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夏にオススメの「くずきり」! 「ところてん」と似ているけど大違い?

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2023/07/08 05:00 ウェザーニュース

猛暑の夏に涼を与えてくれる和菓子といえば、水羊羹(みずようかん)などと並んで爽(さわ)やかな味わいと食感が心地よい「くずきり」が挙げられます。

くずきりは見た目も食感もところてんに似た食べ物ですが、実は素材も作り方もまったく異なるものだそうです。くずきりとはどんな和菓子なのか、さらにくずきりのおいしい食べ方などについて、1716年創業の京菓匠「笹屋伊織」(本店・京都市下京区)に伺いました。

「くずきり」と「ところてん」は原料が違う!?

くずきりもところてんも夏にふさわしい爽やかさを感じさせる食感で、見た目もよく似ていますが、それぞれの素材はどのようなものなのでしょうか。

「くずきりとところてんは、確かに見た目はよく似ていますが、まったく別の素材・原料から作られた食べ物です。

くずきりはマメ科のつる性多年草である葛(クズ)という植物を原料としています。葛は8~9月に花を咲かせて、『秋の七草』の一つにも数えられる植物です。

くずきりは、葛の根からとったデンプンを精製した『くず粉』を水に溶かし、熱を加えて固めて作ります。

これに対してところてんは、海藻の一種であるテングサを煮て溶かし、型に流して冷やし固めて作ります。

くずきりとところてんは食感もよく似ていますが、原料が陸生のものと海生のものという大きな違いがあるのです」(笹屋伊織)

和菓子のなかでは水羊羹が、くずきりに近い食感をもっているような気がしますが。

「水羊羹は練り羊羹と同じく寒天と小豆、砂糖が主な原料です。寒天はテングサなどの煮汁を固め、凍らせて乾燥させたものです。

ですから、水羊羹はくずきりよりもところてんに近い食べ物だといえるかもしれません」(笹屋伊織)

奈良県の吉野町で生まれた?

葛という名前にはどんな由来があり、くずきりはいつの時代に作り始められたのでしょうか。

「葛という植物名は、いまの奈良県吉野町にある『国栖(くず)』という地域がくず粉の名産地だったことから、『くず』と呼ばれるようになったと伝えられています。

葛の根には解熱作用があることから、漢方の『葛根湯(かっこんとう)』にも用いられています。標高が高い吉野で、極寒の冬場に地下水で寒ざらしされた100%のくず粉は『本葛』、特に良質のものは『吉野本葛』と呼ばれ、最高品質のくず粉として有名です。

固めたくず粉を麺のように切ることから、くずきりです。くずきりの歴史は古く、江戸時代に庶民の間に広まったといわれています」(笹屋伊織)

プロ直伝、オススメの食べ方

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氷に載せて冷やすのがオススメ
くずきりをおいしく頂くには、どのような食べ方がふさわしいのでしょうか。

「くずきりは和菓子で唯一、箸を使って頂くものです。

まず、器に氷を入れておき、氷の上に常温で保存しておいたくずきりを載せます。そして、箸でくずきりと氷を混ぜていきます。するとちょうどいい感じに氷が解けて、くずきりも冷たくなっていきます。

くずきりが冷たくなったら、上から黒蜜をかけてコロコロとかき混ぜ、箸でつまんで頂きます。ほどよく冷えたくずきりを口にしたときの爽やかな味わいとプルプルした触感が、涼しさを感じさせてくれるでしょう」(笹屋伊織)

くずきりは冷蔵庫で長期間保存すると、固くなる場合があるそうですので注意してください。

夏場はどうしても食欲が減退しがちですが、冷えた爽やかな味わいのくずきりを食べて涼を感じ、蒸し暑さを乗り切っていきましょう。

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参考資料など

取材協力・画像提供/笹屋伊織(本店・京都市下京区)