コーヒー豆価格が過去最高水準に高騰─安定調達に欠かせない気象・生産量の長期予測

　2025年上半期(1月から5月)におけるコーヒー豆の平均価格は、過去35年間で最も高い水準に達しました。アラビカ種は1キログラムあたり8.64ドル、ロブスタ種は5.52ドルと、いずれも歴史的な高値を記録しています。

　国連食糧農業機関（FAO）が2025年3月に発表した報告書『Global coffee market and recent price development』によると、近年の価格高騰の主な要因の一つは、異常気象によりコーヒーの生産量の安定性が大きく損なわれたことです。近年、降水量の極端な変動、高温、干ばつ、さらには霜（しも）による深刻な被害が相次いでいます。
　たとえば世界最大のコーヒー生産国であるブラジルでは、2021年に干ばつと霜害（そうがい）が発生し、アラビカ種の生産が大きく減少しました。コロンビアでも天候不良が続き、供給不安をさらに悪化させました。世界の主要供給国がそろって打撃を受けたことで、国際価格の上昇を引き起こしました。
　また、2023〜2024年にかけてベトナムでは干ばつにより2023/24年の生産量が前年比20%減、輸出も2年連続で減少しています。インドネシアでは過剰な降雨によりコーヒーチェリーが損傷し、生産は前年比16.5%、輸出は23%減となりました。ブラジルでも、当初は増産が見込まれていたものの、干ばつと高温の影響で最終的には前年比1.6%の減産に転じました。
　このように、主要生産国における異常気象は、コーヒーの安定供給にとって大きなリスク要因となっており、今後も市場動向を注視する必要があります。特に気候変動により気象が極端化する中、こうした生産リスクはますます顕在化していく可能性があります。

　一般的に、北半球のコーヒー生産国では冬が収穫期となりますが、南半球に位置するブラジルでは、ちょうど日本の夏にあたる5月から9月が収穫の最盛期を迎えます。
　ブラジル最大のコーヒー生産地として知られるミナスジェライス州は、世界的にも高品質なコーヒーを生み出す地域として評価されています。中でも「カルモ・デ・ミナス（Carmo de Minas）」は特に有名な産地であり、香りや風味に優れたコーヒーが生産されています。
　カルモ・デ・ミナスの気候は、ケッペンの気候区分で「Cwa（温暖湿潤気候）」に分類されており、夏（11〜3月）には雨が多く降り、冬（6〜8月）には乾燥した日が続きます。また、標高が約1,200メートルと高いため、昼夜の気温差が大きく、これがコーヒーの風味を豊かにする要因となっています。
　収穫期にあたる冬（6〜8月）の最低気温はおおむね5〜10℃程度で、氷点下に達することは非常に稀です。通常は大きく冷え込むことはありませんが、風が弱く湿度が低い早朝には、放射冷却の影響で霜が発生することがあります。

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　このように、平年の気候では想定しにくい「まれな低温」や「霜の発生」などといった現象が、収穫期に突如として発生することがあります。平年値をもとに調達計画を立てるだけでは、こうした異常気象によるリスクに十分対応することができません。
　そこで、主要なコーヒー生産地における霜害や干ばつ、極端な高温・降水といった気象リスクを事前に把握するために、気象の長期予測を活用したリスクモニタリングの必要性が高まっています。

　ウェザーニューズでは、これらの課題に対応するため、世界のコーヒー産地を対象に気象条件の長期予測、コーヒー豆の生産量予測、そしてそれらの予測精度の向上に継続的に取り組んでおります。独自のAI予測モデルにより、現在ではコーヒー豆の生産量を月単位で長期的に予測することが可能となっており、増収・減収の傾向についても高い精度で事前に把握できる水準に達しています。

　今後の調達戦略の強化や、持続可能なサプライチェーン構築の一助として、世界の主要生産地域における長期的な気象予測・生産量予測の導入をご検討の際は、ぜひウェザーニューズまでお気軽にご相談ください。

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