スポーツ基本法に「気候の変動」初めて明記、スポーツ時の熱中症対策

2025-07-26 05:10 ウェザーニュース

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今年6月にスポーツ基本法が改正され、「スポーツ事故の防止等」にかかわる条文に初めて「気候変動への対応」についての文言が追加されました。

これに対応して各スポーツ界も地球温暖化による気温上昇に伴う暑さ対策、特に熱中症に対する予防策を具体化しています。

スポーツを行う際のさまざまな熱中症対策や、効果的な身体冷却法などについてまとめてみました。

酷暑の影響はスポーツ界にも

スポーツ基本法は2011年に施行された法律ですが、今年6月13日の参議院本会議で14年ぶりに大幅な改正案が可決・成立しました。その中で選手への誹謗・中傷やドーピング対策に加えて、第14条に「国及び地方公共団体は気候の変動への対応に特に留意しなければならない」との記述が追加されました。

国のスポーツに対する理念を示すスポーツ基本法に「気候変動」がうたわれるのは、前身のスポーツ振興法(1961年施行)を含め、初めてのことになります。

気候変動対策の法制化もあり、各競技団体も夏季の酷暑に対応するためのさまざまな方策を導入しています。
ベンチ裏に用意されているアイスバス(写真/時事)
「夏の甲子園」として親しまれている8月の全国高校野球選手権大会では、2023年から5回終了時に10分間の「クーリングタイム」を導入。ベンチ裏のスペースには大型の送風機やサーモグラフィー、アイスベスト、ネッククーラーなどが用意されるほか、熱中症の重症者が出た場合に備えたアイスバスも設置されています。

さらに、昨夏に続いて今夏も酷暑の昼間を避けて午前と夕方に試合を行う「2部制」を導入し、暑さ対策を実施しています。

富山と三重の地方大会でも今夏から2部制を導入。愛知大会は「サマータイム制」として3回戦と5回戦以降は第1試合を14時、第2試合を16時30分開始としています。

陸上界でも日本開催の世界陸上競技選手権大会は、1991年の東京、2007年の大阪ともに8月下旬~9月上旬の開催でしたが、今年の東京大会では9月13~21日と変更されています。酷暑を避けたい日本側の要望で、世界陸連が「選手の快適さを考慮したことが大きな理由」としています。

2020東京オリンピック大会(2021年8月開催)の男女マラソン・競歩競技の開催地が、札幌市に移転されたのも記憶に新しいところです。

夏季の屋外競技は要注意

JSPO(日本スポーツ協会)は『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック』に「熱中症予防5ヶ条」という運動指針を制定しています。

暑さ指数(WBGT)が28℃を超えると厳重警戒として激しい運動は中止。31℃を超えると運動は原則中止などとしています。

夏季の屋外でのスポーツ活動は要注意です。学童・生徒(小学生~高校生)の学校管理下の熱中症死亡事故(1975~2017年)170件のうち、運動部活動によるものが145件と最も多く、学校行事によるものが22件、その他3件でした。
部活動の種目別でみると、野球が約25%で最も多く、ラグビー、サッカー、陸上といった屋外競技が半数以上を占めています。なお、屋内種目では柔道、剣道で多く発生しています。

学年別では高校生が72%と多くを占め、うち1年生が60件超と最も多く、2年生の約40件が続きます。JASPOは「高校ではスポーツ活動が本格化してくるため、事故が多くなると考えられます。また、学年では体力や技術が未熟な低学年に多くみられました」とみています。

スポーツ活動中の熱中症予防活動に一定の成果があり、死亡者数は近年減少傾向にあります。しかし救急搬送者数は減少しておらず、予防活動を怠らず継続することが必要です。

スポーツ時の身体冷却は熱中症予防に有効、パフォーマンスも上がる

スポーツ活動中の熱中症を防ぐには、日頃から適度な運動を行うなどの暑熱順化を心がけたうえで、暑い時には吸湿性と通気性のよい素材でなるべく薄着にして、こまめに水分と塩分を補給してください。

屋外の直射日光の下では必ず帽子を着用し、防具を着ける競技では休憩中に衣服をゆるめ、できるだけ熱を逃がすようにしましょう。

積極的に身体冷却を実施することも大切です。体温の過度な上昇を抑えて持久性運動能力や認知機能低下の抑制、多量の発汗による脱水予防が熱中症の予防に大きくつながるからです。
身体の外部冷却にはクーリングベストの着用やアイスパックの貼付、アイスタオルを首に巻くことや冷水で手のひじから先を冷やすこと。内部冷却には水分に加えてアイススラリーの飲用などが有効です。

これらの実践的な予防策は熱中症を防ぐだけでなく、トレーニング効率を向上させ、運動能力の向上にもつながります。

地球温暖化の影響で、スポーツ中の熱中症の危険性が増加しています。特に屋外での運動時には、適切な予防策や環境調整を行うことで、脱水や体温異常といった健康被害を未然に防ぐことが重要です。
ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、皆さんと一緒に地球の未来を考えていきます。
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参考資料
JSPO(日本スポーツ協会)「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」
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