
熊本地震10年 災害関連死を防ぐために
減災コラム
2016年4月に起きた「熊本地震」から今年で10年を迎えます。この地震災害の最も大きな特徴といえるのが災害関連死の多さでした。
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目次
2回の震度7
2016年4月14日夜、熊本県御船町と益城町の境界付近の直下11㎞の場所でM6.5の地震が起きました。益城町で震度7の揺れに見舞われ、計9人が死亡しました。当初これが「本震」とみられていましたが、その28時間後、16日未明に最初の地震から西に4.5km離れた場所の直下12kmでM7.3(震度7)の地震が起きました。実際は2回目のほうが大きかったのです。2回目の地震はさらに被害が拡大し、41人が死亡しました。一連の地震は2度の震度7という強烈な揺れに加え、余震活動が極めて活発で、2016年中に4,200回におよぶ地震が発生したのも特徴です。
多数の災害関連死
熊本地震による直接死(揺れによる家屋倒壊や火災、土砂崩れなどによる死者)は計50人でした。一方、持病が悪化したりストレスによって病気を発症したりして死亡した災害関連死は熊本県で220人、大分県で3人の計223人に達しました。関連死が災害統計に含まれるようになった1995年の阪神・淡路大震災以降では当時3番目の数でした(現在では阪神・淡路と東日本の両大震災、2024年能登半島地震に次ぐ4番目)。災害関連死の多さはこの地震災害の大きな特徴です。
関連死に至った原因
2021年3月に熊本県は「災害関連死の概況について」を公表しました。これによると、死者218人の年齢構成は80代が75人(34.4%)で最も多く、70代が46人(21.1%)、90代が45人(20.6%)と続きました。70代以上が全体の約8割を占めています。一方、30代で4人、10代でも1人が死亡するなど若年層でも関連死が発生しています。死亡原因(複数選択)としては「地震のショック、余震の恐怖による肉体的・精神的負担」が112人(40.0%)と最も多く、次いで「避難所等生活による肉体的・精神的負担」が81人(28.9%)となっています。ストレスが元になって病気を発症したり持病を悪化させたりしたことが推測できます。死因としては呼吸器系疾患(肺炎、気管支炎等)、循環器系疾患(心不全、クモ膜下出血等)で全体の約56%に達していて、自ら命を絶った方も19人(13.3%)に達しました。また、死亡時の生活環境としては、発災前と同じ居場所に滞在していた事例が125人(59.9%)で最も多く、このうち自宅等が81人にも達しています。避難所ではなく最も慣れたところといえる場所でストレスが蓄積され、命を落とした事例が多いのです。過去の地震で災害関連死が直接死を大幅に上回ったものとしては、2004年の新潟県中越地震(直接死16人、関連死52人)、2024年の能登半島地震(直接死228人、関連死497人)がありますが、いずれも極めて活発な余震活動があった点が共通しています。余震の恐怖がストレスを増大させたことが考えられます。そして、同じような余震多発タイプの地震がまたどこで起きてもおかしくはありません。
関連死を防ぐために
国や自治体から防止策もいくつか提示されています。・平常時からの非常食や保存水、持病薬などの備蓄・災害時の避難の受け入れ先として親戚や知人への事前の依頼・避難所でのこまめな手指などの消毒、口腔衛生の維持(のための準備もしておく)・避難生活中でも十分な水分補給やマスクの着用・無意識に強いストレスを感じる避難においては無理せず適切な窓口に相談 など最近の地震でも避難所、自宅等問わず混雑や断水などでトイレが使えなくなる事例が頻発しています。水分補給はどうしても憚られる事態に陥りがちですが、命にもかかわることなので携帯用トイレを事前に準備するなどの対応もあるとよいでしょう。
強烈な揺れや津波などから逃れることができた命です。関連死で失うことがないようできるだけ事前の準備をしたいものです。
執筆 ウェザーニューズ 山口剛央
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