地球温暖化のウソ? ホント?(25)減少し続ける世界の森林面積を増やすための妙案は?

2025-12-15 05:04 ウェザーニュース

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国連食糧農業機関(FAO)によると、1990〜2020年の30年間に、世界中の森林は約178万平方km(約1億7800万ヘクタール)減少しました。これは日本の約4.7倍の面積に相当します。

森林は代表的な温室効果ガスである大気中の二酸化炭素を吸収します。

では、森林を増やす妙案はあるのでしょうか。

世界の森林の状況や森林面積の増加策などについて、気候変動問題の専門家である江守正多さん(東京大学 未来ビジョン研究センター教授)の監修のもと見ていきましょう。

Q1/世界の森林はどのぐらいの量の二酸化炭素を吸収しているの?

◆A/人類が排出した二酸化炭素の21%を陸上生態系が吸収しています。

以前は世界の森林は人類が化石燃料の燃焼などによって排出する二酸化炭素の約30%を吸収しているといわれていました。現状はどうでしょうか。
「最新の評価では、人類による二酸化炭素排出のうち陸上生態系が吸収する割合は、過去10年の平均で21%とされており、従来の約30%という見積もりより小さくなりました(Global Carbon Budget, 2025)。

これは近年の吸収量が急に減ったためではなく、評価の方法が見直されて、これまで考えられていたよりも吸収量が小さいと考えられるようになったということです。

この貴重な吸収能力がさらに減ることがないか、見守っていく必要があると思います」(江守さん)

Q2/多発する山火事によって、森林の二酸化炭素の吸収力は変わったの?

◆A/山火事に加え、気温上昇の影響などで森林の二酸化炭素吸収力は低下すると考えられます。

近年の山火事や森林の違法伐採などによって、森林の二酸化炭素吸収力が低下するだけでなく、森林がむしろ二酸化炭素の排出源に転じるリスクがあるといった見解もあります。

これは主に山火事などで樹木が燃えることで、樹木が蓄えていた大量の二酸化炭素が放出されるために起こるリスクです。
「人類による二酸化炭素排出量全体(化石燃料起源+土地利用起源)のうち、森林伐採などの土地利用起源の割合は12%と評価されています。

吸収量の21%と比べると小さいので、現時点ではまだ正味で排出源に転じることはなさそうですが、将来的には排出源に転じるリスクが懸念されています。

森林の二酸化炭素吸収能力の低下は、火災のほかに、気温上昇によって植物の呼吸や土壌有機物の分解が大きくなることや、干ばつによって光合成が阻害されることによっても進むと考えられます」(江守さん)

Q3/森林面積が増えている国や地域があるって、本当?

◆A/本当です。中国などでは増えていますが、問題点も指摘されています。

国連食糧農業機関(FAO)などの報告によると、森林面積増加国の上位国として、中国、ロシア、インド、トルコなどが挙げられています。
ただし、これらの国でも、手放しで喜べない状況もあります。

「国や地域などによる違いはありますが、効率を優先して、成長の早いユーカリやアカシアといった外来種の単一樹種を広範囲に植林することも多く、その場合は生物多様性に悪影響を与えると考えられています。とはいえ、最近は改善する提案も増えてきているようです」(江守さん)

Q4/世界の森林を増やすには、どうしたらいいの?

◆A/日本のJICAやJAXAも活動。COP30によって、新たな基金も設立。

世界の森林破壊を止めて、森林を再生するにはどうしたらよいのでしょうか。

「たとえば、日本のJICA(国際協力機構)とJAXA(宇宙航空研究開発機構)が人工衛星でアマゾンの熱帯雨林の違法伐採を宇宙から監視する取り組みをしています。

国際的な枠組みとしては、途上国の森林保全に対して国際社会が資金を提供するREDD+という仕組みが構築されてきています。
ブラジルで開催されたCOP30に出席する参加者たち 写真/EPA=時事
今年(2025年)の11月10日から21日までブラジルで開かれていたCOP30(国連気候変動枠組条約第30回締約国会議)では、ブラジルが議長国として提案したTFFF(国際熱帯林保護基金)という仕組みが設立されました。

環境保全に取り組む公益財団法人のWWFジャパンのサイトには、TFFFは『先進国をはじめとする国だけでなく、民間セクターにも参加を呼びかけて資金を積み立て、債券等への投資から得る利益を、自国の熱帯林(正確には熱帯・亜熱帯湿潤広葉樹林)を守る取組をする国々に配布します』とあります。

これは、国や企業が出した資金を投資で増やし、その利益を自国の熱帯林を守ろうとしている国に渡すことで、森林の保護を応援する仕組みです。」(江守さん)

Q5/森林を増やす方法は、ほかにもまだあるの?

◆A/アフリカのサヘル地域やアマゾン熱帯雨林を再生させるプロジェクトなどがあります。

アフリカ大陸のサハラ砂漠の南縁に広がるサヘル地域を対象に、1億ヘクタールの土地を緑でよみがえらせるという「グレート・グリーン・ウォール」は、世界最大級の森林再生プロジェクトといわれます。
アマゾンの熱帯雨林に関しては、ブラジル政府や先住民族、NGO(非政府組織)などが協力し、在来種の植林や生態系保護を進めていて、2026年までに7300万本の植樹を目指す目標が掲げられています。

ほかにも、ドローンを使って樹木の種子を空中から撒く方法、世界各地の都市の空き地に小規模な森林(ミニ森林)を造るアイデアなどがあります。

「森林を再生させるために、世界の多くの人たちが知恵を出しています。その中には期待できるものもあるし、総じて、応援していくべきだと思いますが、課題にもしっかり目を向けて、改良しながら進めていくことが大事だといえそうです」(江守さん)


今回の記事のタイトル「減少し続ける世界の森林面積を増やすための妙案はある?」に対しては「今のところ、図抜けた妙案はない」と答えるのが妥当でしょう。

ただし、上で見たように、優れた案はあるし、すでに実行に移されているプロジェクトもあります。

世界の森林再生は気候変動問題にもプラスに働く。まずそのことを多くの人が認識することが大切です。

ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、皆さんと一緒に地球の未来を考えていきます。

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監修/江守正多 東京大学 未来ビジョン研究センター 教授(@seitaemori)
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