過去20年で熱中症死亡者数が約5倍に増加 温暖化で日本の“暑さ”に変化

2025-08-05 05:10 ウェザーニュース

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毎日続く酷暑に見舞われています。今年の6月は、例年の梅雨らしい天気とは異なる暑さが続きました。気象庁の発表によると、1898年以降で最も暑さが厳しかった6月だったそうです。

この“暑さ”に地球温暖化はどのように関係していたのでしょうか。健康へのリスクや将来への懸念など、専門家に詳しく教えていただきましょう。

温暖化がなければ6月中旬の高温はなかった?

気象庁によると、6月は全国153の気象台等のうち122地点で、月平均気温が6月として歴代1位の高温となり、特に北日本で+3.2℃、東日本が+2.3℃、西日本+1.8℃となりました。日本の月平均気温は、1898年以降で6月として最も高かったのです。
なかでも6月中旬は全国的に記録的な高温となりました。これについて、「地球温暖化がなければ 起こり得なかった」と指摘するのが東京大学大気海洋研究所気候システム研究系気候変動現象研究部門准教授の今田由紀子先生です。

6月中旬の暑さは、日本列島で太平洋高気圧が非常に強くなったことや亜熱帯ジェット気流の位置などが要因となったとみられています。

今田先生らの研究チームは、日本上空約1500m気温について、「イベント・アトリビューション」という手法で検証。スーパーコンピュータで作成した「現実の地球」と「温暖化が起きていない仮想の地球」による統計情報をもとに、極端高温の発生確率をくらべました。
「現実的な条件と温暖化していなかったと仮定した仮想の条件下で、 発生確率を統計的に計算しました。 その結果、 温暖化していない条件下では、今年6月に記録したような高温が発生する確率は限りなくゼロに近い値になっていました」(今田先生)

2025年6月16日~18日の高温は、地球温暖化による底上げがなければ、偶然の気象現象が重なったとしても起こり得ないものだとわかったのです。

「『温暖化がなければ起こり得なかった』 という結果は、 一昔前まではショッキングな結果でしたが、 最近では珍しくなくなってきました。 これまでに経験したことがない、 未曾有の高温が発生する確率も以前より高まっていると考えられます」(今田先生)

熱中症死亡者数が大幅増加

年々暑さが厳しくなるなか、非常に心配なデータがあります。熱中症による死亡者数が増えているのです。2000〜2004年の年平均より2020〜2024年平均は5倍近く増加しています。

「熱中症の発生は、1日の時間帯や年齢、地域によっても異なり、気温の変化とすぐに連動するわけではありませんが、この20年間で死亡数が5倍近くになっているというのは見逃せない数字です」と日本大学医学部附属板橋病院救命救急センター科長の山口順子先生は語ります。
「日本の夏の暑さの質が変わってきているのだから、過去の経験から大丈夫と思い込むのは危険です。すべての人がより一層の熱中症対策を忘れないようにして欲しいです。

特に、高齢者では年齢とともに適温がわかりづらくなってくる、体内の水分が不足しがちといったことのほかに、室内でもエアコンを使用しないなどの例がみられます。周囲からの注意も必要となってくるでしょう。

暑さによる健康リスクは熱中症だけではありません。心不全や狭心症などの循環器疾患、肺炎などの呼吸器疾患への影響のほか、糖尿病などが悪化するケースもあります。また、暑さがメンタルヘルスを悪化させるという研究もあります」(山口先生)

今後、猛暑日はさらに増えていく

「現在、地球全体の平均気温の温暖化レベルは+1.0~1.5℃の間にあると考えられますが、温暖化に伴う猛暑日の増加が、すでに私たちの生活に大きな影響を与え始めています。パリ協定(※)で目標として掲げられた1.5℃や2℃の目標が達成できたとしても、猛暑日は今よりもさらに増えることになります。

猛暑地点数の増加と熱中症搬送者数や熱中症死亡者数は必ずしも連動しませんが、リスクの底上げには効く可能性がありますので、個々人の生活様式や環境に応じた対策が必要であると考えます」(今田先生)

※パリ協定:2015年に国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択された気候変動に関する国際的な協定

温暖化リスクを正しく理解することが大事

パリ協定は、「世界の平均気温上昇を産業革命以前にくらべて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」ことを目的としています。

「緩和策が目標通りに進んだとしても、 猛暑のリスクは今よりも深刻化する可能性が高いですので、 緩和策と適応策の両輪で臨むことが重要です。

+1.5℃や+2.0℃という数字は、一見大したことがない数字のように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、 現在の温暖化レベルでも、 最近の猛暑の発生に確実に影響を及ぼしていたことが科学的に示されています。

イベント・アトリビューションをはじめとする我々の研究が、 温暖化のリスクを正しく理解する一助になれば幸いです」(今田先生)
現在も温暖化は着実に進んでいます。その影響で起こる異常気象について考え、ひとり一人が正しく対策を講じていくことが必要です。

温暖化の影響は私たちの生活にも大きな変化をもたらす可能性があります。ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、みなさんと一緒に地球の未来を考えていきます。まずは気候変動について知るところから、一緒に取り組んでいきましょう。
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