災害時に問われる子どもや若者の心のケア 今も続く「心の復興」
今年の3月11日は、2011年の東日本大震災からちょうど15年にあたります。2万人を超す直接の死者・行方不明者に加えて、震災関連死者も1都9県で3810人(2025年12月31日現在、復興庁まとめ)に及んでいます。
そのため、自治体や各関連機関などによる災害後の「心のケア(メンタルヘルス)」への取り組みが現在も続けられています。15年が経過してもなお“震災被害は終わっていない”といえるでしょう。
特に東京電力福島第一原子力発電所による放射性物質大量飛散に伴う大規模・長期避難を余儀なくされた福島県民には、震災発生の翌年になって震災関連自殺者数が減少から増加に転じるという、特異ともいえる状況が生じました。復興庁のまとめでは、2012~15年の4年間の震災関連自殺者数は宮城県の18人、岩手県の15人に対し、福島県では70人に及んでいます。
そのため、自治体や各関連機関などによる災害後の「心のケア(メンタルヘルス)」への取り組みが現在も続けられています。15年が経過してもなお“震災被害は終わっていない”といえるでしょう。
特に東京電力福島第一原子力発電所による放射性物質大量飛散に伴う大規模・長期避難を余儀なくされた福島県民には、震災発生の翌年になって震災関連自殺者数が減少から増加に転じるという、特異ともいえる状況が生じました。復興庁のまとめでは、2012~15年の4年間の震災関連自殺者数は宮城県の18人、岩手県の15人に対し、福島県では70人に及んでいます。
また、被災した子どもたちに心身不良症状が顕著に現れました。「非常災害時の子どもの心のケアに関する調査報告書」(2013年、文部科学省)によると、PTSD(心的外傷後ストレス障害)が疑われる症状が一つでもみられた子どもは、特別支援学校20.5%、幼稚園20.2%、小学校17.6%、中学校11.5%、高等学校8.8%と、年齢が低くなるほど増加傾向にありました。
地域的には福島県が22.9%、宮城県が19.0%と高く、その他の地域でも一定数みられたといいます。
地震や火山噴火など、どうしても避けられない自然災害への備えとして特に「知っておきたい、災害時の子どもや若者の心のケア」への取り組みや大切なことについて、ふくしま心のケアセンターの前田正治所長(福島県立医科大学・特任教授)に伺いました。
地域的には福島県が22.9%、宮城県が19.0%と高く、その他の地域でも一定数みられたといいます。
地震や火山噴火など、どうしても避けられない自然災害への備えとして特に「知っておきたい、災害時の子どもや若者の心のケア」への取り組みや大切なことについて、ふくしま心のケアセンターの前田正治所長(福島県立医科大学・特任教授)に伺いました。
子どものメンタルヘルスに与えた影響
東日本大震災の発生から現在に至るまで、被災者へのメンタルヘルスはどのように推移してきたのでしょうか。
「長期間のメンタルヘルスの動向を短くまとめるのは難しいのですが、福島県立医科大学が毎年実施している県民健康調査の結果をみると、全般として状況は発災当初より改善したといえるでしょう。ただしその一方で、県外居住者や若年者の回復の遅れが顕在化しています。
震災関連自殺者については復興庁のまとめで明らかなように、福島県では他の被災県とは違った“深刻な状況”といえるでしょう。今後も復興従事者や支援者の疲弊と、メンタルヘルスの悪化が懸念されます。
たとえば『K6スコア(6項目の質問で「心の健康」をチェックする指標)』では、高齢者に比べ、高校生以上の若い世代のほうがメンタルヘルスの不調が目立つようになっています。原発事故の長期的影響は、とくに思春期以降の若年世代に強く及んでいるといえるでしょう」(前田所長)
「長期間のメンタルヘルスの動向を短くまとめるのは難しいのですが、福島県立医科大学が毎年実施している県民健康調査の結果をみると、全般として状況は発災当初より改善したといえるでしょう。ただしその一方で、県外居住者や若年者の回復の遅れが顕在化しています。
震災関連自殺者については復興庁のまとめで明らかなように、福島県では他の被災県とは違った“深刻な状況”といえるでしょう。今後も復興従事者や支援者の疲弊と、メンタルヘルスの悪化が懸念されます。
たとえば『K6スコア(6項目の質問で「心の健康」をチェックする指標)』では、高齢者に比べ、高校生以上の若い世代のほうがメンタルヘルスの不調が目立つようになっています。原発事故の長期的影響は、とくに思春期以降の若年世代に強く及んでいるといえるでしょう」(前田所長)
震災が「子どもや若者の心」に与えた影響は、どのようなものだったのでしょうか。
「先に述べた県民健康調査では、震災後、避難区域の子どもたちを対象に、『SDQ(子どもの行動や情緒的問題をスクリーニングするアンケート)』というチェックリストを用いた調査や支援が行われました。震災直後はハイリスク児童が多く、とくに幼少の子どもに非常に高い傾向がありました。両親、特に母親の不安が非常に強かったことが大きな要因です。
その後、ハイリスク児童の率は下がっていきましたが、高学年や県外避難の子ども・若者に高い傾向が続きました。放射線被曝への恐れで運動習慣が相当に低下してしまったこともハイリスク率を高めた要因であることもわかっています」(前田所長)
宮城県子ども総合センターの研究では、男女共に『退行(赤ちゃん返り)、分離不安』を訴える未就学の子どもが多く、男児には『攻撃的言動、睡眠』の問題。女児には『恐怖、身体化症状』が多く見られたそうです。
多くの子どもたちが新たな日常に適応できた一方で、心の問題が継続して深刻化したり、遅れて出現したりする子どもがいることも明らかになりました。
「先に述べた県民健康調査では、震災後、避難区域の子どもたちを対象に、『SDQ(子どもの行動や情緒的問題をスクリーニングするアンケート)』というチェックリストを用いた調査や支援が行われました。震災直後はハイリスク児童が多く、とくに幼少の子どもに非常に高い傾向がありました。両親、特に母親の不安が非常に強かったことが大きな要因です。
その後、ハイリスク児童の率は下がっていきましたが、高学年や県外避難の子ども・若者に高い傾向が続きました。放射線被曝への恐れで運動習慣が相当に低下してしまったこともハイリスク率を高めた要因であることもわかっています」(前田所長)
宮城県子ども総合センターの研究では、男女共に『退行(赤ちゃん返り)、分離不安』を訴える未就学の子どもが多く、男児には『攻撃的言動、睡眠』の問題。女児には『恐怖、身体化症状』が多く見られたそうです。
多くの子どもたちが新たな日常に適応できた一方で、心の問題が継続して深刻化したり、遅れて出現したりする子どもがいることも明らかになりました。
「福島の避難者のなかには、安全で住みやすい場所を探そうと、発災後転々と住所を変えた方も数多くいます。たとえば思春期時代に被災した若者の場合、学校も転々とすることになり、それによって友人を作ったり、職業を選択したりといった自己実現の機会が奪われた可能性があります。
そのような問題、同一性(アイデンティティ)に関わる問題は、大人になってから表面化することのほうが多いでしょう」(前田所長)
そのような問題、同一性(アイデンティティ)に関わる問題は、大人になってから表面化することのほうが多いでしょう」(前田所長)
福島県における「こころ」の問題の深刻さ
震災後は、福島県の被災者に対する偏見や心無い言動もみられました。
「福島の被災者に対する偏見は、大きく二つのタイプがありました。
一つは、放射線被ばくに関することで、たとえば結婚や妊娠にまつわるものです。もう一つが、お金にまつわることで、たとえば東電からの補償を受けることに対する揶揄です。
「福島の被災者に対する偏見は、大きく二つのタイプがありました。
一つは、放射線被ばくに関することで、たとえば結婚や妊娠にまつわるものです。もう一つが、お金にまつわることで、たとえば東電からの補償を受けることに対する揶揄です。
また、自分の言動が被災者を傷つけていることに気が付かない方もおられます。
たとえば、ある県外の支援団体が『福島の子どもが外で遊べなくてかわいそう』だからと、子どもたちをキャンプに招待した時のことです。
子どもたちは楽しく遊んでいたのですが、ある団体関係者が『あなたたちは放射能で体が毒されていてかわいそう』と子どもたちに言ったそうです。そしてキノコを煮た食べ物を配って、『放射能が体から流れ出る効果があるから』と、薦めました。それは善意だったのかもしれません。
しかし、子どもたちは“私たちは、そんなに汚れていると思われているのか”とショックを受けて静まり返り、泣き出した子までいました。子どもたちに多大な『スティグマ(負の烙印)』を背負わせてしまったのです」(前田所長)
たとえば、ある県外の支援団体が『福島の子どもが外で遊べなくてかわいそう』だからと、子どもたちをキャンプに招待した時のことです。
子どもたちは楽しく遊んでいたのですが、ある団体関係者が『あなたたちは放射能で体が毒されていてかわいそう』と子どもたちに言ったそうです。そしてキノコを煮た食べ物を配って、『放射能が体から流れ出る効果があるから』と、薦めました。それは善意だったのかもしれません。
しかし、子どもたちは“私たちは、そんなに汚れていると思われているのか”とショックを受けて静まり返り、泣き出した子までいました。子どもたちに多大な『スティグマ(負の烙印)』を背負わせてしまったのです」(前田所長)
子どもの甲状腺がんについての不安も、盛んに取り沙汰され続けています。
「甲状腺がんの多くは、命にかかわるようなものではありません。けれど母親の多くが“自分のせいで子どもががんになってしまった”と自分を責めたり、“偏見にさらされるのではないか”と将来を悲観したりと、非常に苦しみました。それを察して、誰にも言えずに辛い思いをした若者も少なくなかったでしょう。
放射線の影響そのものへの不安もさることながら、“県外の人からどのように見られているか”、さらに次世代への影響についての不安はいまだに強い。それが一番深刻な問題です。偏見や差別に結びつきかねない、大きな誤解だからです。
福島県立医科大学では、こうした甲状腺がんなどの不安を抱えた人々を支援するチームもあり、個別に丁寧に対応しています。福島事故が被災者に及ぼす放射線健康影響、とりわけ次世代に及ぼす影響については、教育の場や報道でも、『福島で生まれ育ったからといって特別に心配する必要はない』としっかりと伝えることがとても重要です」(前田所長)
「甲状腺がんの多くは、命にかかわるようなものではありません。けれど母親の多くが“自分のせいで子どもががんになってしまった”と自分を責めたり、“偏見にさらされるのではないか”と将来を悲観したりと、非常に苦しみました。それを察して、誰にも言えずに辛い思いをした若者も少なくなかったでしょう。
放射線の影響そのものへの不安もさることながら、“県外の人からどのように見られているか”、さらに次世代への影響についての不安はいまだに強い。それが一番深刻な問題です。偏見や差別に結びつきかねない、大きな誤解だからです。
福島県立医科大学では、こうした甲状腺がんなどの不安を抱えた人々を支援するチームもあり、個別に丁寧に対応しています。福島事故が被災者に及ぼす放射線健康影響、とりわけ次世代に及ぼす影響については、教育の場や報道でも、『福島で生まれ育ったからといって特別に心配する必要はない』としっかりと伝えることがとても重要です」(前田所長)
子どもや若者へのケアで大切なこと
そのほか、災害後の子どものメンタルケアとして、知っておきたい対応のポイントを教えてください。
「表には年代ごとの子どものケアの基本をまとめています。震災後には子どもは様々な反応を起こします。落ち着かなくなったり、いらいらしたり、あるいはひきこもってしまったりといったトラウマ反応です。
大切なことは、それらの反応に対してあまり悲観的に考えないことです。これらの反応は、異常な事態に対する正常な反応と考え、多くは時とともに目立たなくなっていくということです。あまり一喜一憂することなく、落ち着いて対応しましょう。
たとえば、震災後によくみられる『災害ごっこ』も子どもなりに災害を受け入れる過程のひとつですので、制止したり厳しく叱ったりせず、冷静に見守ってください。そして、可能であれば、子どもと過ごす時間を増やし、スキンシップを多めに図ってみてください。
大切なことは、それらの反応に対してあまり悲観的に考えないことです。これらの反応は、異常な事態に対する正常な反応と考え、多くは時とともに目立たなくなっていくということです。あまり一喜一憂することなく、落ち着いて対応しましょう。
たとえば、震災後によくみられる『災害ごっこ』も子どもなりに災害を受け入れる過程のひとつですので、制止したり厳しく叱ったりせず、冷静に見守ってください。そして、可能であれば、子どもと過ごす時間を増やし、スキンシップを多めに図ってみてください。
親や支援者のメンタルヘルスへの配慮も欠かせない
「一方で、災害後には、生活の安全や経済的なこと、子どもの養育など様々なことを考えなければならない親もまた大変な心労を背負っています。様々な災害研究で明らかなことは、子どものメンタルヘルスと親のそれとは切っても切り離せない関係にあるということです。
したがって、子どもだけではなく、親の支援もまた非常に大切です。子どもと同時に親もまた睡眠をしっかり取り、悩みを相談する相手を持つ、そのことが子どもの安定にもつながってきます。
親子の関係性でいえば、これらの関係に根本的に大きな影響があった場合には注意が必要です。
たとえば親が亡くなる、あるいは福島災害でしばしば見られたように、親子が長期にわたって離れ離れになってしまうといった体験は、子どもに大変大きな影響を与えます。
このような大きなトラウマを負った子どもは特に配慮が必要です。教育機関や児童相談所などの支援組織との連携を十分に図って、長期的に支援する必要があります」(前田所長)
したがって、子どもだけではなく、親の支援もまた非常に大切です。子どもと同時に親もまた睡眠をしっかり取り、悩みを相談する相手を持つ、そのことが子どもの安定にもつながってきます。
親子の関係性でいえば、これらの関係に根本的に大きな影響があった場合には注意が必要です。
たとえば親が亡くなる、あるいは福島災害でしばしば見られたように、親子が長期にわたって離れ離れになってしまうといった体験は、子どもに大変大きな影響を与えます。
このような大きなトラウマを負った子どもは特に配慮が必要です。教育機関や児童相談所などの支援組織との連携を十分に図って、長期的に支援する必要があります」(前田所長)
今年は東日本大震災から15年、熊本地震から10年に加えて、1946年の昭和南海地震から80年という節目の年でもあり、「次の南海トラフ地震発生の切迫性が高い状態で、いつ起きてもおかしくない」(気象庁HP)とされています。
災害後の子どもや若者の心のケアについて日頃から意識し、“もしもの時”に備えておきましょう。
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