温暖化でセミの初鳴きに変化? 影響するのは前年の気温!?

2025-07-27 09:25 ウェザーニュース

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全国的に危険な暑さへの警戒が必要となっています。暑さとともに、朝からセミの鳴き声が聞こえてくるようになったのではないでしょうか。

ウェザーニュースでセミの鳴き声に関するアンケート調査を実施したところ、東海以西の地域ではすでに「大合唱」が広く見られます。

東日本では、「大合唱」と回答した割合は約25〜30%ですが、北海道を除く地域では、「すこし」を含めると80%以上の地域でセミの鳴き声が確認されており、西日本から東日本へとその範囲が拡大していることが明らかになっています。
実は今、夏の風物詩であるセミの鳴き声に変化が生じているといいます。

世界的な気候変動のなか日本でも温暖化が進んでいますが、国立研究開発法人国立環境研究所気候変動適応センター・副センター長の西廣淳さんらのグループの研究により、「アブラゼミの初鳴き日」と気温に関係が強いことが指摘されました。

生物の変化から見える気候変動

セミの鳴き声は、古くから日本人にとって夏を感じさせる音の風景の1つです。しかし、なぜ初鳴きが研究対象となるのでしょうか。

「花が咲く、虫が鳴くなどの季節に応じた生き物の現象(生物季節)は、それぞれの生き物が気温や湿度、日照などの気候条件の変化を感じとることによって生じます。

『虫が鳴く』現象なら、多くの昆虫類が、繁殖などのために発音する性質をもっています。また鳴くタイミングは、気温などの条件の影響を強く受けます。
セミは、私たちに季節を伝えてくれる代表的な生き物です。『セミの初鳴き』という現象の開始日を長期的に記録し続けることで、気候変動によって生き物の適切な活動時期がどう変化しているかを知る手掛かりになります。

その変化を評価することは、気候変動が生き物や生態系全体に与える影響を直接的に理解することにつながるのです」(西廣さん)

セミの初鳴きに変化

西廣さんらはアブラゼミの初鳴き日に注目しました。

「初鳴き日の前日から1年前までの間のいろいろな期間の気温、湿度、風速、日射量、降水量などを組み合わせた気象データと、『セミの初鳴き日』の関係を調べました」(西廣さん)

使用したのは、1971年〜2020年の気象庁による全国47の観測地点での記録と、2021年以降は112名の市民調査員による115カ所160件の記録です。気象データと1369通りの統計モデルを比較して、最も当てはまるモデルから気象要因を分析しました。
「その結果、上図(上)のように気温の効果が、他の気象要因よりも強い効果をもつことがわかりました。また、上図(下)に示されるように、気温のなかでも、322日前から221日前の気温と『初鳴き日』が関係していることがわかりました。

このことから、前の年の盛夏から初冬までの気温が高いと、アブラゼミの『初鳴き日』が早くなる可能性があることを指摘しました」(西廣さん)

日本の年平均気温は、1898~2024年の間に100年あたり1.40℃の割合で上昇していますが、盛夏から初冬の気温も上昇傾向にあります。
「前述の結果を元に、アブラゼミの『初鳴き日』のデータを解析すると、気温が年々上昇することによって初鳴き日が早くなっていることが支持されました(上図)」(西廣さん)

初鳴き日の前年の気温が、アブラゼミの成長を変化させたと考えられるのでしょうか。
「あくまでも推測の域を出ませんが、私達は次のように考えています。

セミは幼虫の時は地中で木の根から栄養をとって成長します。気温の上昇によって植物の光合成や成長が良くなり、アブラセミも栄養をたくさんとることができて成長や発達が良くなることが考えられます。つまり気温の上昇は、ある程度まではセミの初鳴きが早くなる方向へ影響する可能性があります」(西廣さん)

自然界の変化を敏感に捉える

今夏も猛暑が続くと予想されています。また、大雨や台風など極端な気象現象が多く発生するなど、近年は気候変動の影響を感じる機会が増えています。

「気候の影響は生き物によって異なります。セミの初鳴きのように気温によって活動が早くなる方向へ変化する生き物もいれば、ヒガンバナの開花時期のように遅くなる方に変化する生き物もいます。
このような生物季節の変化は、生物の絶滅や分布域の変化に比べると些細なことのように思われがちですが、生物間の相互関係などを通して、生態系全体に影響する可能性もあります。

こういった解析には、同じ場所で何年もとってきたデータがなければ難しいです。セミの『初鳴き日』の研究は、これまで全国の気象台で1971年から調査され続けていた生物季節のデータがあったからこそできたものです。

今後もていねいなモニタリングを行い、自然界に生じている変化を敏感に検出することが重要だと思います」(西廣さん)
温暖化の影響は、セミの鳴き声のようなところからも生態系や農業、私たちの生活や文化にも変化を伝えてくれる可能性があるのです。

ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、みなさんと一緒に地球の未来を考えていきます。まずは気候変動について知るところから、一緒に取り組んでいきましょう。
特集 ウェザーニュースと考える地球の未来
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参考資料
国立研究開発法人国立環境研究所・名城大学「市民参加型調査の結果を活用し『セミの初鳴き日』に影響する要因に迫る」、文部科学省「日本の気候変動2025概要版」
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