将来、柿はオレンジが薄くなる!? 地球温暖化の柿への影響
高温で柿に変化!?
地球温暖化の影響で秋期の気温の下がり方が変わってきています。秋期の高温により、干し柿でよく知られる長野県の「市田柿」や岐阜県の「富有柿」では、着色不良などが見られるようになってきているといいます。
「岐阜県では、近年、柿生産者から『残暑が厳しい年は、柿の色づきが悪くなる』『最近着色不良が増えている』といった声が寄せられています。
おいしそうに熟したときの柿の色は、果皮に含まれるカロテノイドという橙色の色素によるものです。柿の実は、はじめ緑色ですが、9月の平均気温が21〜23℃に下がることで、『クロロフィル』という色素が分解されて緑色が薄くなり、カロテノイドが合成されることで鮮やかな橙色に着色します。
ところが、残暑などで9月の気温が下がらないと色づきが薄くなってしまうのです。消費者に『黄色っぽい柿は甘みが薄い』というイメージがあるので深刻です」(山田先生)
「岐阜県では、近年、柿生産者から『残暑が厳しい年は、柿の色づきが悪くなる』『最近着色不良が増えている』といった声が寄せられています。
おいしそうに熟したときの柿の色は、果皮に含まれるカロテノイドという橙色の色素によるものです。柿の実は、はじめ緑色ですが、9月の平均気温が21〜23℃に下がることで、『クロロフィル』という色素が分解されて緑色が薄くなり、カロテノイドが合成されることで鮮やかな橙色に着色します。
ところが、残暑などで9月の気温が下がらないと色づきが薄くなってしまうのです。消費者に『黄色っぽい柿は甘みが薄い』というイメージがあるので深刻です」(山田先生)
柿栽培の適地をマップ化
実は、柿の生産地でも地域によって柿の着色不良を訴える声には差があるといいます。山田先生は柿の温暖化への影響を詳しく調べました。
「これまでの研究から、『富有柿』の栽培にとってよい条件として3つの気温がわかっています。『年平均気温が15〜16℃』『9月の平均気温が21〜23℃』『10月の平均気温が16℃以上』です」(山田先生)
「これまでの研究から、『富有柿』の栽培にとってよい条件として3つの気温がわかっています。『年平均気温が15〜16℃』『9月の平均気温が21〜23℃』『10月の平均気温が16℃以上』です」(山田先生)
「この条件に当てはまる栽培適地のポテンシャルマップを作成しました。緑色の部分が、現在の柿栽培地域です。2つを比べると、栽培地域が適性の高いエリアにあることがわかります」(山田先生)
温暖化が進むとどうなるのでしょうか。
「気象庁の気候モデルを使って2040年頃の気象条件を予測し、同じように栽培適地ポテンシャルマップを作成しました。
すると、2000年代と比べて『年平均気温が15~16℃』の条件に当てはまる地域は増えています。『10月の平均気温が16℃以上』が当てはまる地域にも大きな変化はありません。
しかし、『9月の平均気温が21〜23℃』の条件からは、現在の柿栽培地域の大部分がずれてしまっている結果となりました」(山田先生)
「富有柿」が“地域の特産品”でなくなってしまう可能性があるのでしょうか。
「特に9月の平均気温上昇は、果皮で橙色の色素が生合成されるのに影響を与えるとされています。
このリスクを下げるためにも、柿の品種を選定しなおしたり、栽培の方法や選果基準の見直しなどが必要になると考えられます。また、着色不良の果実でも糖度や風味が劣るわけではないので、消費者に色づきに関する周知をはかることなども考えられます」(山田先生)
温暖化が進むとどうなるのでしょうか。
「気象庁の気候モデルを使って2040年頃の気象条件を予測し、同じように栽培適地ポテンシャルマップを作成しました。
すると、2000年代と比べて『年平均気温が15~16℃』の条件に当てはまる地域は増えています。『10月の平均気温が16℃以上』が当てはまる地域にも大きな変化はありません。
しかし、『9月の平均気温が21〜23℃』の条件からは、現在の柿栽培地域の大部分がずれてしまっている結果となりました」(山田先生)
「富有柿」が“地域の特産品”でなくなってしまう可能性があるのでしょうか。
「特に9月の平均気温上昇は、果皮で橙色の色素が生合成されるのに影響を与えるとされています。
このリスクを下げるためにも、柿の品種を選定しなおしたり、栽培の方法や選果基準の見直しなどが必要になると考えられます。また、着色不良の果実でも糖度や風味が劣るわけではないので、消費者に色づきに関する周知をはかることなども考えられます」(山田先生)
温暖化は危機? チャンス⁉︎
日本の年平均気温は1898〜2024年は100年当たり1.40℃の割合で上昇しており、将来においても平均気温は一層上昇すると予測されています。柿の生産は今後どうなっていくのでしょうか。
「『富有柿』発祥の地である岐阜県で、現在の富有柿の産地のほとんどが着色にとって最適な気候条件から外れてしまうという予測結果はショッキングです。ただ、岐阜で柿が作れなくなるわけではありませんし、岐阜だけで着色不良が起こりやすくなっているわけでもありません。我が国の果樹栽培における気候変動適応策について、今後一層の研究が必要です。
一方で温暖化により岐阜で他の果物、たとえば亜熱帯果樹の栽培が可能になることも考えられます。実際に、アボカド、レモン、グレープフルーツについて、同じ手法で2040年頃の栽培適地のポテンシャルマップを作成したところ、レモンやグレープフルーツは温暖化がかなり進む将来においては、栽培適地となると予測されました。
温暖化が進むなかで、日本の農作物の品質・収穫量・収穫時期などはさまざまな影響を受けることが予想されます。特に果樹栽培は品種更新や作目転換に時間がかかるため、より長期的な展望で対応策を検討する必要があると考えます」(山田先生)
ますます温暖化が進むと予想されるなか、農作物への影響についても注視する必要があるでしょう。
ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、みなさんと一緒に地球の未来を考えていきます。まずは気候変動について知るところから、一緒に取り組んでいきましょう。
特集 ウェザーニュースと考える地球の未来
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参考資料
岐阜県気候変動適応センター「安心な暮らしのヒントBOOK@ぎふ vol.2」、文部科学省及び気象庁「日本の気候変動 2025 — 大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書 —」
「『富有柿』発祥の地である岐阜県で、現在の富有柿の産地のほとんどが着色にとって最適な気候条件から外れてしまうという予測結果はショッキングです。ただ、岐阜で柿が作れなくなるわけではありませんし、岐阜だけで着色不良が起こりやすくなっているわけでもありません。我が国の果樹栽培における気候変動適応策について、今後一層の研究が必要です。
一方で温暖化により岐阜で他の果物、たとえば亜熱帯果樹の栽培が可能になることも考えられます。実際に、アボカド、レモン、グレープフルーツについて、同じ手法で2040年頃の栽培適地のポテンシャルマップを作成したところ、レモンやグレープフルーツは温暖化がかなり進む将来においては、栽培適地となると予測されました。
温暖化が進むなかで、日本の農作物の品質・収穫量・収穫時期などはさまざまな影響を受けることが予想されます。特に果樹栽培は品種更新や作目転換に時間がかかるため、より長期的な展望で対応策を検討する必要があると考えます」(山田先生)
ますます温暖化が進むと予想されるなか、農作物への影響についても注視する必要があるでしょう。
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