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「ういろう」や「羊羹(ようかん)」との違いは? 夏の和菓子「水羊羹」とは

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2023/08/05 05:00 ウェザーニュース

毎日厳しい暑さが続いていますね。猛暑の日々に涼を与えてくれる和菓子のなかでも、特に水羊羹(みずようかん)は爽やかな味わいとのどごしが好まれ、古くから親しまれてきました。

和菓子として親しまれている水羊羹ですが、製法や由来など“知っているようで知らない”秘密も潜んでいるようです。そんな水羊羹のあれこれについて、1716年創業の京菓匠「笹屋伊織」(本店・京都市下京区)に伺いました。

水羊羹はどうやって作られている?

まず、水羊羹はどのような原料からできているのでしょうか。

「羊羹には水羊羹のほかに、練羊羹と蒸(むし)羊羹があります。

羊羹の原料は寒天と砂糖、小豆で、それぞれを練って、煮詰めて作ります。

水羊羹は寒天の量を練羊羹よりも少なくして水分を増やし、煮詰めないようにして型に流し込み、固めて作るという違いがあります。

水羊羹の特徴である“つるん”とした食感は、練羊羹に比べて水分が多く含まれているからなのです。

蒸羊羹は、羊羹のなかでも最も歴史が古く、栗蒸羊羹や芋(いも)羊羹がよく知られています。蒸羊羹は小豆に小麦粉やくず粉などを混ぜて栗や芋を加え、蒸して固めて作ります」(笹屋伊織)

「水羊羹」「ういろう」の違いは?

水羊羹に見た目が似た和菓子として、「ういろう」があります。それぞれ、どのような違いがあるのでしょうか。

「ういろうは、見た目から羊羹に似た和菓子と思われがちですが、原料は羊羹とは違って米粉などの穀粉に砂糖を混ぜたものです。

素材を蒸して固めるという製法は蒸羊羹と似ていますが、羊羹とはまったく別種の和菓子といえるでしょう」(笹屋伊織)

いつ頃から食べられている?

羊羹はどんな歴史をもった和菓子なのでしょうか。

「羊羹のルーツが中国にあることは、比較的よく知られています。古い時代の中国では、羊肉の煮こごりのことを『羊羹』と呼びました。

鎌倉時代に牛肉の煮こごりである『羊羹』が日本に伝来しましたが、当時は仏教思想の関係で動物の殺生(せっしょう)が禁じられていたため、小豆や小麦粉など植物性の素材を使って、中国の『羊羹』をアレンジした食べ物が作られました。

これがいまの和菓子の羊羹の始まりとされています」(笹屋伊織)

水羊羹は昔から夏場に食べられていたのでしょうか。

「水羊羹は、昔はおせちのデザートとして食べられた、冬場の和菓子だったようです。水羊羹は糖度が低くて日持ちしないため、夏場には傷みやすかったためです。

保存技術の発達によって、水羊羹はいまでは“夏の風物詩”といえる和菓子になっています」(笹屋伊織)

水羊羹をおいしく食べるポイントはどのようなものでしょうか。

「やはり水羊羹を冷やして、ひと口サイズに切り分けながらいただくのがおすすめです。そうすると一層、みずみずしくひんやりとした餡子(あんこ)の甘さが口の中に広がります。

さらに、水羊羹にはビタミンB1が多く含まれていますので、疲労回復にも効果があります。夏バテで食欲が出ないときこそ、召し上がっていただきたい和菓子です」(笹屋伊織)

なめらかな口当たりが美味しい、夏場のぜいたくともいえる涼菓・水羊羹。猛暑の夏を少しでも快適にしのぐためにも、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
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参考資料など

取材協力・画像提供/笹屋伊織(本店・京都市下京区)