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太陽が低くなる季節、運転時の西日に効果的な対策はサンバイザー? サングラス?

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2023/12/02 05:00 ウェザーニュース

夕暮れどきは交通事故の発生率が高まる時間帯といわれます。これは西日が眩しく感じられるからで、特に太陽が長時間低い位置から差し込む冬が危険です。

対策としては「サングラス」の使用などが考えられます。ウェザーニュースでは「冬場の日中、運転時にサングラスを使う?」というアンケート調査を行ったところ、「かけない」という回答が半数を超える52%に上りました。
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サングラス以外には「サンバイザー」といった対策もありますが、どの程度有効なのでしょうか。

西日が当たる状況を再現し、綿密な実験を行って対策を検証したというJAF(日本自動車連盟)の実験をもとに解説します。

太陽の高度が下がる冬は西日に注意

太陽がドライバーからみて眩しい位置にあると交通事故が多くなることは、科学警察研究所(科警研)が、千葉県で発生した事故を分析した結果確認されています。事故類型としては人対車両事故、右左折時、出会い頭などで、太陽が視界の正面に入るほど、歩行者や停止中の車が見えづらくなっていました。

この研究では、太陽高度が地平線から10~30度のときにドライバーの視界に太陽光が入りやすく、事故率が高くなることもわかりました。

太陽高度は、季節によって大きく変わります。午後3時の東京付近では、6月下旬が約46度と高いのに比べ、12月下旬は約15度と低くなります。

科警研が事故率の高い太陽高度10~30度になる時間帯を千葉県で調べた結果、夏至に近い頃は16時10分から17時50分の「100分間」、冬至に近い頃は12時50分から15時20分の「150分間」でした。

冬は夏に比べて1.5倍も眩しい時間帯が長くなるうえ、空気が乾燥して太陽光の透過率も高まるため眩しさが増し、西日が危険なのです。

強烈な日差しを遮(さえぎ)る方法をテスト

JAFでは、西日を再現できる装置でテスト車を照らし、前方の人や車や信号が運転席から確認できるかどうかを検証しました。

テストで確認したものは下記の通りです。

A:日なたにいるマネキン(テスト車に近い位置)
B:日陰にいるマネキン(テスト車に近い位置)
C:横断歩道上にいるマネキン(テスト車に遠い位置)
D:横断歩道の横にいるマネキン(テスト車に遠い位置)
E:対向車(ヘッドライトオン)
F:対向車(ヘッドライトオフ)
G:信号機

これらの対象物は、西日が当たらない状態では問題なく見えていました。しかし、西日を再現する日照装置を点灯すると、目が眩(くら)んでほとんど見えなくなりました。

そこで、車に搭載されたサンバイザーで日差しをカットする検証と、サングラスをかけて日差しを和らげる検証を行いました。

サンバイザーで西日は遮れる?

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サンバイザーを使わず直接西日に照らされた状態では、ヘッドライトを点灯している対向車の輪郭(りんかく)がわずかにわかり、信号機は点灯していることが確認できたものの、何色が点灯しているか認識できませんでした。

サンバイザーを使用すると、A~Fの対象物はほとんど視認できました。しかし、上方にある信号機はサンバイザーに隠れて見えませんでした。

サンバイザーは、物理的に西日を遮るので西日対策としては有効です。しかし、上方の視界も遮ってしまうため、標識や信号機などを見落とす危険性があります。

もちろん、クルマの車種やタイプ、ドライバーのポジションなどによって、上下の視野角が変化することも忘れてはなりません。

サングラスでは?

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サングラスは、光の透過率15%(暗めのもの)、30%(一般的なもの)、75%(明るめのもの)の3種類が検証されました。下から反射してくる雑光(紫外線や太陽光・照明の照り返しなど)をフィルターでカットする偏光機能は、どれも付いていないものを使いました。

結果としては、暗めのもの(レンズの色が濃く可視光線透過率が低いもの)のほうがより効果的であることがわかりました。

ただし、レンズの色が濃いと眩惑(げんわく)対策としては有効ですが、日陰やトンネル内などでは見えにくく、危険を見落とす可能性もあるので注意が必要です。

サングラスを選ぶ際は、より視認性が向上する偏光機能が付いたものを選んだほうがいいでしょう。

このように、冬期の西日はドライバーに多くの見落としを生みます。

ドライバーだけでなく、歩行者側も太陽が低い位置にあるときは、見落とされている可能性があることを意識し、減速しているかなど車の動きに注意してください。


参考資料
JAF「ドライバーを眩惑する、強烈な日差しを遮る方法は?(JAFユーザーテスト)」、JAFMate「運転中、正面からの眩しい日差しを遮る効果的な方法は?、同「秋冬は、正面から射し込んでくる西日の眩しさに注意」」