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地球温暖化で何が起こる?西暦2100年シミュレーション

2018/11/02 09:58 ウェザーニュース

地球温暖化が進行している。唯一の対策は二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を抑制することだが、排出量は年々増加する一方だ。このまま温暖化が進むと将来何が起こるのか。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の「第5次評価報告書」などをもとに、あなたの子や孫の世代が体験するであろうことをシミュレーションする。
※こちらの記事はウェザーニュースの月刊デジタルマガジン「月刊SORA」に掲載中の記事を一部編集してご紹介しています。

熱帯化した日本の夏

夏の東京は灼熱地獄に

40℃を超える日も

西暦2100年8月、日本は灼熱の夏を迎えていた。地球温暖化に加えてヒートアイランド現象を伴う東京は、夜も30℃を下回ることがなく、日中は40℃を超える日も珍しくなくなった。

2014年にIPCCがまとめた「第5次評価報告書」の最も厳しい想定であるRCP8.5シナリオでは、21世紀末の世界平均気温は21世紀初頭に比べて2.6〜4.8℃上昇すると予想していたが、その上限が的中したかたちだ。
ちなみに、RCP8.5とは、放射強制力(地球に出入りするエネルギー量)が、産業革命前に比べて1m2あたり8.5W増えることを意味する。
ゲリラ雷雨が毎日のように

◆ウルトラ・クールビズ
人々の暮らしぶりも変わった。かつて環境省が夏の服装を軽装化しようとクールビズ(2005年)、スーパー・クールビズ(2012年)を提唱したが、それでは間に合わず、4月から10月は半袖、半ズボン、日よけの帽子といったウルトラ・クールビズが定着した。

◆感染症も熱帯化
21世紀初頭、夏に熱中症で病院に搬送される人は年間約5万人、死亡する人は約1000人だったが、21世紀末になるとその5倍に達した。熱波が押し寄せるとさらに犠牲者が増えた。

関東地方以南は冬でも気温が15℃を下回らず、ネッタイシマカやハマダラカが常在し、デング熱やマラリアなど熱帯性の感染症が蔓延するようになった。
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◆農業・漁業が劇的に変化
高温すぎると米の品質が劣化する
一般的に気温が上昇すると農作物の収量は上がるが、限度を超えると品質が低下したり、育たなくなる。米は高温によって白未熟粒(コメが白く濁る)や胴割れ(コメに亀裂が生じる)が発生するため、東北や北海道が米作の中心地になった。

野菜や果物も栽培適地が北上した。その結果、沖縄でしか栽培できなかったバナナやパイナップルが関東地方でも栽培可能に。東南アジアの食材も自給できるようになり、エスニック料理を提供する店が増えた。
▼関東地方でもバナナが栽培できる

海水温も上昇したため、沿岸ではアンコウ、ヤナギムシガレイ、タコなど南方系の魚類が獲れるようになったが、一方で海水温の上昇と海洋酸性化で魚の餌になるプランクトンが減少したため、漁獲量は大幅に減少した。

地球温暖化で台風が大型化する

巨大台風で都会も洪水

◆東京駅や霞が関も浸水
西暦2100年9月、関東地方に台風が上陸した。上陸時の中心気圧が940hPaという勢力だった。21世紀初頭に比べて海面水位が80cm上昇し、台風による高潮に襲われた東京湾沿岸部は280km2が浸水。事前に被害が想定されて浸水区域の約140万人に避難指示が出ていたが、逃げ遅れた人も少なくなかった。

都内は江東区や墨田区といった下町だけでなく、東京駅や霞が関付近も浸水深は1mに達し、地下街も地下鉄も水没。首都機能はマヒした。

◆河川の洪水も追い打ち
台風は豪雨ももたらした。利根川水系や鬼怒川水系のダムは台風に備えて放流し、貯水量に余裕を持たせていたが、降水量は24時間で600mmを超え、ダムはたちまち満水になり、河川の水位は急速に上昇した。
▼高潮で霞が関も浸水する

利根川の堤防が埼玉県内で決壊し、鬼怒川も茨城県内で決壊。濁流は流域の家屋や農耕地を飲み込みながら3日後には東京の足立区や葛飾区に到達して町は水没。台風はすでに日本海に抜けていたが、都内は高潮による浸水と洪水による浸水のダブルパンチを受け、死者・行方不明者は数千人を数えた。

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◆気象の極端現象
地球温暖化により台風の勢力が強くなり、洪水や高潮、豪雨の頻度も高まっている。また、降水量が増加する一方、長期間雨が降らずに渇水するという「気象の極端現象」が起き、洪水と渇水は隣り合わせになった。
21世紀初頭では数十年に1度という自然災害が、21世紀末には数年に一度、あるいは毎年のように起きている。

予想以上に温暖化が進行

北極の氷がなくなるとシロクマもピンチ

最悪シナリオが現実化する理由

21世紀初頭、気象学者たちは地球温暖化を抑制しようと、将来予測を提示して対策の必要性を提言してきた。しかし、新興国を中心に石炭や石油といった化石燃料が使われ続けた。地球温暖化の抑制より経済発展を優先したのだ。
その結果、IPCCが予想した21世紀末のシミュレーションの最悪シナリオが現実になった。

◆正のフィードバック
地球温暖化が最悪シナリオをたどったもう一つの理由は、変化を加速させる「正のフィードバック」を伴ったからだ。たとえば、北極海の海氷が夏季にほとんど融解した結果、それまで純白の海氷が太陽熱の大半を反射していたのに(これを「アルベドが高い」という)、逆に太陽熱を吸収し、地球温暖化を加速させることになった。

また、地球温暖化で大気中の水蒸気量が増えたが、水蒸気量の増加は気温上昇に働く。こうした「正のフィードバック」が地球温暖化を加速させたのだ。

◆海面水位上昇で水没する島国
海外を見渡せば、地球温暖化の影響が最も深刻なのが南太平洋の島国だ。海面水位が上昇したため、平均標高が数mのツバルやキリバスなどは一部が水没。島民の大半がオーストラリアなどに移住した。
▼海面水位上昇でツバルから住民が脱出

海面水位の上昇は、日本でも地下水の上昇として深刻な影響が出た。東京、大阪、名古屋などは地下街や地下鉄が発達しているが、地下水位が上昇すると、そうした地下施設に浮力が働くため、一部が損壊して地下水が流れ込むようになった。

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◆食糧供給が悪化して紛争が多発
▼干ばつが続くと食糧危機に

地球温暖化は世界的に食糧生産を悪化させた。世界有数の米作地帯の東南アジアは毎年のようにサイクロンに襲われて収量が激減、小麦の大生産地の米国やオーストラリアも干ばつが頻発。アフリカの干ばつも深刻で、食糧を巡って紛争が多発した。


21世紀末に世界人口は100億人を突破したが、それだけの食糧を供給できない年は大量の餓死者も出た。

温暖化の悪夢を避けるには?

太陽光発電などで二酸化炭素排出削減を
以上のシミュレーションは、地球温暖化対策に十分な対策をとらないことを前提にした。IPCCが提唱する対策の柱は、二酸化炭素やメタンガスなど温室効果ガスの排出抑制だ。
現在の温室効果ガス排出量(二酸化炭素換算)は年間約500億トン、大気中の温室効果ガスの濃度は430ppm(1ppmは1万分の1%)だ。
「第5次評価報告書」では、2100年に気温上昇を2℃以内に抑えるには、温室効果ガス濃度を450ppmに抑える必要があり、そのためには2050年に温室効果ガスの排出を2010年に比べて半減(40〜70%削減)する必要があると指摘している。

◆私たちにできるエコな暮らし
具体的には、石油や石炭など化石燃料の使用を抑え、代わって太陽光発電や風力発電、地熱発電、電気自動車や水素燃料などを普及させる必要がある。

個人レベルでは、地産地消を実践する、フードロス(まだ食べられるのに捨てられる食べ物)をなくす、自然エネルギーで発電する電力会社を選ぶなど、できることはいろいろある。私たちの本気度が試されている。