空光丸遭難事故から56年 温暖化で冬の「爆弾低気圧」増加の可能性

2026-01-31 17:56 ウェザーニュース

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今日1月31日(土)で、貨物船「空光丸」の遭難・沈没事故から56年が経ちます。この事故では、乗組員15名が犠牲になりました。

事故の原因となった爆弾低気圧は、近年の研究で、温暖化により活動が活発化する可能性も指摘されています。

ウェザーニューズ社創業のきっかけとなった海難

今から56年前の1970年(昭和45年)1月30日から31日にかけて、日本の南岸を通過し北東へ進んだ低気圧が急速に発達しました。気象庁により「昭和45年1月低気圧」と名付けられたこの低気圧は、台湾付近で発生したことから当時は「台湾坊主」と呼ばれ、24時間で中心気圧が32hPaも低下するという猛烈な発達を見せました。

この嵐の中、福島県の小名浜港沖で、木材を積んだ大型貨物船「空光丸(くうこうまる)」が遭難し、その後沈没しました。この事故により乗組員15名の尊い命が失われました。

「痛ましい海難事故を二度と起こしたくない」——この事故から生まれた強い想いが、私たちウェザーニューズ社の創業へと繋がっていきました。

記録された猛烈な風

当時、東北地方の太平洋側ではどのような風が吹いていたのでしょうか。

アメダスの観測記録によると、岩手県の宮古では最大瞬間風速36.7m/s、福島県の福島では28.0m/sという猛烈な風を観測していました。 また、事故現場に近い福島県の小名浜では、最大風速16.7m/s、最大瞬間風速28.0m/sが記録されています。

この風は「まれ」だったのか?

これほどの暴風は、統計的に見てどの程度珍しい現象なのでしょうか。 年間の最大風速を基準に分析すると、意外な事実が見えてきます。

ウェザーニュースの独自分析によれば、この爆弾低気圧で観測されたレベルの風速が発生する頻度(再現期間)は、「3.4〜4.5年に一度」程度でした。

東北地方の太平洋側では、台風の通過などによって数年に一度はこの規模の強風に見舞われることがあり、年間を通してみれば「極端に珍しい風」というわけではなかったのです。

1月としては歴史的な強風

しかし、これを「1月の気象現象」に限って見ると評価は一変します。

宮古や福島で観測された最大瞬間風速は、今なお1月の観測史上1位の座にあり、56年間記録が塗り替えられていません。八戸でも歴代2位を記録するなど、冬の嵐としては歴史的な強さでした。

つまり、台風シーズンを含めた通年で見れば数年に一度の現象であっても、冬の「爆弾低気圧」によってもたらされた風としては、少なくとも数十年に一度レベルの、極めて稀で危険な現象だったと言えます。

台風は減っても「冬の嵐」は凶暴化? 温暖化が招く新たなリスク

今後、地球温暖化によってこのような暴風のリスクはどう変わるのでしょうか。

最新の分析によると、「このクラスの強風の発生頻度が増える」とは単純には言えないようです。将来的には日本に接近する台風の頻度が減少すると予測されており、それに伴い、年最大風速に基づいた統計上では、こうした強風の発生頻度はむしろ減少する(珍しくなる)と見込まれています。

しかし、「リスクが下がる」と早合点してはいけません。

第一に、台風の発生数は減っても強度は増す可能性があり、50年から数百年に一度クラスの極端な暴風リスクは増大する可能性があります。

第二に、冬の嵐については別の予測があります。京都大学防災研究所が2021年に発表した研究によれば、温暖化により冬場の爆弾低気圧の活動は活発化(増加)するとされているのです。そのメカニズムは、大陸からの寒気は弱まる一方で、逆に東シナ海付近で前線帯が活発になり、日本南岸を通る低気圧が急発達しやすくなっているからだと説明されています。

つまり、年間を通した全体的な強風回数は減る傾向であっても、冬場の爆弾低気圧による災害リスクが低下していくとは決して言えないのです。

研究が示すリスクを、日々の備えへ

空光丸海難事故から56年という歳月が流れ、予測技術や通信手段は飛躍的に進化しました。気象情報の発展もあり、人命に関わる海難事故は減少しています。

しかし、自然の脅威そのものがなくなったわけではありません。むしろ前述したように、温暖化の影響で冬の「爆弾低気圧」は活発化する懸念さえあるのが現実です。

これからの時期に発生する冬の嵐に対しては、引き続き十分な警戒が必要であることに変わりはありません。

ウェザーニューズ社創業の原点となったこの事故を忘れず、私たちは命を守る気象情報を届け続けます。
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