ナラ枯れが北海道に拡大 温暖化で原因虫が越冬可能に!? 生態系への影響懸念

2026-01-26 05:00 ウェザーニュース

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全国的に冬らしく寒い日々が続いています。防寒対策が欠かせませんが、寒い冬の過ごし方は生き物によってさまざまです。

近年は温暖化から冬の“寒さ”に変化があり、思わぬところに影響が現れることがあります。

危惧されている1つが、「ナラ枯れ」の北上です。身近な森林に多いナラ類を枯らし、林業や生態系へのダメージが大きいとされるナラ枯れですが、2023年に初めて北海道で確認されました。専門家に詳しく教えていただきましょう。

ナラ枯れ、北海道南部に急拡大

2023年、北海道で初めて「ナラ枯れ」の被害木が確認されました。

「2020年にナラ枯れの原因とされるカシノナガキクイムシ(以下「カシナガ」)の個体が初めて発見され、2023年以降ナラ枯れの被害が拡大してきています」(北海道立総合研究機構・林業試験場 和田尚之さん)
ナラ枯れは、カシナガが持ち運ぶ病原菌(以下「ナラ菌」)により、ミズナラや、コナラ、カシワなどのナラ類やシイ・カシ類などの樹木に伝染して枯死します。

「北海道には、ミズナラ、コナラ、カシワの3種類のナラ類が自生しています。森林にあるナラ類の総蓄積は約6000万m3、北海道の森林の約7%を占めます。

ナラ類は、家具材や薪炭材など木材としてのほか、山地災害防止や生物多様性の保全の役割を担っている貴重な森林資源です。

ナラ類を枯死させるナラ枯れが広まってしまえば、北海道の林業や森林生態系に多大な被害が生じかねません」(和田さん)

ナラ枯れのメカニズムと影響

ナラ枯れが発生した樹木の枝葉
ナラ枯れは “樹木の感染症”です。ナラ菌を樹木に運ぶカシナガの体長は4.5〜5.0mmほどだといいます。

カシナガの成虫は初夏にナラ類の樹木に、直径2mmほどの孔をあけて侵入します。カシナガのメスは孔のなかに卵を産みつけますが、菌のうという菌を貯える器官から幼虫のエサとなる酵母菌も付着させます。

ナラ菌は、酵母菌とともに孔のなかに持ち込まれてしまうのです。秋から冬にかけ幼虫は孔内で成長して越冬します。そして次の年に成虫となり6〜7月に脱出して、新たなナラ類の樹木を求めて飛び立ちます。
ナラ菌は樹木の細胞を壊死(えし)させるため、多数のカシナガが穿入(せんにゅう)してナラ菌がまん延すると樹木に水が通らなくなり、枯死してしまいます。

ナラ菌がまん延している木では、木くずと虫の排泄物の混じった粉が根元や樹皮に積もり、紅葉シーズンではない真夏から晩夏に葉が赤褐色に枯れるのが特徴です。

次第に北上するナラ枯れ被害

全国のナラ枯れ被害は、2010年度をピークに減少したのですが、2020年度には増加しています。2024年度には全国44都道府県で被害が発生、そして被害は次第に“北上”しているといいます。

「青森県では、2010年に南端の深浦町で初めて確認されて以降被害が拡大しています。2019年には前年の約6倍となる1万4000本超え、2025年には10万本を超える被害木が発生し、下北半島の全域にまで被害が拡大しています。

そして北海道では津軽半島の対岸の渡島半島南端部から広まりつつあり、2025年は12月22日現在1959本の被害木が確認されています」(和田さん)

ナラ枯れ拡大と温暖化の関係

カシナガの幼虫と孔
ナラ枯れ北上の鍵となりそうなのが「カシナガの越冬と冬の低温の関係」だといいます。

「カシナガは南方由来の昆虫で、繁殖の要因として冬季の気象条件が大きいと考えられます。

これまでの研究から、カシナガの幼虫は氷点下の環境では生存率が低下し、本州でも標高の高い寒冷な地域では冬季の死亡率が高いとされています。
ただ、カシナガの幼虫は樹木の内部で越冬することや、雪が積もれば雪による遮熱効果なども考えなくてはなりません」(和田さん)

単純に気温が下がれば、カシナガの生存率も下がるというものではないということです。
和田さんらのグループは、渡島半島を対象として、樹幹内部の温度がカシナガの幼虫の越冬に適さなくなる日数を気象データから予測し、カシナガが越冬可能な地域を推定する研究を行いました。

「まず、いくつかの調査地で、樹幹に深さ5〜8cm程度の孔(あな)をあけて温度センサーを挿入し、温度を測定しました。カシナガの越冬場所に近い位置の温度になりますが、これに外気温・積雪といった気象データをあわせてモデル化して、気温と積雪をもとに樹幹内温度を推定できるようにしました。

そして、地上高0cmの樹幹内氷点下日数を推定し、カシナガの越冬可能性からナラ枯れのハザードマップを作成しました。2023年のナラ枯れ被害地は、ハザードマップで越冬生存率が50%を超えていますが、実際に春の時点で半数以上のカシナガが生存していました」(和田さん)
「今回の研究からわかった、被害地域周辺でカシナガの越冬生存率が50%以上との予測はあくまでも2023年の気象条件による推定結果です。

温暖化の進み具合よっては、今後さらにカシナガにより好都合な気象条件になる可能性があります。実際に、全国的に記録的な高温であった2023年度の冬(2023年12月〜2024年2月)は、道南地域の江差(えさし)で1月の月平均気温が過去最高、冬季(12〜2月)の平均気温が平年よりも1℃以上高かったのです」(和田さん)

近い将来に札幌に到達?

北海道の年平均気温は1898〜2024年間で統計的に有意に上昇しており、今後も上昇すると予測されています。また、12〜2月の冬平均気温でも、函館では100年で1.4℃、札幌では2.4℃も上昇しています。
将来、ナラ枯れは北海道内でさらに広まってしまうのでしょうか。

「これまで、北海道では冬季の低温によってカシナガの生存率が下がるため 、ナラ枯れは比較的広まりにくいと考えられてきました。しかし、ハザードマップのように北海道でも越冬生存率が50%以上となる地点があることが示されました。

このまま温暖化が進めば、積雪量がどのように変化するのかにもよりますが道内でカシナガの越冬可能な場所がさらに広くなる可能性が考えられます。

近年、急速にナラ枯れの被害が増えている東北地方を含め、ナラ枯れ被害地域ではカシナガには薬剤でのくん蒸や樹木の焼却などによる駆除、被害を受ける前の予防的な伐採が行われています。しかし、ナラ枯れは一度広まると防除が困難です。

北海道での被害拡大を防ぐためにも、越冬の可能性がある地域で確実な防除を行っていくほか、ナラ枯れが発生していない地域でも、被害地からの飛来を警戒して(太いナラ類や弱っているナラ類など)被害を受けやすい木を事前に伐採して被害リスクを下げるほか、ナラ枯れの監視を強化するなど対策・体制を整えていく必要があると考えています」(和田さん)
緯度が高い北海道でナラ枯れが広まることは、豊かな自然が温暖化の影響にさらされている現れの一つなのでしょう。
ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、皆さんと一緒に地球の未来を考えていきます。
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参考資料
和田尚之ら「北海道における積雪を考慮したカシノナガキクイムシ越冬可能性の推定」、内田葉子ら「北海道でのナラ枯れ初被害における被害木の特徴」
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