facebook line x mail

週刊地震情報・年末拡大版
2023年の震度5弱以上は5月に集中 世界では直下型地震の被害大

top

2023/12/28 10:57 ウェザーニュース

2023年に国内で観測された震度1以上の地震回数は、12月25日時点で2188回に達しました。去年よりも10%ほど増加し、2年ぶりの2000回超です。その一方で震度3以上の地震は194回と去年に比べわずかながら少なく、震度5弱以上も8回に留まりました。

今年は月によって地震回数の差が大きかったのが特徴的です。5月と9月は震度1以上の回数が400を超えたのに対し、その他の月は200回未満となっています。特に5月は震度5弱以上が6回と集中しました。9月はトカラ列島の群発地震が大半を占めています。

国内:5月に震度5弱以上が6回発生

box0
5月に起きた震度5弱以上の地震
5月は5日の能登半島沖・震度6強の地震を皮切りに、同日に再び能登半島沖で震度5強、11日は千葉県南部で震度5強、13日はトカラ列島近海で震度5弱、22日に新島・神津島近海で震度5弱、26日に千葉県東方沖で震度5弱と、6回の震度5弱以上の地震が起きました。

1か月に震度5弱以上の地震がこれだけ多く発生したのは、熊本地震が発生した2016年4月の22回以来です。その前は2011年の東日本大震災を引き起こした超巨大地震に関連する活動によるもので、今回のように違う地域で起きるケースはあまり多くはありません。

能登半島 一連の活動で最大の地震

box1
能登半島の地震
5月5日14時42分頃、能登半島沖を震源とするマグニチュード6.5、深さ12kmと推定される地震が発生しました。

この地震で石川県珠洲市で最大震度6強を観測。そのほか、能登町で震度5強、輪島市で震度5弱、新潟県上越市、長岡市、佐渡市、富山県高岡市、氷見市、石川県七尾市、金沢市、福井県あわら市、坂井市など広い範囲で震度4を観測しています。

2021年から続く一連の活動で最大の地震で、石川県内で震度6強の揺れを観測するのは、2007年3月の「平成19年(2007年)能登半島地震」以来16年ぶりです。

また、同日の夜21時58分頃にもマグニチュード5.9、最大震度5強の強い地震が発生しています。

この地震の後、夏頃にかけて活動の活発な状況が続きましたが、秋以降は小康状態になっていて、震度3以上の揺れを伴う地震は9月28日以来、起きていません。有感地震自体は継続していますので、今後の活動に注意が必要です。

鳥島近海で地震多発 津波も発生 火山活動が関与か

box2
鳥島近海の地震
10月2日頃から鳥島近海で地震活動が活発になりました。5日10時59分頃にはマグニチュード6.5、6日10時31分頃にはマグニチュード6.0の地震が発生し、津波が発生。伊豆諸島の八丈島八重根で20cmの津波を観測しています。

さらに9日4〜6時頃にかけては通常とは地震波の波形が異なる地震が多発し、5日や6日の地震の時よりも大きな津波が発生し、八丈島八重根の70cmを筆頭に千葉県から鹿児島県の太平洋側にかけての広範囲で10cm以上の津波を観測しました。

この地震では通常の地震でみられるP波(初期微動)、S波(主要動)が観測されなかった一方で、T波と呼ばれる海中を伝わる波がみられました。T波は地震波が海底を強く揺する際に音波に変換されることで生じます。

海底直下の非常に浅い地震や海底火山の噴火に伴う振動によってT波が生成することが多く、今回は周辺の海域で火山噴火の噴出物である軽石が見つかったことや、JAMSTEC(海洋研究開発機構)がカルデラと呼ばれる火山噴火で形成されるくぼ地が確認されたことなどから、海底噴火が起きた可能性が高いと考えられます。

世界:2年連続でマグニチュード8以上の地震なし

box4
世界のM7以上の地震(USGSホームページ引用/ウェザーニュース加工)
2023年、アメリカ地質調査所の解析によるマグニチュード7以上の地震は19回発生しました。去年の11回に比べると増加したものの、今年もマグニチュード8以上の地震は起きていません。

最も規模が大きかったのは日本時間の2月6日に発生したトルコの地震のマグニチュード7.8です。陸域で発生した地震だったことから、被害も甚大でした。

トルコのM7.8の地震で死者は5万人以上

box5
トルコの地震
日本時間の2月6日(月)の午前、トルコ中部を震源とするマグニチュード7.8、深さ約18kmと推定される地震が発生しました。地震のメカニズムは横ずれ型と解析されています。

また、9時間後の夜には少し北に離れた所でマグニチュード7.5、深さ約10kmと推定される地震が発生。こちらの地震もメカニズムは横ずれ型と解析されています。2回の地震の余震とみられる地震が多数発生していて、マグニチュード6を超える地震が3回発生しました。

震源の近くでは改正メルカリ震度階級でIX(厳密には比較できませんが、日本の震度階級では震度5強〜6弱に相当)の激しい揺れに見舞われ、トルコと隣国のシリアを合わせて5万人以上の方が亡くなりました。

トルコは国の大部分が「アナトリアプレート」と呼ばれる小さなプレート上に位置しています。南側にはアフリカプレート、南東側にアラビアプレート、北側にはユーラシアプレートがあり、複数のプレート境界に囲まれる形です。

最初に発生したマグニチュード7.8の地震はアナトリアプレートとアラビアプレートの境界に形成されている「東アナトリア断層」の活動とみられます。

モロッコでM6.8 多数の建物が倒壊

box6
モロッコの地震被害
日本時間の9月9日、アフリカ・モロッコを震源とするマグニチュード6.8、深さ約19kmと推定される地震が発生しました。地震のメカニズムは南北方向に圧力軸を持つ逆断層型で、やや横ずれ成分を含むと解析されています。

内陸の浅い所で起きた大きな地震で、震央周辺では改正メルカリ震度階級でVIIIの揺れがあったとみられます。厳密な比較はできないものの、日本の気象庁震度階級に換算すると震度6弱程度に相当する揺れです。

主要都市のひとつであるマラケシュでも強い揺れに見舞われ、多くの建物が倒壊。1000人を超える死者が出ていると伝えられています。

モロッコの強い地震はユーラシアプレートとアフリカプレートの境界に当たる北部が大部分を占め、今回の地震はアトラス山脈に分布する断層帯で発生したと考えられます。アメリカ地質調査所のデータでは、1900年以降、今回の震源周辺でマグニチュード6を超えるような地震は起きていません。

1960年に今回よりも海沿いで発生したマグニチュード5.9の地震は「アガディール地震」と呼ばれ、甚大な被害を出しています。

アフガニスタン 短期間で4回のM6.3

box7
アフガニスタンの地震
日本時間の10月7日、アフガニスタン西部を震源とするマグニチュード6.3、深さ約14kmと推定される地震が発生しました。また、そのわずか30分ほど後にもマグニチュード6.3、深さ約10kmと推定される地震があり、さらに11日と15日にもほぼ同じ震源でマグニチュード6.3の地震が起きています。

地震のメカニズムはいずれも南北方向に圧力軸を持つ逆断層型と解析され、同タイプ、同規模の地震が連続的に発生したものです。

震央付近では最大で改正メルカリ震度階級のVIIIの強さの揺れになったとみられます。厳密な比較はできないものの、日本の気象庁震度階級に換算すると震度5強〜6弱程度の揺れに相当します。この地震で1000人以上の方が亡くなっています。

アフガニスタンはユーラシアプレートとインドプレートの境界に当たる東部で地震が多く、マグニチュード7を超えるような深発地震が度々起き、パキスタンとの国境近くではマグニチュード6クラス浅い地震で大きな被害が出ています。

今回の震源付近ではユーラシアプレートとアラビアプレートの衝突が影響していると考えられています。アフガニスタンでマグニチュード6以上の地震はあまり起きていませんが、国境を超えて少し西に行ったイラン側では地震が多く、1997年にマグニチュード7.3の地震が発生し、1500人を超える死者を出しました。

出典・参考
※日本国内の震源・震度の情報は特に記載が無ければ気象庁より。海外の震源情報は特に記載が無ければアメリカ地質調査所(USGS)より。発表機関により震源情報に差が生じることがあります。