日本歴代最高気温を大幅更新、この夏の異例の猛暑は地球温暖化の影響?

2025-08-27 05:12 ウェザーニュース

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この夏は危険な暑さが頻発しています。7月下旬は全国的に高温となり、特に北海道で40℃に迫り、月平均気温が1946年の統計開始以降、7月としては最も高くなりました。

こうした記録的な暑さについて、極端気象アトリビューションセンター(以下WAC)は「人間活動による地球温暖化の影響が確認された」という分析を発表しました。

温暖化の影響をどう考えたらよいのか気候変動の専門家に伺いました。

7月下旬の記録的高温は地球温暖化の影響

7月下旬の天候に、「7月なのになぜこんなに暑いのか」と疑問に思った人も少なくないでしょう。

WACでは22〜30日の日本上空と、7月18〜26日の北日本上空それぞれの1500mの平均気温について、「イベント・アトリビューション」で検証しました。

スーパーコンピュータで作成した「現実の地球」と「温暖化が起きていない仮想の地球」による統計情報をもとに高温の発生確率をくらべ、異常気象が温暖化のせいだったかを分析する手法です。
WACメンバーで東京大学大気海洋研究所気候システム研究系気候変動現象研究部門准教授の今田由紀子先生は、「一昨年、昨年と、2年連続で高温の観測記録が大きく更新されたことだけでも大変な驚きでしたが、今年7月の高温はそれらの記録をさらに大きく塗り替え、想定外の事態が起こっています。様々な自然変動が重なった、非常に稀な状況であると考えられますが、地球温暖化の影響は確実に現れています」と語ります。
「22〜30日の日本上空について、現実の気候条件とくらべると、高温の発生確率は約3.2%でした。ところが温暖化が起きていない気候条件では、発生確率はわずか約0.0087%。つまり、温暖化がなければおよそ1万1472年に1度しか起こらなかったはずの現象が、温暖化により約31年に1度の発生リスクになったことを意味します。

18〜26日の北日本上空についても、現実の気候条件での発生確率は約3.6%(およそ28年に1度)、非温暖化気候条件では約0.10%(およそ955年に1度)。こちらも温暖化により発生リスクが約34倍になっていたと推定されます」(今田先生)

統計開始以降、最も暑かった

気象庁によると、7月は全国153の気象台等のうち98地点で月平均気温が7月として最も高温になり、特に北海道では22の気象台等の全地点が歴代1位でした。

日本全体の月平均気温も1898年の統計開始以降最も高くなりました。1991〜2020年の30年平均値である基準値より、2.89℃も高い値です。
8月に入ってからも、5日に群馬県伊勢崎で最高気温41.8℃を記録したほか、歴代最高気温ランキング20に入る記録を次々と更新。また、5日は14地点で40℃を観測し、同じ日に40℃を観測した地点数としては統計史上最多となりました。

気候科学者で東京大学未来ビジョン研究センター教授の江守正多先生は、「エアコン設備の少ない北海道での40℃近い気温や、国内の最高気温記録の大幅更新など、今年の猛暑は多くの日本国民にとってショッキングな経験だったのではないでしょうか。

この異常な暑さの背景に、人間活動に起因する地球温暖化があることをしっかりと理解すべき」と訴えます。
1933年に山形で観測された40.8℃が、長い間、日本の最高気温として記録されていました。この記録は2007年に多治見(岐阜県)と熊谷(埼玉県)で40.9℃を観測するまで、74年間も破られなかったのです。

「2007年以降は【40.9℃】(2007年)→【41.0℃】(2013年)→【41.1℃】(2018年)と、5〜7年に0.1℃ペースで更新されていましたが、今年は一気に0.7℃も更新。約35年分も先を行くペースで更新されたのです。

気温というのは、年によって気圧のパターンの特徴が異なるため、年ごとに不規則に変わるものです。しかし、長期的傾向として捉えても、明らかに上昇してきています。

去年、今年と続く酷暑は、ベースに気温上昇となる温暖化があり、そこに高温の気圧のパターンが重なったことから起きています。本来ならばある程度の“暑い夏”ですんだはずの気象現象が、温暖化により“酷暑”になっているのです。こういったことが世界中で起きています」(江守先生)

地球温暖化が進むとどうなる?

今後も温暖化が進んでいくと、夏の暑さはさらに深刻になりそうです。

温室効果ガス(CO2)排出の削減が進まないと仮定したシナリオであるRCP8.5をもとに、ウェザーニュース気候テックチームが解析した結果、2050年頃には大阪市で40日前後と、昨年(41日)や今年(8月26日時点で36日)レベルの猛暑日日数が普通になるとみられます。

最悪のシナリオで進んだ場合は2100年には大阪市で70日以上、名古屋市で60日以上、東京都心でも40日以上に達する可能性もあります。大阪市では1年の20%以上が猛暑日ということになる計算です。温暖化により社会が変わらざるをえなくなるかもしれません。
「すでに暑さにより子どもが外で遊べない、スポーツや屋外での労働が危険になる、あるいは農業や漁業など食料生産にも影響が出ています。温暖化により激甚化したとみられる大雨などの異常気象や森林火災なども増えています。

世界に目を向ければ、昨年、オレンジやオリーブオイル、チョコレートの価格高騰が話題となりましたが、気候変動により干ばつや大雨が起きて世界的に品薄になったためです。今年もヨーロッパでの熱波、インドやパキスタンでの大雨などの異常気象が起き、被害も大きなものとなっています」(江守先生)

温暖化を緩和するには?

現在は、温暖化でなく「地球沸騰化」と表現する人もいる状況です。温暖化を抑えるには、どうすれば良いのでしょうか。

「CO2を多く排出する化石燃料に依存しない新しい社会のシステムに移行することが急務です。

もはや、環境問題が企業や個人の『社会貢献』である時代は終わりました。温暖化を抑えるためのCO2排出ゼロに貢献する活動が、重要な使命であると考えます」(江守先生)
私たちが健やかに生き、将来の世代の負担を増さないために、一人ひとりがより真剣に考えていく必要があるのではないでしょうか。

温暖化の影響は私たちの生活にも大きな変化をもたらす可能性があります。ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、みなさんと一緒に地球の未来を考えていきます。まずは気候変動について知るところから、一緒に取り組んでいきましょう。
特集 ウェザーニュースと考える地球の未来
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参考資料
極端気象アトリビューションセンター(WAC)「2025年7月下旬の記録的高温 『地球温暖化の影響がなければ発生しなかったレベル』」
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