鬼怒川決壊から10年 水害が発生した時、あなたが取るべき避難行動は

2025-09-10 05:10 ウェザーニュース

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2015年9月10日に茨城県常総市で鬼怒川の堤防が決壊するなど、大きな被害をもたらした「平成27年9月関東・東北豪雨」。災害関連死を含み20人が死亡、1万5000棟以上が浸水という災害から10年の節目となりました。

以降も地球温暖化による海水温の上昇なども影響して大雨が各地で増加傾向にあり、特に9~10月は秋雨前線と台風接近による水害が多発しやすい時期を迎えています。

関東・東北豪雨から10年を機に、水害から身を守るために平時から確認しておきたい自宅の災害リスクと、“もしもの時”に取るべき行動などについてまとめてみました。

2015年「関東・東北豪雨」では20人が死亡

2015年の「関東・東北豪雨」は、愛知県に上陸後、温帯低気圧に変わった台風18号が記録的な大雨をもたらし、総務省消防庁のまとめによると、茨城・栃木県で各3人、宮城県で2人の計8人が死亡、全国で82人が重軽傷を負いました。ほかに茨城県では12人の災害関連死も生じています。

9月10日に発生した常総市での鬼怒川の堤防決壊や、各地で発生した土砂崩れなどによる住家の全・半壊は7171棟、床上・床下浸水が1万5782棟に達しました。

10~12日にわたった救助者数は茨城・栃木・宮城3県で計2256人。逃げ遅れて孤立した民家の屋根瓦や集合住宅のベランダ、電柱にしがみついた人たちが、消防防災ヘリコプターや警察、自衛隊の救命ボートなどにより救出されるニュース映像が、水害の恐ろしさを強く印象付けました。

公共建物37棟も被害を受けています。鬼怒川堤防決壊の約1時間後に現場に近い常総市役所石下庁舎が浸水。さらに約13時間後になって下流約9kmに位置し、災害対策本部が置かれていた本庁舎まで浸水して電話が不通となるなど、救助活動に支障を来たしました。

2014〜2023年の水害被害総額は7兆6200億円

大きな被害をもたらした「関東・東北豪雨」後も、全国各地で水害は多発しました。

国土交通省が今年7月に公表した「水害被害額(確報値)」によると、2014~2023年の10年間の被害総額は約7兆6200億円。2019年が約2兆1800億円と最も多く、2018年の約1兆4100億円が続きます。2023年も約7100億円の被害が生じました。

2019年は、台風による被害が相次いだ年で、特に台風15号と台風19号により甚大な被害がありました。2018年は、「西日本豪雨」(平成30年7月豪雨)が発生した年です。岡山県と広島県を中心に河川の氾濫や土砂災害が同時多発的に発生し、両県を中心に多くの死者や家屋被害が出ました。

40年で大雨は1.5倍に増加

近年、1時間降水量が50mmを超えるような短時間強雨が約40年で約1.5倍になるなど、日本国内の極端な大雨の発生頻度や強度が増加傾向です。大雨の極端化によって、これまで想定していなかった頻度や規模で災害が発生する懸念も高まっています。

こうした気象災害をもたらす大雨や短時間強雨の頻発化の背景には、地球温暖化の影響があると考えられています。今後、地球温暖化がさらに進行した場合は、発生頻度がますます増加すると予測されており、自然災害の脅威に備えることが重要です。

災害に関する「警戒レベル」の意味

大雨による災害から身を守るためには、まず5段階の災害に関する「警戒レベル」の意味を理解しておくことが必要です。

警戒レベル1〜2は気象庁が発表する注意報などを基に災害への心構えを高め、自らの避難行動を確認する段階です。

警戒レベル3~5は市区町村が発令する避難指示などの情報を知り、警戒レベル3は高齢者や体の不自由な方などが避難を開始、警戒レベル4は全ての人に避難が必要です。つまり、警戒レベル4までに危険な場所から全員が避難しなければなりません。

警戒レベル5は既に災害が発生しているか災害が切迫している段階で、自宅や滞在地から指定避難所への移動が困難になる状況です。

ハザードマップと避難行動判定フローを確認しておく

台風・豪雨などによる災害が発生した時に、命を守る行動を取るためには、事前の備えと災害発生時の迅速な判断が重要です。平時からハザードマップと避難行動判定フローで、自宅の災害リスクと取るべき行動を確認しておきましょう。

ハザードマップは浸水や土砂災害が発生する恐れの高い区域を着色した地図です。

まずはハザードマップで自分の家の位置を確認し、印を付けましょう。色が塗られていれば災害の危険があるので、原則として自宅の外に避難する「立退き避難」が必要です。
家屋がある場所に色がついていなくとも、災害が起こる可能性があります。周りと比べて低い土地や崖のそばなどに家屋があれば、気象庁や市区町村からの情報を参考に必要に応じて避難してください。

ただし、浸水の危険区域であっても例外として、浸水する深さよりも高いところにいたり、浸水しても水が引くまで我慢できるだけの水・食糧などの備えが十分にあったりする場合には、自宅に留まり安全を確保する「屋内安全確保」も可能です。
ハザードマップで自分の家の位置に色が塗られていたら、次に避難にかかる時間を確認します。

自身または一緒に避難する人の避難に時間がかかる場合は、警戒レベル3の「高齢者等避難」が発令された段階で避難を開始します。安全な場所に住んでいる親戚・知人宅を避難先にできる場合は、そちらへ避難しましょう。そうでなければ、市区町村の「指定緊急避難場所」に避難してください。
避難に時間がかからない場合は、これと同様の行動を警戒レベル4「避難指示」の段階で行うようにしてください。

警戒レベル5「緊急安全確保」になった後でも、基本的にはレベル3~4までの避難方法と変わりませんが、避難経路上に増水した河川や急な崖などがある場合は、移動は避けてください。建物の中で斜面や崖からなるべく離れた部屋か上の階へ避難した上で、安全の確保と情報の入手に努めましょう。

「非常用持ち出し袋」や「家族との安全確認手段」の確認も

避難が必要になったときに備え、事前に貴重品や衣類、非常用食品などを非常用持ち出し袋に入れて、すぐに持ち出せるようにしておきます。数量は背負ったり持ったりして避難所まで歩ける量に留めるように心掛けてください。

家族同士が離れている時に避難が必要となる場合もあります。その際に互いの安否を確認するための方法を決めておいてください。災害時の安否確認のための固定・携帯電話やインターネットによる「災害用伝言サービス」などの利用方法についても確認し、“もしもの時”に活用できるようにしておきましょう。
大雨、台風など、さまざまな原因で水害は起こりますが、9〜10月は秋雨前線と台風の接近で水害が発生しやすい時期です。自分が住んでいる場所にどのような水害が起こり得るのか予測し、水害が迫ったらどう行動するかを考えてみる機会にしてください。
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参考資料
気象庁「日本の気候変動2025」、同「防災気象情報と警戒レベルとの対応について」、国土交通省「水害レポート2024」、同「令和5年の水害被害額(確報値)を公表」、内閣府「避難情報に関するガイドラインの改定(令和3年5月)」、消防庁「平成27年台風第18号による大雨等に係る被害状況等について(第40報)」、政府広報オンライン「河川の氾濫や高潮など、水害からあなたの地域を守る、『水防』」
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