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サイダーは実はお酒?ペリーが日本に伝えた?夏の飲み物「サイダー」の秘密

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2023/06/25 05:10 ウェザーニュース

皆さんは、夏の飲み物といえば、何を思い浮かべますか。

麦茶、ビール、アイスコーヒー、アイスティー、スポーツドリンク、冷たい水など、いろいろな飲み物がありそうですね。

炭酸飲料を思い浮かべる人もいるでしょう。

サイダーも炭酸飲料の一つです。サイダーは夏の季語にもなっています。

夏の飲み物のイメージが強いサイダーについて調べてみました。

サイダーはペリーが日本に伝えた?

炭酸飲料は18世紀後半にイギリスで発明されました。炭酸飲料はその後、世界各地に広がり、日本には幕末に伝わりました。

一説によると、1853年、浦賀に来航したアメリカ海軍のペリー一行が、交渉相手である奉行たちに炭酸入りのレモネードを振る舞ったといわれます。

炭酸水に味を付けて作った清涼飲料水であるサイダーを日本で初めて製造・販売したのは、横浜の秋元巳之助(あきもとみのすけ)といわれ、明治時代半ばのことです。

炭酸飲料など飲んだことのなかった当時の日本人は、シュワシュワする飲み物に、さぞ驚いたことでしょう。

国によって異なる「サイダーの意味」

上で「炭酸水に味を付けて作った清涼飲料水であるサイダー」と書きましたが、実はこの「サイダー」という言葉、ちょっとややこしい。国などによって、異なる意味で使われているのです。

サイダーは、英語では“cider”と書きます。ciderの意味はイギリスでは「りんご酒」のことで、これがciderのもともとの意味です。アルコール飲料なのですね。

ところが、同じciderでも、アメリカでは主に「りんごジュース」を意味します。アルコールは入っていません。

ただ、共通しているのは、どちらも「りんご」が入っていることです。

日本でいう「サイダー」は炭酸水に砂糖や香料、酸味料などを加えた清涼飲料水で、りんごが入っているかどうかは関係ありません。

「シードル」という飲み物もありますね。シードルは“cidre”というフランス語から来ている言葉で「りんご酒」を意味し、多くは発泡酒です。イギリスのcider(サイダー)と似た意味です。

日本とイギリスとアメリカの「サイダー(cider)」に「シードル(cidre)」、ややこしいですね。

サイダーはやっぱり夏が似合う

冒頭で書いたように、「サイダー」は夏の季語にもなっています。もちろん、このサイダーには、アルコールは入っていません。

「サイダー」はどうして夏の季語になったのでしょうか。

そもそも季語は、俳句や連歌(れんが)で季節を表すために詠み込むように定められた言葉です。季語を認定する機関などは存在していなく、歳時記の編者が取捨選択しています。

「サイダー」がどういう経緯で夏の季語になったのかはわかりませんが、暑くなってくると飲みたくなる人が増えるし、グラスに注ぐと気泡が立ち、「シュワシュワ」と清涼な音を立てる様(さま)は、いかにも夏のイメージです。

〜サイダーを一息(ひといき)に飲む水平線〜

これは俳人の今瀬剛一(いませごういち/1936年~)氏が詠んだ一句です。

夏の海辺でサイダーを一気に飲み干したのでしょうか。サイダーも、眼前に広がる水平線も、きらめいているのでしょう。

トク、トク、トク、トクッ。
シュワ、シュワ、シュワ、シュワッ。
ゴク、ゴク、ゴク、ゴクッ。
プハーッ。

サイダーには、やはり夏が合いそうですね。
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参考資料など

『まるごとわかる「モノ」のはじまり百科 1 食べ物・飲み物』(監修/山口昌男、発行所/日本図書センター)、『まるごとわかる「日本人」はじめて百科 2 食べ物・飲み物をつくった人』(監修/湯本豪一、発行所/日本図書センター)、『季語の食 夏』(著者/佐川広治、写真/不破行雄、発行所/ティビーエス・ブリタニカ)、『夏井いつきの俳句ことはじめ』(著者/夏井いつき、発行所/ナツメ社)、キリンホールディングス「酒と飲料の文化史」(https://museum.kirinholdings.com/history/cultural/04.html)