頑張れば何とかなる”という期待をもつのが『高揚期』です。
特に医療関係者などの支援者は、高揚期に頑張りすぎる傾向があり、ラファエルのモデルがよく当てはまります。ところが、高揚感が次第に失われると、“取り返しがつかない状態になった。もう元には戻れない”という『燃え尽き(バーンアウト)』に陥ることがあります」(前田先生)
「燃え尽き」の怖さはどのような点にあるのでしょうか。
「最も問題なのは、“何をしても無駄だ”という達成感の低下です。頑張っても成果が得られない状態が続くと、専門用語でいう『学習性無力感(Learned helplessness)』に陥ります。その先には無力感や絶望感、孤立感があり、自殺という重大な結果につながる可能性もあります。
こうした幻滅期が訪れるのは発災からしばらく経ってからの場合が多く、令和8年熊本地震では、1ヵ月あまりが経った今頃から、被災者も支援者も特に注意が必要な時期といえるでしょう。
特に地元自治体の職員や医療関係者などは、支援者である一方で被災者でもあるケースが少なくなく、『役割葛藤』が生じて学習性無力感に陥りやすくなります。上司らが状況を把握し、必要に応じて休みを取らせるなど、心身のケアを躊躇なく行ってください。
一方、私の実感では、被災者自身には高揚期がほとんどみられず、茫然自失期からそのまま幻滅期に入ってしまう方が非常に多いと感じています」(前田先生)
心のケアで気を付けたいこと
災害後の心のケアで、特に考慮すべきはどのような点でしょうか。
「避難生活における居住の問題は重要です。避難所ではお互いに助け合う意識が高いのですが、幻滅期は仮設住宅に入居したり自宅に戻ったりと、“被災者の分散化”が進む時期に訪れやすく、孤立感が一層高まります。
孤立はメンタルヘルスに悪影響を与える大きな要因です。行政側がアウトリーチ(訪問型のケア)を進め、被災者の孤立を防ぐことが大切です。
熊本県の状況をみると、いまの時期は特に暑さが問題となります。熱中症はもちろんですが、心のケアで注意したいのが、暑さや日照時間の長さに伴う睡眠障害です。睡眠時間が短くなるだけでなく、夜中に何度も目が覚めたり、ぐっすり眠った感じがしなかったりすることがあります。
睡眠障害はメンタルヘルスに悪影響を及ぼし、うつ状態にもつながりやすくなります。昼間のパフォーマンスも低下し、高齢者では高血圧や糖尿病などのリスクにもつながります」(前田先生)
暑さが続くなか、心の健康を守るためには睡眠の確保が重要になります。どのような対策が有効でしょうか。
「セルフケアとしては、アイマスクの着用は効果があります。光を遮断することで、眠りを促すメラトニンの分泌が促されます。また、アイマスクを着用して、昼間に30分ほど仮眠をとるのもよいでしょう。
1日眠れなくても、過度に心配する必要はありません。気にしすぎるとかえって眠れなくなるので、“次の日に補って眠ればいい”と気持ちを切り替えましょう。
ただし、不眠が数日続くようであれば注意が必要です。長引く場合は無理をせず、専門医療機関に相談してください。現在は依存性の少ない睡眠薬などもあります」(前田先生)
「避難生活における居住の問題は重要です。避難所ではお互いに助け合う意識が高いのですが、幻滅期は仮設住宅に入居したり自宅に戻ったりと、“被災者の分散化”が進む時期に訪れやすく、孤立感が一層高まります。
孤立はメンタルヘルスに悪影響を与える大きな要因です。行政側がアウトリーチ(訪問型のケア)を進め、被災者の孤立を防ぐことが大切です。
熊本県の状況をみると、いまの時期は特に暑さが問題となります。熱中症はもちろんですが、心のケアで注意したいのが、暑さや日照時間の長さに伴う睡眠障害です。睡眠時間が短くなるだけでなく、夜中に何度も目が覚めたり、ぐっすり眠った感じがしなかったりすることがあります。
睡眠障害はメンタルヘルスに悪影響を及ぼし、うつ状態にもつながりやすくなります。昼間のパフォーマンスも低下し、高齢者では高血圧や糖尿病などのリスクにもつながります」(前田先生)
暑さが続くなか、心の健康を守るためには睡眠の確保が重要になります。どのような対策が有効でしょうか。
「セルフケアとしては、アイマスクの着用は効果があります。光を遮断することで、眠りを促すメラトニンの分泌が促されます。また、アイマスクを着用して、昼間に30分ほど仮眠をとるのもよいでしょう。
1日眠れなくても、過度に心配する必要はありません。気にしすぎるとかえって眠れなくなるので、“次の日に補って眠ればいい”と気持ちを切り替えましょう。
ただし、不眠が数日続くようであれば注意が必要です。長引く場合は無理をせず、専門医療機関に相談してください。現在は依存性の少ない睡眠薬などもあります」(前田先生)
親子の心のケアと長期的な支援
夏休みも終わる時期を迎え、子どもの心のケアも大切になります。
「子どもは比較的被災からの心の回復が早いといえますが、ポイントは親御さんの側にあります。不安やつらさを感じたときは、“親が楽になることが子どもにとってもいいことだ”と考え、気軽に周囲に相談することが大切です。
子どもが『大変』という時は、むしろ親が大変な場合が多い印象です。親の負担が減ることは子どもの負担軽減にもつながります。そういう意味でも、学校の再開は親の負担を軽くするうえで、とても大切なことです」(前田先生)
2024年の能登半島では地震と豪雨、熊本でも2016年と今回の地震など、相次ぐ災害を経験しています。
「能登では発災直後より、むしろ『2年後のいま』のほうが、幻滅期の悪影響が深刻な状況にあるといえます。
一方、2016年の熊本地震では、矢田部裕介センター長(当時)をはじめとする『熊本こころのケアセンター』のスタッフが懸命に活動し、大きな成果を挙げました。その経験と実績は、今回の地震後の心のケアにも必ず役立つと思います」(前田先生)
近年、地震や豪雨などの災害が各地で相次いでいます。被災した人だけでなく、支える人が抱える心身の負担も見逃してはなりません。自分自身や周囲の変化に目を向けながら、心の健康を守っていきましょう。
令和8年熊本地震 被災地支援のための天気
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子どもが『大変』という時は、むしろ親が大変な場合が多い印象です。親の負担が減ることは子どもの負担軽減にもつながります。そういう意味でも、学校の再開は親の負担を軽くするうえで、とても大切なことです」(前田先生)
2024年の能登半島では地震と豪雨、熊本でも2016年と今回の地震など、相次ぐ災害を経験しています。
「能登では発災直後より、むしろ『2年後のいま』のほうが、幻滅期の悪影響が深刻な状況にあるといえます。
一方、2016年の熊本地震では、矢田部裕介センター長(当時)をはじめとする『熊本こころのケアセンター』のスタッフが懸命に活動し、大きな成果を挙げました。その経験と実績は、今回の地震後の心のケアにも必ず役立つと思います」(前田先生)
近年、地震や豪雨などの災害が各地で相次いでいます。被災した人だけでなく、支える人が抱える心身の負担も見逃してはなりません。自分自身や周囲の変化に目を向けながら、心の健康を守っていきましょう。
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