花粉のまとめ

ウェザーニュースでは日本最大級の花粉観測網を展開!
オリジナル花粉観測機「ポールンロボ」や皆さんから寄せられた花粉症の症状報告をもとに、2017年春の花粉シーズンを振り返りました。

第1章今年の飛散の特徴

花粉の飛散量は2016年の約3倍、
特に西日本でヒノキ花粉が大量飛散

2017年春のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は、全国平均は平年並(0.9倍)でしたが、九州・四国・中国・北海道では2014年以来3年ぶりに平年よりも多くの花粉が観測された所がありました。また、2016年と比べて全国平均は3.1倍で、九州や近畿では4~10倍飛散した所もありました。

スギ・ヒノキの雄花は夏の間に作られ、晴れて暑くなるほど雄花の量が多くなる傾向があります。
2016年は西日本で高気圧の勢力が強く、特に8月は晴れて猛暑になりました。北日本は日本海側ほど晴れ、西日本や北日本日本海側では雄花の生長を促す天候となりました。
一方で、関東や北日本太平洋側は湿った空気や台風の影響を受けて雲が広がりやすく、雄花の生長には適さない天候でした。さらに全般に“表年”の傾向で、これらが影響して、九州や北海道では平年以上の飛散量となり、関東や東北太平洋側では平年より少ない飛散量となったと考えられます。

※平年:2008年から2016年の平均
※表年:花粉飛散量が少ない年の翌年で、飛散量が多くなりやすい年

西日本ほどヒノキ花粉の当たり年
急激な飛散量増加、大量飛散が特徴

今シーズンは、特に西日本を中心にヒノキ花粉が多く飛散しました。ヒノキ花粉の雄花もスギ花粉と同様、夏の間に作られますが、雄花の中で花粉が作られる3月の天候の影響も受け、主に4月に飛散すると考えられています。

2016年の夏に西日本中心に晴れて猛暑となったことで雄花の数自体が多いうえに、2017年の3月上~中旬は西日本では晴れた日が多かったため、雄花の中で花粉が多く作られ、ヒノキ花粉の飛散量が多くなったと考えられます。
九州~東海では、ヒノキ花粉のピーク時期に一度に非常に多くの花粉が飛散し、2017年は2014年以来かそれを上回る大量飛散となりました。

スギ花粉は“ダラダラ型”、ヒノキ花粉は“短期集中型”

2017年は1月終わりに一時的に春本番を思わせる暖かさとなったことで、九州や関東の一部など早い所ではスギ花粉の飛散開始となりました。
ただ、その後すぐに寒気の影響を受けたため、花粉飛散開始エリアはすぐには拡大せず、西・東日本の各地でスギ花粉飛散シーズン・本格花粉シーズンに入ったのは、寒さが緩んだ2月中旬からとなりました。

3月は西・東日本では晴れた日が多かったものの、度々寒気の影響を受けたために平年・2016年より気温が低くなりました。そのため、4月上旬にかけてダラダラとしたスギ花粉飛散シーズンとなりました。

3月終わり頃になると、九州からヒノキ花粉が飛び始めました。4月上~中旬は西・東日本では雨の降る日が多かったため、ヒノキ花粉のピークはやや遅れましたが、天気が回復した日には花粉の飛散量が一気に増えました。その結果、九州~東海のヒノキ花粉シーズンはスギ花粉に比べて、短期集中型の飛散となりました。

第2章花粉の量と症状の変化

九州~東海では3年ぶりのつらいシーズンに

花粉症の症状を調査するため、スマホアプリ「ウェザーニュースタッチ」を通してユーザーに、“非常にツライ”、“ツライ”、“ややツライ”、“大丈夫”の4つから選んで日々症状を報告してもらいました。全国7,093名から寄せられた83,571通の症状報告から、“非常にツライ”、“ツライ”を選択した方の割合を調べました。

2017年の飛散量はほとんどの地域で2016年より多く、特に飛散量の多かった西のエリアほど、2016年よりもつらい症状の割合が増えています。さらに、東海~九州では飛散量が2015年と比べてもつらい症状の割合が増え、3年ぶりのつらいシーズンだったといえます。

上のグラフは、2017年と2016年のシーズンを通しての症状報告の変化(東北~九州)を示しています。症状報告を比較すると、全体的に2016年よりも症状がやや重い傾向にあり、特にシーズン後半の4月中旬〜下旬に2017年の方がつらいと感じている方の割合が多いことがわかります。

これは、2016年よりスギ・ヒノキ花粉のピークの時期が遅れたことと、ヒノキ花粉が大量飛散となったことが要因と考えられます。

第3章症状の重さ別にみる花粉

重度の花粉症の方は軽度の方より
1か月以上、症状の出る時期が早い

花粉症の重症度に応じた症状の特徴を調査するため、過去に皆さんから寄せられた症状報告のビッグデータをもとに、ユーザーの花粉症タイプ(軽いタイプ、ふつうタイプ、重いタイプ)を判定し、日々寄せられた症状報告から“非常にツライ”、“ツライ”を選択した方の割合を調べました。

関東地方では、早い所で1月終わりから花粉シーズンが始まりましたが、症状が“重いタイプ”の方からの報告では1月後半からすでに症状が現れ始めていました。

花粉数の増加に伴って次第に“ふつうタイプ”、“軽いタイプ”の方からも“非常にツライ”、“ツライ”の報告が増え始め、本格的な花粉シーズンが始まった2月15日以降は、全てのタイプで症状の悪化が見られました。

タイプ別に比較してみると、

<つらいと感じ始める時期の差>

  • 重いタイプと軽いタイプ:1か月以上
  • 重いタイプとふつうタイプ:1か月弱
  • ふつうタイプと軽いタイプ:半月程度

※「つらい+非常につらい」の割合が1割以上になった日を比較

重症度による違いは、花粉の飛散量に大きく左右され、エリアや年ごとにも変わってくると考えられるため、来シーズンも引き続き調査を実施していく予定です。

第4章くしゃみでみる花粉花粉

今シーズンのくしゃみピークは3月上旬
花粉が増えるとくしゃみもしっかり増加

上の図は、1日に何回くしゃみをしたかどうかの記録と、花粉数を示したグラフです(どちらも北海道を除く全国の合計)。
2月中旬〜4月下旬の間、くしゃみ数と花粉数のピークがおおよそ一致していることがわかります。
特にくしゃみ数が増えたのは3月上旬。ちょうどスギ花粉が大量飛散した時期と一致しています。皆さんのくしゃみの症状が、花粉の飛散にかなり敏感に反応しているようです。

第5章花粉による虹色現象

魔のサークル「花粉光環」
3月は関東で目撃リポート続出

  • 3月3日 神奈川県
  • 3月3日 埼玉県
  • 3月7日 神奈川県
  • 3月8日 東京都
  • 3月17日 茨城県
  • 3月22日 茨城県

3月上旬〜中旬、関東では太陽のまわりに現れるきれいな虹色現象「花粉光環(かふんこうかん)」が何度も目撃されました。

花粉光環とは?

「花粉光環」は、太陽の光が花粉の粒子の影響で曲げられることによる発生します。つまり、花粉の大量飛散のサインです。
目撃された時期は、関東でスギ花粉の飛散ピークだったことに加え、雨の翌日や風の強まったタイミングと重なり非常に多くの花粉を観測しました。

第6章来シーズンの予想

2018年の花粉は、2017年並み~少なくなる予想

花粉の飛散量は、前の年の夏の天候と関係することが分かってきています。よく晴れて暑い夏ほど、花粉のもととなる雄花の生育状況が良くなり、翌春の花粉量も多くなると言われています。

〜2017年夏の天候〜

晴れをもたらす太平洋高気圧の本州付近への張り出しが平年よりも強くなるため、梅雨明け後は晴れる日が多くなる見込みです。
気温は7月は平年並、8月は平年より高い予想ですが、2016年と比べると同程度か低くなるとみています。

〜2018年は花粉が少ない“裏年”傾向〜

花粉の飛散が多くなる“表年”の翌年は、飛散量が減少する“裏年”となる傾向があります。2017年は多くのエリアで“表年”だったため、2018年は“裏年”となり、花粉が減少する予想です。

◆北海道

2017年夏は晴れて暑くなりそうですが、2018年は“裏年”傾向であることを考慮すると、飛散量は2017年並み〜やや少ない予想です。
ただ、北海道では“表年”“裏年”の飛散量の増減があまり明瞭ではなく、夏の天候に大きく影響される傾向があります。予想よりも晴れれば、2017年の飛散量を上回る可能性もあります。

◆東北、関東、北陸

2018年春は“裏年”にあたり、2017年夏は平年より暑くなる予想です。気温は2016年夏と同程度かやや低くなる予想で、雄花生育にはまずまずの条件となりそうです。上記のことを踏まえると、飛散量は2017年並みかやや少なくなるとみています。

◆東海、西日本

2017年夏は晴れて暑くなりそうですが、2017年春は西ほど大量飛散だったこと、2018年は“裏年”傾向であることを考慮すると、飛散量は2017年の8割前後にとどまる予想です。
ただ、記録的な猛暑になった場合などは、2017年並みかそれ以上の飛散量になる可能性があります。