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天気予報精度 ウェザーニュースは気象庁を上回る
2023年1月~3月比較

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2023/04/17 13:20 ウェザーニュース

2023年に入って、何回傘を使いましたか?傘を持って行ったけど使わなかった日も、傘を持たずに雨や雪に遭遇した日もあるかもしれません。

ウェザーニュースでは予報技術者たちが、そのようなことをできるだけ減らせるように、日々、天気の予報精度の向上に努めています。

アプリやweb、テレビなどで毎日確認できる天気予報。その精度はどのくらいなのでしょうか。今年(2023年)1月~3月について検証しました。

ウェザーニュースでは2つの指標で評価

ウェザーニュースでは、天気予報の精度を評価・検証する際に、2つの指標を用いています。

ひとつは「降水捕捉率」というもので、降水(雨や雪)のあったところに対してどれだけ降水ありの予報を出せていたかというものです。簡単にいうと、どのくらい雨や雪を見逃さずにお伝えできていたかを表す指標になります。

雨や雪が降るのを見逃してしまうと、日常の生活への影響が大きくなってしまいます。そのため、見逃しはできる限り減らしたいものです。ただ、そのために「ひたすら雨や雪が降る予報」にしては意味がありません。

そこで、もうひとつ「適中率」と呼ばれる、発表した予報のうち降水ありを当てた割合と、降水なしを当てた割合トータルで評価する指標も使っています。こちらで、偏りのない予報が発表できていたかも含めて精度を検証しています。

気象庁と比較 降水捕捉率は大幅な差

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予報精度 2023年1月~3月
上記2つの指標を用いて、2023年1月~3を検証した結果、ウェザーニュースの天気予報精度は降水捕捉率が1月と2月は93%、3月が94%と高い水準で、適中率は1月が84%、2月が87%、3月は92%となりました。気象庁がホームページ上で発表しているものと比較すると、適中率は同等かやや上回り、降水捕捉率はウェザーニュースの方が大幅に高いことがわかりました。

この3か月においては、ウェザーニュースと気象庁の天気予報を比較すると、雨や雪が降る・降らないの偏りも考慮した予報精度は同等かやや高く、ウェザーニュースの方がより雨や雪の見逃しが少ないことを意味しています。

この期間中にウェザーニュースが精度よく天気予報をお伝えすることができた事例をいくつか紹介します。

【Case1】多数のモデル比較で雨雪が降る予報に(1月19日)

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この日は日本海から近づく低気圧による雨がどこまで降るのかということがポイントでした。
低気圧の進行速度や雨雲の範囲の予想がモデルごとに違い、東北では当日の間に雨雪が降り出すのか、北陸では雨雲(雪雲)がかかるかどうかの判断が前日の段階では難しい状況でした。

ウェザーニュースでは日本の気象庁が用いている気象予測モデル以外にも、欧米や韓国など海外の様々な気象機関の予測モデル、ウェザーニュースで独自開発した予測モデルなどを、専門の予報技術者が毎日解析を行っています。

この日は当日朝になると、ヨーロッパの予測モデルなどで低気圧の進行が早まり、降水域もやや拡大する傾向が見られました。そのため、今夜のうちに雨や雪が降り出すことを見逃さずに予報を発表することができ、実際にその通りになりました。

【Case2】前日のユーザー天気報告とモデル傾向で雨が降らない予報へ(2月7日)

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この日は日本の南の海上を東へ進む低気圧とその北側に広がる雨雲がどこまで拡大するのかということがポイントでした。気象庁の予測モデルでは、メソスケールモデルと全球モデルでも雨域が違い、その他のモデルでも雨域の広さの予想はバラバラでした。

アプリ利用者からの報告をもとに、前日の九州での雨の降り方を予測モデルと比較すると、実際の雨域はモデルの予想よりもやや狭く、雨も弱いことがわかりました。そして、当日の朝になると予測モデルも雨域が減少傾向だったため、関東南部や関西周辺では不必要に雨の予報を出しませんでした。

実際に当日の午前中は神戸付近までは雨が降っていたものの、大阪や京都などでは雨がほとんど降りませんでした。関東南部の雨でも周辺で雨雲が弱まり、傘が必要になることはありませんでした。

このように、アプリ利用者からの天気報告と予測モデルを融合させた天気予報の組み立ても行っています。

【Case3】モデルで予測ない雨を専門家の知見と最新技術で雨予報へ(3月29日)

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この日は地上天気図だけを見ると雨の降る要因が直接はわかりにくいのですが、北日本や東日本の上空を気圧の谷が通過していきました。上空500hPa付近の寒気も南下しており、関東から北日本においては、大気の状態が不安定な場でした。

日本全国で見ると、雨や雪の降ったところは少なかったものの、関東では広範囲でゲリラ雷雨のように急な激しい雷雨が降った日になります。この急な雨はモデルではごく一部にしか予測されておらず、強さもそれほど激しいものは予測されていませんでした。

しかしながら、ウェザーニュースでは予報技術者が上空の安定度の状態から天気の悪化傾向を導き出しました。そして、過去の同様な状況を機械学習させた独自の予測システムにこの悪化傾向を当てはめたところ、広域で雷雨が発生する可能性が示唆されました。そのため、この日は降水ありと判断して、関東には広域で雨の予報を発表しました。

2023年1月~3月の天気予報精度を振り返って

2023年1月~3月の天気予報精度は降水捕捉率では93%~94%と高い水準で、適中率でみても気象庁と同等か上回ることができました。

寒候期は冬型の気圧配置による日本海側の雪だけではなく、太平洋側の地域への雪雲・雨雲の流れ込みによる影響がどのくらいあるのか、判断の難しい日が多くあります。ただ、日々の予報精度の振り返りを行うことでノウハウを蓄積し、システムへの組み込みと予報技術者による管理・対応・調整を行って、より予報精度を向上させることができました。

また、この3か月で暖候期へと移行し、周期変化する天気へと変わっていく中で重要なのが、雨の強さや降り方の変化です。みなさんからの天気報告・ウェザーリポートと発表した予報とを解析し続けることによって、人が感じる雨の強度や降り方、その時の気象場も確認し、次に活かしながらより生活に寄り添った予報をお届けすることも多くできたと思います。

これからも日々のみなさんの天気報告に支えられながら、予報精度を向上・維持するとともに、皆さんへの恩返しができるように努力し続けます。
>>【予報精度向上への取り組み】予報のはずれを感じたらこちらへ報告
>>〔関連記事〕2023年上半期の予報精度結果

【柳井 剛】
ウェザーニュース予報センター所属。千葉県袖ケ浦市出身。入社13年目。予報精度改善チームにて精度検証・改善を行っている。

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参考資料など

降水捕捉率 検証方法説明(気象庁ホームページ) https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/kensho/explanation.html
気象庁 天気予報検証結果 https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/data/kensho/score_f.html