激甚化する台風被害 温暖化の影響は？

お盆期間だった8月12日、岩手県に上陸した台風5号（マリア）。1951年の統計開始以来、東北地方太平洋側に上陸した台風は、2016年10号（岩手県大船渡市付近）と2021年8号（宮城県石巻市付近）しかなく、今回で3事例目となりました。
【台風５号＆台風7号】のふり返り

岩手県では、台風が接近する前から暖かく湿った空気が継続的に流れ込んでいたたため、台風上陸の時点で積算雨量が非常に多くなっている状況でした。この台風による一連の大雨で、久慈市下戸鎖(しもとくさり)では48時間降水量が481.5mmに達し、1978年の統計開始以来1位を更新しました。

この48時間481.5mmという降水量、どれほど珍しい極端な現象なのでしょうか？
ウェザーニューズの気候解析チームによれば、約30年前の1993年頃には583年に一度という極めて稀な現象でしか起こり得ないような数値でした。ところが、2030年ごろまでには441〜454年に一度程度の起こりやすさに変化すると予測されています。それでも十分珍しいですが、この極めて稀な雨量の起こりやすさは約1.3倍です。
もし気候変動の主要因である温室効果ガスの削減が進まず温暖化が進行し続けた場合、2080年頃には最大で8.2倍もこのような大雨が起こりやすくなる可能性があります。

8月の最後の週には台風10号（サンサン）が九州や四国に襲来。直撃された九州はもちろん、近畿、東海や関東まで広い範囲で線状降水帯が発生し、各地で被害をもたらしました。
【台風10号襲来、遠隔豪雨で浸水】ウェザーニュース for businessで振り返る（8/26〜9/1）

この台風でも、各地で史上一位の更新が相次ぎました。
＜台風10号による雨の記録（抜粋）＞
・大分県アメダス佐伯　72時間降水量 615mm　統計開始以来１位を更新
・大分県アメダス国見　72時間降水量 449mm　統計開始以来１位を更新　
・静岡県アメダス網代　72時間降水量 654mm　統計開始以来１位を更新
・静岡県アメダス静岡　72時間降水量 515.5mm　統計開始以来１位を更新
・神奈川県アメダス小田原　24時間降水量 335mm　統計開始以来１位を更新
・兵庫県アメダス南淡　1時間降水量 116.5mm　観測史上１位を更新
・香川県アメダス引田　1時間降水量 103.5mm　観測史上１位を更新

この他にも、宮川の氾濫により大きな被害となった大分県由布市では、アメダス湯布院で48時間で603mmという大雨が記録されました。

48時間603mmという降水量は、ウェザーニューズの気候解析チームによると1995年頃を中心とした約40年間では123年に一度程度という非常に稀な現象でしたが、近年を含む2030年ごろまでの35年間では63年に一度程度の起こりやすさに変化すると解析されたということです。起こりやすさは約2倍になります。
同様に、兵庫県の淡路島で観測された1時間に116.5mmの強雨も、過去の気候条件ではシミュレーション上発生し得ないような大雨でしたが、気候変動の影響で約150〜170年に一度程度の頻度に変化が見られました。

今年の夏も昨年に匹敵するほどの高温が続き、温暖化の影響を肌で感じたという方も多かったのではないでしょうか。
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大雨やそれに伴う洪水などによる浸水被害は、気候変動の影響を受け日本各地で発生しやすい状況となってきていることが明らかになっています。激甚化する気象災害に備えることが、これからのBCP対策には必要不可欠となってきます。

ウェザーニュース for businessでは、将来の気候変動の影響で拠点のリスクがどのように変化するか分析するメニューをご用意しています。気候変動の影響を分析することで、これからの時代に対応した災害へ備えを強化することができます。

まずはこれまでの気候条件で拠点にどのようなリスクがあるのか把握することから始めてみてください。
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