地球温暖化のウソ? ホント?(23)世界の森林面積が減っているって、本当?

2025-10-29 05:10 ウェザーニュース

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カナダやオーストラリア、ロシアのシベリア、アメリカのカリフォルニア州、ハワイ州マウイ島など、近年、山火事が世界中で頻発しています。当然、これによって、世界の森林面積は減少しているでしょう。

森林減少の原因は山火事だけではありません。

世界の森林はどういう状況にあるのか、気候変動問題の専門家である江守正多さん(東京大学 未来ビジョン研究センター教授)の監修のもと見ていきましょう。

Q1/世界の森林面積は減っているの?

◆A/30年間で日本の面積の約4.7倍の森林が失われました。

国連食糧農業機関(FAO)によると、1990〜2020年の30年間に、世界中の森林は約178万平方km(約1億7800万ヘクタール)減少しました。

これは北アフリカ2位の面積を誇るリビアに匹敵する面積で、日本の約4.7倍の面積でもあります。それほどの森林がこの30年間で減少したのです。

森林面積の減少が著しい国は、ブラジル、インドネシア、ミャンマー、ナイジェリア、タンザニア、パラグアイなどで、南アメリカ、アフリカ、東南アジアの国や地域が目につきます。
アマゾンの熱帯雨林はブラジルを中心に広がっています。アマゾンについては、江守さんは次のように話します。

「アマゾンは二酸化炭素を吸収し、気候システムにおいて重要な役割を担っています。その保護は地球温暖化抑制のために不可欠です」

森林面積が減少しているのはこの30年間に限った話ではないとも話します。
「世界の森林減少は産業革命前からずっと続いています。

世界全体の土地利用変化による二酸化炭素排出量は1960年ごろから5GtCO₂/年程度(1年間に5ギガトン程度の二酸化炭素を排出。5GtCO₂/年は日本全体が1年間に出す二酸化炭素の約5倍)の一定で推移していて、近年に特段大きくなっているわけではありません。

むしろ近年は植林も盛んに行われて、森林面積が増えている国もあります。

しかし、世界全体で見ると、正味でまだ森林減少が続いている状態です。

二酸化炭素だけでなく、生物多様性保全の側面から見ても、今の状態は持続可能ではなく、森林減少を食い止めるべきという認識がもっと必要だと思います」(江守さん)

Q2/世界の森林破壊はどうして起こっているの?

◆A/農地・牧場の開発や商用・違法伐採などが原因。責任は先進国にもあります。

世界の森林減少、さらには森林破壊(自然の回復力を超える樹木の伐採による森林減少など)はなぜ起こっているのでしょうか。

ブラジル、インドネシア、ミャンマー、ナイジェリア、コンゴ民主共和国などでは、農地や牧場の開発、商用伐採、違法伐採、焼畑農業、そして、森林火災の問題が指摘されています。
「現地の人々の中に経済的利益のための商用伐採や農地の拡大を望む人たちがいるのは確かでしょうが、そこで生産された木材や農産物を輸入して享受している先進国にも大きな責任があります。これを抑制するためには行政的な規制が必要です。

ブラジルでは、ボルソナーロ前大統領の時代に環境保護が軽視されて森林破壊も拡大しましたが、今のルラ大統領になって改善されたといわれています。政治の役割は重要です。

日本のJICA(国際協力機構)とJAXA(宇宙航空研究開発機構)が人工衛星でアマゾンの熱帯雨林の違法伐採を宇宙から監視するという取り組みが行われているように、技術による貢献も可能です。

国際的な枠組みとしては、途上国の森林保全に対して国際社会が資金を提供するREDD+という仕組みが構築されてきています」(江守さん)

REDD+(レッドプラス) のREDDは英文の略語で、“Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation in Developing Countries”、つまり「開発途上国における森林減少および森林劣化による排出の削減」のことで、「+(プラス)」は「森林保全などの要素」を加えたことを意味します。

Q3/日本の森林面積は減っていないって、本当?

◆A/本当です。ほぼ横ばいで推移しています。

世界の森林面積が減少の一途をたどっている一方で、日本の森林面積はほぼ横ばいで推移しています。

人工林と天然林で見ると、人工林の面積は増加していますが、天然林の面積は減少傾向にあります。
人工林の多くはスギ、次いでヒノキで、これらは花粉症の原因にもなっています。

江守さんは日本の林業について懸念を示します。

「日本では、戦後にスギの植林が大規模に行われましたが、安い輸入木材が入ってきたために林業が衰退してしまっています。

林野庁は補助金を出して間伐などの森林管理を進めていますが、林業の本格的な再生には至っていません。

持続可能な林業を再生させるためには、制度整備や技術開発を通じて林業を儲かる魅力的な産業にして、担い手を増やさなければなりませんが、まだその道筋は十分に見えてきていないようです」

Q4/森林を守ることがなぜ大切なの?

◆A/気候変動の観点に加え、生物多様性保全のためにも重要です。

森林などの植物は、光合成によって酸素を生み出していると同時に、大気中の二酸化炭素を吸収し、減らしています。また、炭素を幹や枝、根、落ち葉や土壌に蓄えています。

森林をはじめとした植物のこうした働きによって、温室効果ガスの濃度が上がることを抑え、地球温暖化(気候変動)の進行を遅らせています。
「気候変動の観点からいえば、森林を含む陸上生態系は、人間活動による二酸化炭素排出量の約3割を吸収してくれています。森林が減少してこの吸収能力が落ちてしまうと、気候変動を止めることがますます難しくなります。

アマゾンの熱帯雨林は、気候変動の影響による干ばつと、人間による森林破壊がある限度(ティッピングポイント)を超えると、どんどん枯れていって、やがて草原になってしまうと考えられています。

そうなると、大量の二酸化炭素が排出され、温暖化を加速してしまいます。そのような状況は避けなければなりません。

気候変動の観点だけでなく、生物多様性保全の観点からも、森林破壊の抑止と森林の再生が望まれています。その際、安いコストで早く育つ樹種を一面に植えようとすると、むしろ生物多様性に悪影響になることがあるので、その土地の生態系を再生するように配慮した植林が必要です」(江守さん)


世界の森林面積は年々、さらにいえば、日々減少しています。日本の森林が減少していないからといって、安心できないことは明白です。

地球温暖化を緩和し、生物多様性の危機を阻止するためにも、森林破壊を止めることが極めて重要です。

ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、皆さんと一緒に地球の未来を考えていきます。
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監修/江守正多 東京大学 未来ビジョン研究センター 教授(@seitaemori)
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