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梅雨前線による大雨の時期
注意すべき天気図とは?

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2023/06/27 10:52 ウェザーニュース

沖縄や奄美が梅雨明けし、西日本、東日本で大雨となりやすいシーズンを迎えています。

近年に発生した「令和2年7月豪雨」や「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)」、「平成29年7月九州北部豪雨」などはいずれも梅雨前線の影響による豪雨災害です。

こうした豪雨災害を起こし得る、この時期に注意すべき天気図とはどのようなものか、解説していきます。
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大雨災害は7月上旬が最も多い

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消防庁の統計による大雨によって人的被害あるいは浸水などの建物被害が出た事例の回数を見ると、6月中旬までは比較的少なくなっています。6月下旬から、だんだん増え始めて7月上旬にピークを迎えます。そして7月中旬から下旬に向かってまた減っていく傾向です。

7月下旬になると例年、梅雨明けのシーズンを迎えていますので、災害の数は少し減っていくものの、大きな災害自体は時折、発生します。

大雨災害のピークとなるのはまさにこれから7月中旬にかけての梅雨末期と呼ばれるようなタイミングということになります。

梅雨末期に大雨災害が多くなる理由

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同じ梅雨でも6月に比べ7月の方が圧倒的に災害の回数が増える理由としては、一つが梅雨前線自体が活発化して激しい雨が降りやすくなる点。もう一つは梅雨入りしてからのトータルの雨量が多くなっている点です。

1993年の鹿児島市の降水量のデータを見ていきます。この年は記録的な冷夏となって、米の不作により緊急輸入を行なったことを覚えている方もいらっしゃるかと思います。鹿児島市を含む九州南部は5月17日に梅雨入りしましたが、梅雨明けに関しては統計開始以来、初めて特定されないと気象庁が発表しました。

水色で示されたものが日降水量、オレンジ色で示されたものは5月17日以降の積算降水量です。グラフの右側、季節が進むにつれてオレンジ色の積算降水量がどんどん増していることがわかります。そして、星印が付いているタイミングで、人的被害を伴う大きな災害が発生しました。

早い梅雨入りで6月中から立て続けに雨が強まり、一日の降水量が100mm前後に達するような日が多くなりました。それでも6月中は大きな災害が発生していません。しかし、7月に入ると一日の降水量が150mm以上の日が現れ、7月7日に鹿児島県内で大変大きな土砂災害が発生しました。

7月中頃は一旦、小康状態となりましたが、7月終わり頃からは一日に200〜250mmといった大雨によって、相次いで災害が発生しました。7月の鹿児島市の降水量は1,000mmを超えており、地盤が緩んでいる所にまた次の雨が来て大きな災害を引き起こしました。梅雨末期というのは、「それまでに降った雨が地面の中に残り、そこにまた雨が降ってくる。」ということを繰り返すことで、災害の規模がどんどん大きくなるパターンがよく見受けられます。

豪雨災害が起きた時の梅雨前線

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こちらは過去に豪雨災害が発生した時の梅雨前線の位置です。2012年7月は九州北部豪雨、2018年7月は平成30年7月豪雨、いわゆる西日本豪雨の事例です。

また、1982年7月は長崎豪雨と呼ばれる、長与町役場では1時間に187mmという、今も残る日本歴代最高の降水量を観測しました。

この図から前線付近とその南側に入った時に、大きな被害を伴う大雨になるパターンが多いということが見えてきます。

梅雨前線の南に湿った空気が集まる

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前線付近と南側で雨が強まる典型的なメカニズムは、梅雨前線に沿うように大陸から入る暖湿流と、太平洋高気圧の縁をまわる暖湿流が合流し、雨雲が発達するパターンが挙げられます。

多量の水蒸気が次々に補給されて、その集まった先、ぶつかった先で雨雲が猛烈な雨を降らせるほどに大きく発達し、条件によっては線状降水帯が形成されます。

大きな目で見た場合、前線の南側で湿った空気が集まる時は非常に危ないと言えます。
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梅雨前線と台風の組み合わせ

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また、梅雨前線と台風が同時に存在している時も大雨になりやすいパターンです。

今年6月2日の上空の流れを見ると、本州付近には前線が停滞し、沖縄の南東海上に台風2号が存在してました。台風を回る湿った空気が前線に向かって供給され、四国から東海、関東にかけて記録的な大雨に見舞われています。

台風は強さに関わらず大量の水蒸気を含む熱帯の気団(空気の塊)を持っていますので、それが前線に送り込まれることで、雲が発達をします。台風が北緯20度くらいまで北上し、日本付近に前線があった場合は大雨をもたらすようなパターンと言えます。

北緯20度というと沖縄の先島諸島よりも南になり、本州から遠く離れた所に台風がある場合でも前線の活発化につながるのです。

今年は前述のように6月はじめの台風2号の影響で、すでに大雨となった地域があります。それに加えて今後の梅雨前線の活動で再び大雨になると大きな災害につながる懸念が出てきますので、特に警戒をしてください。
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写真:ウェザーリポート(ウェザーニュースアプリからの投稿)
しんさん