室町時代以来の異変、8年連続で「御神渡り」出現せず 諏訪湖で何が起きている?

2026-02-25 05:10 ウェザーニュース

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立春2月4日の朝、長野県の諏訪湖で御神渡り(おみわたり)のない「明けの海」が宣言されました。御神渡りは、凍った湖面が山脈のようになる現象で、毎年地元では出現を観察する神事が行われています。近年は、その記録と温暖化の関係が注目されています。

「御神渡り」が出現する条件は?

2018年の諏訪湖の御神渡り
御神渡りとは、諏訪湖の湖面が寒さで凍り、その亀裂から氷が山脈のように隆起する現象です。湖の端から端へ筋が走るさまが「神様がお渡りになった跡」とされ、古くから御神渡り神事が受け継がれてきました。

長年にわたり神事を執り行ってきた長野県諏訪市にある八劔(やつるぎ)神社の宮司・宮坂清さんは「気温が-10℃以下の日が3日続くと湖面が全面凍結し、その次の寒波が来た時に亀裂の盛り上がりができます。大きな寒波が3つぐらいあると、御神渡りが出現していました」と話します。

しかし、今冬も御神渡りは見られませんでした。寒さが厳しい日もあり、全面結氷も観察されましたが、御神渡りが出現しなかったのはなぜなのでしょうか。

「小寒から立春(1月5日〜2月4日)まで観察して、-10℃になる日が3回、全面結氷も2回ありましたが、結局は溶けてしまいました。

今年は、かつての記録と比べて冷えが続かないのが特徴でした。2回の全面結氷も薄氷が張る程度。寒気が入っても朝の気温が6℃まで上がるなど、冷え込みが長続きしなかったのです」(宮坂さん)

御神渡り出現率が80年で1/3に減少

明けの海が8年連続となったのは、1507~14年(室町時代)以来のことだといいます。古くから続いてきた御神渡り神事は、諏訪大社の「当社神幸記」をはじめ、八劔神社の「御渡帳」「湖上御渡注進録」などに記されてきました。

御神渡りの位置や形状、方向、天候のほか、その年の作柄や経済について記述されています。1つの自然現象を584年もの長期にわたって観察した記録は世界的にも珍しく、過去の季節変化を知る貴重な資料とされています。

ウェザーニューズでは、八劔神社による御神渡りの出現記録と諏訪湖周辺の気象データについて分析しました。
1946〜2025年までの出現記録を見ると、1946〜1985年の40年で29回も出現していた御神渡りが、1986年以降に激減。2025年までの40年では約1/3の10回しか見られませんでした。

「諏訪の気温に関するさまざまな気象データと御神渡りの出現データを検証したところ、『冬季の平均気温の上昇』や『-10℃を下回る強い冷え込みの頻度の減少』が、御神渡りの出現に極めて強い相関関係を持つことが示されました。
冬季(12〜2月の3ヵ月間)の平均気温はこの70年でおよそ1.6℃上昇し、最低気温が−10℃を下回る強い冷え込みも1980年代後半以降に激減しています。

1980年代後半以降の気温の上昇には、諏訪地域周辺の土地利用の変化(都市化)の影響も含まれていると推測されますが、温暖化に伴い御神渡りが出現しなくなっていることが明らかです」(吉良)

御神渡りの出現日を丹念に記録してきた宮坂さんも温暖化による異変を実感しているといいます。

「以前は当たり前のように出現していた御神渡りが減っている要因の一つには、地球全体の動き、いわゆる温暖化もあるでしょう。

ヒマラヤの氷河崩壊や森林火災、豪雨のような地球全体の異変と同じように、諏訪湖にも異変が起きています。584年の記録が語るように、気候変動による結氷の変化は顕著です」(宮坂さん)

そのほかにも諏訪湖に起きている異変とは?

白鳥や水鳥の渡来数も減少傾向に
諏訪湖をめぐる環境の変化は温暖化だけではありません。

「諏訪湖には31河川が流れ込みますが流れ出るのは天竜川のみで、氾濫の歴史を繰り返してきました。先人たちは生活を守ろうと、川幅を広げたり、護岸でコンクリートの壁をつくるなどしてきたのです。

例えば、かつて岸辺にあった葦原(あしはら)がコンクリートの壁に変わったことで、薄氷が割れた後の動き方が変わってしまいました。葦なら氷が根もとに絡んでそこで止まりますが、コンクリートの壁では『寄せ氷』が上へせり上がってしまいます。そうすると氷が湖中央へ向かう力が働かなくなってしまうのです。

ほかにも、雪が降ったときに使われる融雪剤やゴミなどが川から運ばれ流れ込んできたり、『ヒシ』や『クロモ』の大量発生など水生植物の生態に変化があったり、さまざまな変化から諏訪湖を取り巻く環境のバランスが崩れていると感じています」(宮坂さん)
2018年には5季ぶりに御神渡りが出現し拝観式が行われた(2018年02月05日撮影、写真/時事)
消滅の危機にある御神渡りは、諏訪地域の人々にとって冬の風物詩でした。

「御神渡りの出現は本格的な冬の訪れを感じ、春を待つ心構えができるきっかけとなっていました。

近年は諏訪湖で越冬する白鳥や水鳥の飛来も少なくなっています。こうした変化に不安を感じますが、自然のメッセージとして受け止めています。

今後も諏訪湖の観察、記録、拝観神事を継承しながら、8年明けの海が続いたという現実を直視していきたい。その上で原因は何なのか、自分のできることは何か、と考えるきっかけになればよいと思っています」(宮坂さん)

ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、皆さんと一緒に地球の未来を考えていきます。
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写真:ウェザーリポート(ウェザーニュースアプリからの投稿)
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