20℃以上の温度差も 暑さ対策の帽子は、色・素材で効果が変わる!?

2025-08-21 05:00 ウェザーニュース

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今年の夏も酷暑が続いています。今月5日には、群馬県伊勢崎で日本国内歴代最高気温となる41.8℃が観測されました。日本の歴代最高気温は上位4位(同率)までが、今年に入って更新されました。

日本の年平均気温は、1898~2024年の間に100年あたり1.40℃のペースで上昇していて、真夏日や猛暑日、熱帯夜の日数も急速に増え続けています。
特に猛暑日の日数は1990年代半ばを境に大きく増加しています。

気候の温暖化が進むなか、ますます暑さ対策が重要となっています。帽子もその一つです。

ウェザーニュースでは「外出する際、暑さ対策で帽子を使いますか?」というアンケート調査を実施したところ、「よく使う」と回答した人が最も多く36%に上りました。
「たまに使う」(29.2%)も含めると、全体の7割近くが、外出する際に暑さ対策として帽子を活用しています。

暑さ対策に重宝される帽子ですが、具体的にどれほどの暑熱効果があるのでしょうか。

健康教育、スポーツ活動中の帽子と蓄熱について研究している武蔵野美術大学教授の北徹朗先生に教えていただきます。

赤白帽にも蓄熱に大きな差

運動会の写真を見てください。左のサーモグラフィー画像では、帽子によって表面温度に違いがあることがわかります。

「髪の⻑い児童を見ると、5月の屋外環境下でも黒髪がかなりの高温になっていることが分かります。また、色の濃い赤帽も50℃近くにまで蓄熱して、白帽と比べ20〜30℃ほどの差が生じています」と、撮影を行った北先生は説明します。

表面温度は、帽子の有無だけでなく色によってずいぶん違いがあるのです。かぶっている人への影響はどうなのでしょうか。

炎天下、色と素材で帽子内の温湿度は違う

北先生は39種類の色と素材の帽子について調べました。実験は、地面から約70cmの高さの台上に帽子を並べ、帽子内部に温湿度計を設置して、30分おきに計測しました。
「ナイロン・レーヨン・絹・ポリエステル・綿は、すべてのカラーにおいて帽子内温度が40℃を超えていました。また、ポリエステル製もグレー以外は40℃を超えました。

一方で、綿ポリは、黒・ピンク・グレーにおいて30℃台までの上昇に留まりました。

また、色からみると、グレーやピンクの帽子内温度が低いという結果でした。なかでも綿ポリ製ピンクは平均値が38.3℃で、最も高かったナイロン製ピンクの42.2℃より4℃以上低かったのです」(北先生)

運動中の体温への影響は?

実際に人が帽子をかぶって活動しているときはどうなのでしょうか。北先生は、運動中について検証しました。

使ったのは、先の実験で最も温度上昇が抑えられた綿ポリ素材で、ピンク・グレー・白・黒の色別の帽子です。ゴルフ、ウォーキングなど動き方の異なる5種の運動を実施し、運動前後の深部体温、実施中の帽子内平均温度を計測しました。

「最も温度上昇を抑えたのは白色の帽子で、逆に黒色の帽子は40〜45℃程度の高温になりやすく危険なことがわかりました。一方、全てのタイプの帽子で深部体温が38℃以上の高温になるケースはみられませんでした」(北先生)

深部体温とは体の内部の温度で、脳や臓器などを守るため通常37℃前後に保たれているのです。

「温度が高くなりにくい素材や色の帽子を選んだことで、運動後に生命や健康を脅かすような深部体温の上昇は見られなかったのだと思います」(北先生)
白色の帽子は運動中も温度上昇を抑えられる
帽子内の温度だけでなく、湿度も計測しています。

「頭の“ムレ”も体温調節に大きく関わります。湿度が高いと汗が蒸発しづらくなり、冷却効果が得られなくなるのです。そこで、通気穴の広さで帽子内の湿度がどう変わるか検証したところ、『広い方が湿度を効率的に逃すことができそう』という傾向がつかめました。

別の研究ですが、通気穴のない帽子型のヘルメットをかぶっているゴルフ場のキャディでは、ヘルメット内温度が45℃程度、深部体温は39℃台にまで上昇していました。

暑熱環境下で効果的な帽子を選ぶことがいかに重要かわかります」(北先生)

どんな帽子が効果的?

夏場の暑さがますます厳しくなっている状況で、北先生は小学校の赤白帽の代わりに「桃白帽」など、帽子による温暖化適応策について提言しています。

「まず帽子を着用することが大切です。黒帽でも深部体温の上昇が抑えられた例からもわかるように、黒や赤などの色の濃い帽子でも、かぶらないよりはよいのです。

暑熱環境下で長時間作業する際には、『綿ポリ製』『淡い色(薄い色) 』『通気性の高い形状の帽子』を選ぶことが推奨されます。

ただし、通気穴については、数分おきに脱帽して帽子内の温湿度を逃してやれば、通気穴がある帽子と同程度の効果が得ることができます。

一方、蓄熱してしまった帽子だと脱帽しても帽子自体の温度は低下しませんので、日光反射率の高い色の薄いもの、素材は綿ポリ製がおすすめです」(北先生)
「赤白帽」よりも「桃白帽」の方が、暑さ対策に有効
酷暑の日が頻発するなかで健康に過ごすためには、データに基づいた正しい対策が重要でしょう。

「私が帽子の研究を始めるきっかけは、東京オリンピック・パラリンピック開催前の状況にあります。当時、明らかなデータがないまま、酷暑への不安や心配の声ばかりがクローズアップされていました。

私が長年研究してきたゴルフでは、プレー中の帽子内や着衣内の温湿度などは未知の領域。暑熱環境下の帽子についても、何十年も前の古い研究ばかりで、現代のこれまで経験したことがない猛暑下には適応できないものでした。

“地球沸騰化” の時代にも適応できる新たな知見を得るため、帽子に関する研究を継続していきます」(北先生)

地球温暖化が進行するなか、暑さ対策に重宝される帽子の選び方・使い方もアップデートが必要になっているのかもしれません。
温暖化の影響は私たちの生活にも大きな変化をもたらす可能性があります。ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、みなさんと一緒に地球の未来を考えていきます。まずは気候変動について知るところから、一緒に取り組んでいきましょう。
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参考資料
北徹朗ら「帽子の素材・色・形状が暑熱環境下でのスポーツ実施中の生理指標と帽子内温湿度に及ぼす影響」(「デサントスポーツ科学」第42巻、公益財団法人石本記念デサントスポーツ科学振興財団)、文部科学省及び気象庁「日本の気候変動 2025 — 大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書 —」
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