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【インタビュー】秋から冬の「危険な雲」

「雲の見方」を雲研究者に聞いてみた。 Vol.3

2017/11/09 11:38 ウェザーニュース

いつも空にあり、さまざまな表情で私たちを魅了する雲。一方で、豪雨や大雪、竜巻といった災害をもたらすことも。

そんな「雲」の研究を続けている荒木健太郎さんにお話を伺い、知られざる雲の科学と謎に迫りました!(全4回)

雲の研究者って?
実はゲリラではない!
・秋から冬の「危険な雲」(本記事)
そもそも雲とは何?

秋から冬の「危険な雲」に注意!

危険な雲には、どのようなものがありますか?

「積乱雲」が危険な雲なのはご存知ですね。大気が不安定な状態で上空に成長を続けて積乱雲になると、落雷や大雨、突風などの激しい気象現象をもたらします。
その積乱雲に伴ってできる「頭巾雲(ずきんぐも)」や「乳房雲(ちぶさぐも)」も要チェックです。

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左)積乱雲上部に形成される頭巾雲(提供:荒木健太郎)
右)夕焼けに染まる乳房雲(提供:荒木健太郎)
頭巾雲は、発達している最中の雄大積雲の雲頂付近にできる雲のことを言います。
頭巾雲が発生するということは、雲が強い上昇流を伴って急成長している証拠です。
これを見かけたら大気の状態が不安定な証拠で、自分のいる場所でも積乱雲が発達する可能性があります。

乳房雲は、雲の底面がデコボコしたコブ状になっていて、牛の乳房のようにいくつも垂れ下がっているもので、積乱雲の進行方向の前方に出現します。
つまり、この雲が自分の真上の空に現れれば、積乱雲がこちらに向かってやってくる可能性があるということなのです。

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上)漏斗雲
下)レンズ雲(提供:荒木健太郎)
これからの季節で気をつけたい雲は、漏斗雲(ろうとぐも)です。漏斗雲とは、積乱雲や積雲などから垂れ下がるようにできるロウト(じょうご)状の雲のこと。竜巻が発生する直前や竜巻が発生している最中に見られる雲です。
竜巻に至る渦の中心付近では気圧が急激に下がり、周辺の空気中の水蒸気が冷やされ水滴となって漏斗雲をつくります
。漏斗雲が見られるときは、竜巻発生の可能性が高く、非常に危険です。これを見かけたらすぐに頑丈な建物の中に避難してください。

登山する人が気をつけたいのは、レンズ雲です。レンズ雲は風を知らせてくれる雲です。というのも、風が山を越えるとき、風下山岳波(さんがくは)と呼ばれる大気中の波が発生することがあります。
その上昇流域で現れやすいのがレンズ雲。レンズ雲の表面がツルッとして見えるのは、上空で強風が吹いていることを示しています。山頂付近は強風の可能性があるので注意が必要です。

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雲以外にも空を見ていてわかる危険なサインはありますか?

昔からの観天望気に「太陽や月に光の環がかかると雨」というものがあります。この「光の環」とは、「ハロ」のことです。

ハロとは、上空の高い位置に薄い雲が広がっているときに見える、太陽の周りのボンヤリとした光の環で、巻層雲(けんそううん)と呼ばれる薄い雲のなかにある氷の結晶により、太陽の光が屈折して現れる現象です。
巻層雲は、温帯低気圧の進行方向に発生することが多く、ハロが出現して雲が厚くなると、低気圧にともなう雨の可能性が高くなります。つまり、ハロが見えたら悪天候になる危険性がある、ということ。「ハロが見えたら雨」という観天望気には科学的根拠があるのです。

このように雲は大気の状態を読むヒントになりますが、ヒントはあくまでもヒント。気象予報と組み合わせて、空の“気持ち”を汲み取ってほしいと思います。

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雲の研究者って?
実はゲリラではない!
・秋から冬の「危険な雲」(本記事)
そもそも雲とは何?

荒木健太郎(あらき けんたろう)

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1984年生まれ。気象庁気象研究所予報研究部研究官。雲研究者。2008年、気象大学校を卒業後、地方気象台で予報、観測業務に従事した後、現職に至る。専門は竜巻や局地豪雨、豪雪などの顕著な大気現象とそれらの原因となる雲の物理学。雲の実験、観測、予測の研究を進め、防災、減災に貢献することを目指す。

参考資料など

月刊SORA 11月号
https://weathernews.jp/soramagazine/201711/08/
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