地球温暖化のウソ? ホント?(27)地球温暖化問題には「格差」があるって、本当?

2026-06-07 05:01 ウェザーニュース

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猛暑や豪雨、激しい台風、季節感のズレなど、日本に住む私たちは地球温暖化の影響をしばしば感じています。

しかし、この影響、さらには被害をより大きく受けている人たちもいます。それは誰で、国や地域による違いはあるのでしょうか。

気候変動問題の専門家である江守正多さん(東京大学 未来ビジョン研究センター教授)の監修のもと、「温暖化問題の格差」について見ていきましょう。

Q1/中国、アメリカ、インドの3ヵ国だけで、世界の二酸化炭素の半分以上を排出しているって、本当?

◆A/本当です。先進国や新興国が二酸化炭素をたくさん排出しています。

世界の国別の二酸化炭素排出量(エネルギー起源)は、1位中国、2位アメリカ(米国)、3位インド、4位ロシア、5位日本となっています。

中国・アメリカ・インドの上位3ヵ国だけで、世界の約半分を、上位10ヵ国で世界の7割近くを占めています。
国全体ではなく、1人あたりで見ると、カタール、バーレーン、クウェートなどの産油国が上位にきます。

「大まかに言って、先進国や新興国の排出量が大きく、発展途上国の排出量が小さいという認識は妥当だと思います。

1人あたりで見ると、産油国の排出量が大きく、大国、小国という見方をすると、当然、人口が多いほど排出量は大きいです。

1人あたりで比較すると、日本と中国は同程度で、アメリカの半分強ほどです。インドは1人あたりではまだ日本の1/4程度です。

また、排出量は国土が広いほど移動にかかるエネルギーが必要、寒い地域ほど暖房にかかるエネルギーが必要といったような地理的な条件にも左右されます。
国ごとの排出量を比較する上では、歴史的な責任の指標として、過去からの累積排出量に注目することもできます。

累積排出量で見ると、アメリカが1位です。

中国は累積排出量が近年急激に増えて、ヨーロッパ全体に匹敵する程度になっています。

このように詳しく見ると、いろいろと凸凹(でこぼこ)がありますが、大まかに言って、これまでの気候変動を生じさせた歴史的な責任が主に先進国にあるという認識は妥当でしょう」(江守さん)

Q2/地球温暖化の影響をよりひどく受けているのは先進国? 発展途上国?

◆A/失われる人命や被災者数は発展途上国が多い。

アメリカ、ヨーロッパ諸国、日本などの先進国は地球温暖化の影響を大きく受けています。ただ、比較すると、発展途上国のほうがより甚大な影響を受けているのでしょうか。

「地球温暖化の影響を何で比較するかにもよります。

経済損失で比較すると、先進国が大きな影響を受けているように見えますが、これは経済的な資産がそもそも先進国に集中しているためです。

失われる人命や被災者数、生活手段を失う人口などで見ると、深刻な影響を受けるのは低所得の発展途上国であると考えられます。
現時点ではっきり見えているのは、地球温暖化によって激甚化した台風・ハリケーンなどによる風水害と、熱波による健康被害でしょう。アジアや中南米の低緯度の国々で顕著です。

より慢性的には、サブサハラアフリカ(アフリカ大陸のうちサハラ砂漠より南に位置する地域)などでは干ばつの激化による水危機・食料危機が起こり、小島嶼国(しょうとうしょこく/太平洋、カリブ海、インド洋などに点在する小さな島国)では海面上昇による地下水の塩水化や沿岸域の浸水が進むでしょう」(江守さん)。

Q3/発展途上国の人たちは、どうして地球温暖化の影響を大きく受けてしまうの?

◆A/防災のインフラや制度が整備されていないことなどが背景にあります。

「経済的、技術的、能力的な限界により、防災のインフラや制度が整備されていないことや、自然を相手にする一次産業に従事する人の割合が多いことが挙げられると思います。

スラム街のようなところで、そもそも災害がなくても衣食住が十分でない暮らし方をしている人たちも多いでしょう。

加えて、低緯度の高温域・多雨域、乾燥地域、小島嶼といった、地理的に見ても被害を受けやすい地域に発展途上国が多いことも指摘できます」(江守さん)

Q4/国土そのものが沈む危険がある国があるって、本当?

◆A/見解は分かれますが、沈む危険のある国は確かに存在します。

海面の上昇によって、南太平洋にあるキリバス、ツバル、インド洋にあるモルディブなどは、国土そのものが沈む危険性すらあると指摘する専門家もいます。
「たとえばツバルでは、すでに海面上昇の被害が出ているかどうかは諸説あって、たびたび論争になります。波による堆積作用などによって島の面積が増えているという研究や、人口増加によって、もともと浸水しやすかった土地に人が増えたという指摘があります。

しかし、地下水の塩水化などの被害は確実に起きているし、今後、海面水位が数m単位で上昇すれば、国が沈んでしまうことは間違いありません。

ツバルでは、オーストラリアへの計画的な集団移民が始まっています。
またツバルは、国土を失っても国のアイデンティティを守るために、メタバース(インターネットなどのネットワークを通じてアクセスできる仮想空間)上にデジタル国家として存続することを計画しています。

小島嶼国は国際社会に対して気候変動対策を強く求め続けています。

バヌアツが中心となって、国際司法裁判所に気候変動についての勧告的意見を求めた結果、昨年(2025年)、『すべての国は、気候変動対策を行う国際法上の義務がある』という勧告的意見が出されました」(江守さん)

Q5/日本などの先進国に住む人たちはどうしたらいいの?

◆A/より弱い立場の人たちがより深刻な被害を受けていることを、まずは知ることが大切です。

「小島嶼国をはじめ、多くの発展途上国の人たちは、気候変動の原因となる温室効果ガスをほとんど出していないにもかかわらず、気候変動による深刻な影響を受けています。その原因を作ってきたのは先進国や新興国の人たちです。

もし『日本がこれから沈没することがわかりました。それは日本人のせいではなく、外国の人たちのせいです』と言われたらどう思うか、ぜひ想像してみてほしいです。

『そんな理不尽な話があってたまるか』と皆さん、怒るのではないでしょうか。それが実際に起きている国々がある、ということです。

そう考えると、気候変動は止めなくてはいけない問題だということを改めて感じていただけるのではないでしょうか。
このように、気候変動問題を巡って生じる不公平・不公正を是正しようという考え方を『気候正義(Climate Justice)』といいます。ここでいう『正義』は『正義か悪か』というような意味ではなく、『公正であること』です。

今回見てきた国家間の問題だけではなく、将来世代ほど深刻な被害を受けるという世代間の問題もあるし、日本で今生きている人たちの中でも、より弱い立場の人ほど深刻な被害を受けるという問題もあります。

自分が理不尽な被害に遭わないためにも、誰かに理不尽な被害を及ぼさないためにも、気候変動を止める必要があります」(江守さん)

地球温暖化問題には、世界的な差や不公平の問題もあることがわかりました。

「温暖化によって、沈んでなくなってしまうかもしれない国がある」ことなどを知るのも、個人ができる気候変動対策の第一歩です。

ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、皆さんと一緒に地球の未来を考えていきます。

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監修/江守正多 東京大学 未来ビジョン研究センター 教授(@seitaemori)
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