よく聞かれるマツムシ、スズムシ、クツワムシ、エンマコオロギ
まず、秋によく鳴き声が聞かれる虫にはどのような種類があるのでしょうか。兵庫県立 人と自然の博物館(三田市)自然・環境再生研究部コミュニケーション・デザイン研究グループ主任研究員の八木剛(やぎ・つよし)さんに伺いました。
「郊外の公園や道路の法面(のりめん)などで比較的よく聞かれるのは、まずマツムシです。童謡『虫のこえ』の歌詞では『チンチロチンチロチンチロリン』とされていますが、『ピッピキピ』とも聞こえるようです。
スズムシは、メスがいるときは『リーン、リーン』、いないときには『リー、リー』です。
クツワムシは歌詞のとおり『ガチャガチャガチャガチャ』と大きな鳴き声を出します。ただし、東日本にはいません。エンマコオロギは、メスがいるときは『ヒリヒリリリーリー』、いないときは『ヒリヒリヒリリ』と鳴きます」(八木さん)
環境省が選定した「残したい日本の音風景100選」では、「淀川河川敷のマツムシ」(淀川河川公園の大淀野草地区)が選ばれています。都会の真ん中ですが、秋の夜には多くの虫の音を聞くことができて、特にマツムシの独特の澄んだ声が響くようです。
「郊外の公園や道路の法面(のりめん)などで比較的よく聞かれるのは、まずマツムシです。童謡『虫のこえ』の歌詞では『チンチロチンチロチンチロリン』とされていますが、『ピッピキピ』とも聞こえるようです。
スズムシは、メスがいるときは『リーン、リーン』、いないときには『リー、リー』です。
クツワムシは歌詞のとおり『ガチャガチャガチャガチャ』と大きな鳴き声を出します。ただし、東日本にはいません。エンマコオロギは、メスがいるときは『ヒリヒリリリーリー』、いないときは『ヒリヒリヒリリ』と鳴きます」(八木さん)
環境省が選定した「残したい日本の音風景100選」では、「淀川河川敷のマツムシ」(淀川河川公園の大淀野草地区)が選ばれています。都会の真ん中ですが、秋の夜には多くの虫の音を聞くことができて、特にマツムシの独特の澄んだ声が響くようです。
虫の鳴き声を楽しむ文化は江戸時代から!?
平安時代には、かごに入れた虫の鳴き声を楽しむのが貴族の風流な遊びとしての記録があり、虫の音にやすらぎを感じるのは古くからあったようです。
清少納言の『枕草子』の『虫は』という章では「虫は鈴虫。ひぐらし。蝶。松虫。きりぎりす。はたおり」と、好ましい虫として鳴く虫が挙げられています。『新古今和歌集』(13世紀)にもキリギリスを詠った歌がみられます。
虫の鳴き声を楽しむ文化は、江戸時代になって庶民にも広がったとされています。飼育技術も進歩し、竹細工のかごに入ったスズムシやコオロギなどが「虫売り」たちによって庶民に売られるようになったそうです。
このように日本では、古くから虫の鳴き声を楽しんでいたのですが、現代では秋の虫の声はどれほど好まれているのでしょうか。
ウェザーニュースで「秋の虫の声好き?」というアンケート調査を実施したところ、「大好き」の29%も含め、「好き」と答えた方の割合が94%にも上りました。
清少納言の『枕草子』の『虫は』という章では「虫は鈴虫。ひぐらし。蝶。松虫。きりぎりす。はたおり」と、好ましい虫として鳴く虫が挙げられています。『新古今和歌集』(13世紀)にもキリギリスを詠った歌がみられます。
虫の鳴き声を楽しむ文化は、江戸時代になって庶民にも広がったとされています。飼育技術も進歩し、竹細工のかごに入ったスズムシやコオロギなどが「虫売り」たちによって庶民に売られるようになったそうです。
このように日本では、古くから虫の鳴き声を楽しんでいたのですが、現代では秋の虫の声はどれほど好まれているのでしょうか。
ウェザーニュースで「秋の虫の声好き?」というアンケート調査を実施したところ、「大好き」の29%も含め、「好き」と答えた方の割合が94%にも上りました。
虫の鳴き声がリラックス効果をもたらす!?
秋の虫の声が好まれる要因として考えられる研究成果が、今年発表されました。日本工営、国立環境研究所、千葉工業大学、東邦大学という産・官・学の共同研究チームが今年6月、虫の鳴き声が人に与える影響を検証し、「リラックス効果」がもたらされることを認めたのです。
千葉工業大学社会システム科学部の関研一教授に詳しく解説して頂きます。
「複数の被験者にスズムシなど異なる種類の虫の鳴き声を組み合わせた音源を聞かせ、その印象を評価する実験を行った結果、多様な虫の鳴き声がリラックス効果をもたらすことが、証明されました。
具体的には、千葉県白井市の草原でエンマコオロギ、カンタン、キンヒバリ、スズムシの鳴き声の音源を組み合わせた全15通りのサンプルを録音し、それらを実験室で大学生の被験者65人にランダムで7通りずつ聞いてもらいました。
そして、心理学における測定法の一つであるセマンティック・ディファレンシャル法(SD法)により、それぞれの音源に対する印象を回答してもらったのです。その結果、鳴く虫の種数が増えるほど、好ましいイメージが向上することが確認されました」(関教授)
千葉工業大学社会システム科学部の関研一教授に詳しく解説して頂きます。
「複数の被験者にスズムシなど異なる種類の虫の鳴き声を組み合わせた音源を聞かせ、その印象を評価する実験を行った結果、多様な虫の鳴き声がリラックス効果をもたらすことが、証明されました。
具体的には、千葉県白井市の草原でエンマコオロギ、カンタン、キンヒバリ、スズムシの鳴き声の音源を組み合わせた全15通りのサンプルを録音し、それらを実験室で大学生の被験者65人にランダムで7通りずつ聞いてもらいました。
そして、心理学における測定法の一つであるセマンティック・ディファレンシャル法(SD法)により、それぞれの音源に対する印象を回答してもらったのです。その結果、鳴く虫の種数が増えるほど、好ましいイメージが向上することが確認されました」(関教授)
虫の音が調和することで、より好ましい印象に
虫が単独で鳴いているより、多くの種類の“虫の合唱”を聞いたときのほうがリラックス効果が高まるということでしょうか。
「聞かせる虫の声を1種類のみとして、それぞれの鳴き声の好みを尋ねる質問では、好みの程度(リラックス効果)に大きな差はありませんでした。ところが別の種類の虫の鳴き声を組み合わせると、数が増えるにしたがって、好みの得点が向上する結果となりました。
さらに好みについて分析を行ったところ、『Calm:穏やかさ/Gorgeous:華やかさ/Musicality/音楽性/Deep:深み)が抽出されました。そして、虫の種数が増えるに従って、各因子に対する印象の得点が向上したのです。特に、『華やかさ』と『音楽性』の得点が顕著に増えました」(関教授)
“合唱”だとリラックス効果が高まるということですね。原因はどんなことにあるのでしょうか。
「実験に用いた4種の鳴く虫の『音響スペクトル』を分析したところ、虫の種ごとに周波数の特徴が異なっており、聴感上の“調和”が得られたと考えられます。
また、音の高さ、強さ、長さなどのパターンが種によって異なることから、複数の種の音が調和することでリズムも多様化し、より好ましい印象を与えたと考えられます。
一般的に、自然の音には様々なリラックス効果があると言われています。虫の鳴き声にも同様の心理的な回復効果があるといえるでしょう」(関教授)
今回の実験結果は、公園や緑地の造成といった「グリーンインフラ」の保全や創出の際に、虫の鳴き声を活用した快適な空間づくりに、幅広い活用が期待できるとのことです。
科学的にも証明されたという、秋の虫の鳴き声のリラックス効果。この秋は虫の鳴き声に耳をかたむけて、心身を癒してみてはいかがでしょうか。
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「聞かせる虫の声を1種類のみとして、それぞれの鳴き声の好みを尋ねる質問では、好みの程度(リラックス効果)に大きな差はありませんでした。ところが別の種類の虫の鳴き声を組み合わせると、数が増えるにしたがって、好みの得点が向上する結果となりました。
さらに好みについて分析を行ったところ、『Calm:穏やかさ/Gorgeous:華やかさ/Musicality/音楽性/Deep:深み)が抽出されました。そして、虫の種数が増えるに従って、各因子に対する印象の得点が向上したのです。特に、『華やかさ』と『音楽性』の得点が顕著に増えました」(関教授)
“合唱”だとリラックス効果が高まるということですね。原因はどんなことにあるのでしょうか。
「実験に用いた4種の鳴く虫の『音響スペクトル』を分析したところ、虫の種ごとに周波数の特徴が異なっており、聴感上の“調和”が得られたと考えられます。
また、音の高さ、強さ、長さなどのパターンが種によって異なることから、複数の種の音が調和することでリズムも多様化し、より好ましい印象を与えたと考えられます。
一般的に、自然の音には様々なリラックス効果があると言われています。虫の鳴き声にも同様の心理的な回復効果があるといえるでしょう」(関教授)
今回の実験結果は、公園や緑地の造成といった「グリーンインフラ」の保全や創出の際に、虫の鳴き声を活用した快適な空間づくりに、幅広い活用が期待できるとのことです。
科学的にも証明されたという、秋の虫の鳴き声のリラックス効果。この秋は虫の鳴き声に耳をかたむけて、心身を癒してみてはいかがでしょうか。
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