百日続く? 大人の症状は? 行楽シーズンに気をつけたい「百日咳」の流行

2025-05-24 05:10 ウェザーニュース

5月は、お出かけやアウトドアなどのイベントにぴったりの時季です。ただ、行楽シーズンだからこそ、心にとめておきたいのが百日咳の流行です。

流行の理由や新型コロナウイルス感染症との関係、注意すべき年齢や予防法など、いま知っておきたいことを日本大学医学部附属板橋病院・新生児科科長の岡橋彩先生に教えていただきます。

なぜ、いま百日咳が流行!?

百日咳菌の電子顕微鏡画像(提供/国立健康危機管理研究機構)
百日咳は昔からある病気ですが、なぜ、いま問題となっているのでしょうか。

「百日咳は気道感染症の1つですが、“百日”という名の通り、長期にわたって症状が持続することが特徴です。低年齢、低月齢では死亡する例もあり、予防すべき感染症の1つとされています。

カゼなどの呼吸器感染症と同じく飛沫感染・接触感染します。つまり、百日咳にかかっている人の咳やくしゃみに含まれる『百日咳菌』に触れて、うつるのです。百日咳菌の感染力は非常に強力で、症状が出るまでの潜伏期間は7〜10日くらいあります」 (岡橋先生)

百日咳は2023年から増えはじめ、’24年、’25年と増え続けています。特に今年は感染拡大が加速しています。今年のこれまでの累計患者数は1万6475人で、すでに去年1年間の累計の4倍以上です。
「新型コロナウイルス感染症の時期は、飛沫・接触感染する感染症が非常に少なくなっていましたが、まん延防止重点措置が終わったあと急激に増え出しました。百日咳もその1つといえます。一時的に感染が抑えられたことで、免疫がついてない人が増えた影響もあるとみられます」 (岡橋先生)

カゼとは違う!? 百日咳の特徴的な咳

長引く咳が特徴とされる百日咳ですが、かかる人の年齢によって症状が異なります。

「小児が百日咳に感染した場合、潜伏期間のあと一般的なカゼと同じような症状の出る『カタル期』が始まります。約2週間後に、咳をした後に息を吸い込むような、けいれんするような特徴的な咳が出る『痙咳期(けいがいき)』になります。痙咳期が約2〜3週間続いたあと、普通の咳に戻り回復期となります。全体で約2〜3ヵ月かかります。

いまは学童期から20歳前までの人に百日咳が流行しています。大人が感染するケースもありますが、大人の場合は普通の咳が長引く程度で、特徴的な症状は出ないことが多いです。百日咳と診断されないこともあり、それもまん延の一因と考えられます」(岡橋先生)

深刻なのは、新生児、乳児へ感染した場合です。

「小児とも症状が違い、重症化することがあります。無呼吸になって保護者に『カゼを引いた』いう感覚がないことや、逆に咳が出たと思ったら肺炎になっていたなど進行が早いこともあります。

重くなると強い咳き込みによる呼吸困難や脳症などの合併症の恐れ、無呼吸が突然死の原因となるなど命の危険もあります。

加えて、薬の効かない『耐性菌』も出現しています。中国では日本より先に百日咳の流行が始まったのですが、耐性菌が増えていて、日本にも広がる気配があります。2024年には日本でも乳児の死亡例があり、今年3月にも2例の報告がありました」

「長引く咳」は病院へ!

咳が続くときは病院を受診します。

「最近は百日咳を心配して直接大学病院に来る方も増えていますが、まずはお近くのクリニックを受診しましょう。医師による診察、必要に応じて血液検査や抗原検査を受けることで、百日咳かカゼか、その後重症化するかなどわかります。

新生児・乳児への感染が注目されますが、小児でも咳の症状は辛く、長引くことで体力が奪われてしまいます。また、大人でも基礎疾患のある人や高齢者は重症化しやすく注意が必要です」(岡橋先生)

赤ちゃんの場合は、保護者が異変に気づけるかも重要です。

「咳や鼻以外に、ミルクの飲みが悪くなることは1つのサインとなります。また、胸がへこむような呼吸、肋骨と肋骨の間がへこむようになっているかどうかが、見つけるポイントになります」(岡橋先生)

予防効果を高めるために

百日咳を予防するにはどうしたらよいのでしょうか。

「百日咳は飛沫・接触感染なので、予防の基本は手指消毒やマスクです。そして、ワクチン接種も大事です。

日本で現在、生後2ヶ月以降に接種される5種混合ワクチン(‘24年までは4種混合)が、百日咳に有効です。リスクを80〜85%程度低下させることができるという報告があります。

ただ、免疫効果は徐々に低下するものなので、日本小児科学会では、『小学校に入る前の1年間』と『11〜12歳』に3種混合ワクチン接種を推奨しています。追加接種によりブースター効果が期待できます。

妊婦さんもワクチン接種することで、赤ちゃんが『受動免疫』で守られます。胎盤経由でお母さんの抗体が渡り、ワクチンがまだ打てない生後2ヵ月までの時期に感染しにくくなるのです」(岡橋先生)
5月は気候もよく、大型連休や大阪・関西万博など人の動きが多いのも懸念材料となります。

「百日咳は、人にうつしてしまう病気でもあります。いまは10~19歳くらいの年齢で流行っているので、きょうだい関係で赤ちゃんにうつしてしまうリスクがあります。運動会に、赤ちゃんを含め家族総出で出かけることなども心配です。

ワクチン接種などで予防し、長引く咳はためらわずに受診することが大切です」(岡橋先生)

感染のピークは過ぎたとの報道もありますが、引き続き十分に警戒する必要がありそうです。
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