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ワクチン「積極的な接種を強く推奨」、今年のインフルエンザの特徴と注意点

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2023/10/25 08:30 ウェザーニュース

インフルエンザウイルスは、新型コロナウイルスの流行による感染症予防対策の効果もあり、2020年以降の3シーズンで警戒レベルに達するような大きな流行はありませんでした。

厚生労働省は毎年9月上旬の第36週から新シーズンのインフルエンザの発生状況を公表しています。今シーズン(2023-24年)は第41週(10月9~15日)の時点で患者報告数が、すでに全国で24万3064人に達しているのです。

日本感染症学会も「今までに例を見ない状況」として、インフルエンザワクチンの積極的な接種を強く推奨しています。

今シーズンのインフルエンザの特徴や注意点などについて、横浜鶴見リハビリテーション病院(横浜市鶴見区)の吉田勝明院長に解説して頂きました。

極めて異例の流行状況

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インフルエンザの流行は冬場の印象が強いのですが、今シーズンはすでに全国各地で学級閉鎖が行われているなど、例年と異なる印象です。

「インフルエンザは例年、気温や湿度が低下する12~4月に流行し、1月末~3月上旬にピークを迎えます。

ところが今年はすでに夏ごろから散発的に患者が報告され、2023-24年シーズン第41週までの患者数はすでに、昨年同期の450倍にもなっています。直近10シーズンのうち最も多い2019-20年と比べても、10倍近く多い状況です。

厚生労働省ではインフルエンザの流行の目安である『流行注意報基準』を定点あたり10.0としていますが、第41週の全国平均は11.07と、早くも流行注意報の基準を超えました。これは極めて異例の状況です」(吉田院長)

流行拡大の背景は?

今シーズンのインフルエンザには、どのような特徴がみられますか。

「新型コロナウイルス感染症の影響もあって、インフルエンザA(H1N1)亜型やA(H3N2)亜型の抗体を保有している人の割合が、すべての年齢で低下傾向にあります。さらに気温の日ごとの上下や朝晩の温度差が激しいという気象状況などもあり、2023-24年シーズンは、季節性インフルエンザの流行が起こりやすい状況にあると考えられます。

2022-23年シーズンからインフルエンザ患者の発生が継続しており、例年11月から始まる患者数の上昇傾向が、8月から始まっていることも、特徴として挙げられます。

厚労省は2023年度のインフルエンザワクチン供給量を3121万本と発表し、『通常年の使用量を超える供給量となる見込み』としています。しかし、10月から多くの自治体で開始されたインフルエンザワクチンの接種予約が月内はほぼ埋まってしまったなどの報告も、各地の医療機関からなされているようです。

また、インフルエンザのおもな症状であるせきや発熱を抑える、『風邪薬』の不足傾向もみられています。医師の処方箋に基づく調剤薬局でも在庫切れが生じ、別の薬への代替を医師と確認したり、在庫がある別の薬局へ移ってもらったりといった対応もなされているようです」(吉田院長)

ワクチン接種で注意すべきポイント

インフルエンザワクチン接種にあたって、注意すべきポイントなどはありますか。

「ワクチンの予防効果が期待できるのは、接種の2週後から5ヵ月程度と考えられています。今の感染状況をみると、まだワクチンを接種していない方はできるだけ早く接種した方が良いでしょう。

インフルエンザワクチンは生後6ヵ月から受けられ、生後6ヵ月〜12歳のお子さんは原則2回、13歳以上は原則1回接種です。小さな子は2回接種したほうが抗体価(インフルエンザウイルスに反応できる抗体の量)が上昇することが、その理由です」(吉田院長)

ワクチンを接種すれば、インフルエンザに感染しないで済むのでしょうか。

「ワクチンで完全には発症を予防することはできません。インフルエンザワクチンの一番の効果は、肺炎や脳症などを発症する重症化を予防することです。

インフルエンザワクチン接種により、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している人の34〜55%の発病を阻止、82%の死亡を阻止する効果があったとする国内での研究報告もあります」(吉田院長)

新型コロナワクチンと両方同時に接種することは可能ですか。

「インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンとの同時接種については、2022年の厚労省審議会で可能とされました。別の日に接種する場合の接種間隔についても制限はありません。

ただし、どちらのワクチンもアレルギー反応や、頭痛・発熱・吐き気などの副作用が起こる可能性はあります。同時に打つとどちらのワクチンの副作用かが判断できない可能性もありますので、できれば2週間程度空けていただけることが望ましいかと思われます。

また、インフルエンザワクチン以外のワクチンの同時接種については、現時点で安全性に関する知見が十分に得られていないため、実施することはできません」(吉田院長)


インフルエンザも新型コロナと同じように飛沫と接触で感染する病気です。コロナが第5類に移行したからといって安心することなく、インフルエンザ感染予防のためにも人ごみなどでのマスク着用と手指消毒を行うなど、それぞれへの感染予防を心がけましょう。
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