6月は食中毒の発生件数が最多
食中毒の発生は、特に6月が多くなっています。
「厚生労働省の『食中毒統計資料』を基に、農林水産省が公表した2022(令和4)年の『病因物質別食中毒発生件数』によると、6月が128件と最多でした。これに次ぐのが10月の120件で、他の月の発生件数は2ケタ台にとどまっています」(山口先生)
食中毒は年間を通じて発生しているようですが、特に6月に多くみられるのはどのような原因があるのでしょうか。
「湿度や気温が高くなる梅雨時期は、細菌が増殖しやすいため、細菌性の食中毒の発生件数が増える傾向にあります。また、これは年間を通していえることですが、アニサキスなど寄生虫による食中毒も多くなります。
一方、冬場はノロウイルスなどウイルス性の食中毒、春や秋には他の時期に比べて、自然毒による食中毒が多く発生しています」(山口先生)
「厚生労働省の『食中毒統計資料』を基に、農林水産省が公表した2022(令和4)年の『病因物質別食中毒発生件数』によると、6月が128件と最多でした。これに次ぐのが10月の120件で、他の月の発生件数は2ケタ台にとどまっています」(山口先生)
食中毒は年間を通じて発生しているようですが、特に6月に多くみられるのはどのような原因があるのでしょうか。
「湿度や気温が高くなる梅雨時期は、細菌が増殖しやすいため、細菌性の食中毒の発生件数が増える傾向にあります。また、これは年間を通していえることですが、アニサキスなど寄生虫による食中毒も多くなります。
一方、冬場はノロウイルスなどウイルス性の食中毒、春や秋には他の時期に比べて、自然毒による食中毒が多く発生しています」(山口先生)
これから注意したい細菌とは?
特に食中毒の原因として注意が必要なのはどのような細菌なのでしょうか。
「食中毒を引き起こす原因となり、特に6月以降の増殖が目立つ細菌として、カンピロバクター、ブドウ球菌、ウェルシュ菌などが挙げられます。
カンピロバクターは、鶏肉の刺し身や半生製品、加熱不足のもの、牛の生レバーなどに存在しています。肉が新鮮かどうかにかかわりなく、市販の国産鶏肉の5~7割がカンピロバクターに汚染されているとの報告があるほどです。
主に下痢や腹痛、嘔吐(おうと)に加え、発熱や頭痛、悪寒などが生じます。潜伏期間は1~7日間とされ、空気にさらされると死滅しますが、10℃以下の場所では生き続けます。
ブドウ球菌は、おにぎりや弁当、肉・卵・乳などの調理加工品など多くの食品に含まれます。症状は悪心や嘔吐など、潜伏期間は30分~6時間、平均3時間で、症状は通常24時間以内に改善します。熱や乾燥に強く、酸性やアルカリ性が強い場所でも増殖するという性質をもっています。
ウェルシュ菌は、肉類や魚介類を素材としたたんぱく食品などに含まれ、腹痛や下痢、吐き気などが生じます。潜伏期間は6~18時間、平均10時間で、酸素のない状態でしか増殖しない性質があり、真空パックや缶詰などでも安心できません。
前日に調理したカレーやシチュー、すき焼きなどの残りを再加熱すると、鍋の中が低酸素状態になってウェルシュ菌が増殖し、食中毒を発症した例も報告されています。また、大量の食材を調理する場合に発生しやすい性質があります。
いずれも湿気が多く気温の高い梅雨どきに活動を活発化させます。食品に混入した有機物汚れや、調理器具や弁当箱などに付着した食品の汚れなどを『栄養』として、増殖していきます」(山口先生)
O157やO111の原因となった腸管出血性大腸菌や、サルモネラ属菌なども注意したい細菌です。
「腸管出血性大腸菌は主に牛肉などの生肉に含まれ、腹痛や液体状の下痢を引き起こし、重症の場合は下血も生じます。サルモネラ属菌は生肉やレバー、卵などに含まれ、下痢や腹痛、発熱や嘔吐を生じます。
魚介類やすしなどに含まれる腸炎ビブリオに加えて、ウェルシュ菌同様に瓶詰や缶詰、真空パック食品などに含まれるボツリヌス菌も、『要注意』といえる細菌です」(山口先生)
「食中毒を引き起こす原因となり、特に6月以降の増殖が目立つ細菌として、カンピロバクター、ブドウ球菌、ウェルシュ菌などが挙げられます。
カンピロバクターは、鶏肉の刺し身や半生製品、加熱不足のもの、牛の生レバーなどに存在しています。肉が新鮮かどうかにかかわりなく、市販の国産鶏肉の5~7割がカンピロバクターに汚染されているとの報告があるほどです。
主に下痢や腹痛、嘔吐(おうと)に加え、発熱や頭痛、悪寒などが生じます。潜伏期間は1~7日間とされ、空気にさらされると死滅しますが、10℃以下の場所では生き続けます。
ブドウ球菌は、おにぎりや弁当、肉・卵・乳などの調理加工品など多くの食品に含まれます。症状は悪心や嘔吐など、潜伏期間は30分~6時間、平均3時間で、症状は通常24時間以内に改善します。熱や乾燥に強く、酸性やアルカリ性が強い場所でも増殖するという性質をもっています。
ウェルシュ菌は、肉類や魚介類を素材としたたんぱく食品などに含まれ、腹痛や下痢、吐き気などが生じます。潜伏期間は6~18時間、平均10時間で、酸素のない状態でしか増殖しない性質があり、真空パックや缶詰などでも安心できません。
前日に調理したカレーやシチュー、すき焼きなどの残りを再加熱すると、鍋の中が低酸素状態になってウェルシュ菌が増殖し、食中毒を発症した例も報告されています。また、大量の食材を調理する場合に発生しやすい性質があります。
いずれも湿気が多く気温の高い梅雨どきに活動を活発化させます。食品に混入した有機物汚れや、調理器具や弁当箱などに付着した食品の汚れなどを『栄養』として、増殖していきます」(山口先生)
O157やO111の原因となった腸管出血性大腸菌や、サルモネラ属菌なども注意したい細菌です。
「腸管出血性大腸菌は主に牛肉などの生肉に含まれ、腹痛や液体状の下痢を引き起こし、重症の場合は下血も生じます。サルモネラ属菌は生肉やレバー、卵などに含まれ、下痢や腹痛、発熱や嘔吐を生じます。
魚介類やすしなどに含まれる腸炎ビブリオに加えて、ウェルシュ菌同様に瓶詰や缶詰、真空パック食品などに含まれるボツリヌス菌も、『要注意』といえる細菌です」(山口先生)
アニサキスなどの寄生虫にも注意
刺し身など生の魚介類に含まれることがあり、年間を通じて細菌を上回る発生件数という寄生虫による食中毒も気になります。
「魚介類を生食するとき、特に注意が必要なのがアニサキス幼虫の寄生です。アニキサス幼虫が生きたまま人間の体内に入ると、食中毒の原因になる可能性が高まります。
アニキサスは線虫と呼ばれる寄生虫の一種です。幼虫は長さ2~3cm、幅は0.5~1mmほどで、白色のやや太い糸のように見えます。サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどに寄生します。
アニサキス幼虫が寄生している魚介類を生や不十分な冷凍・加熱状態で食べると、胃壁や腸壁に入って、アニサキス症と呼ばれる食中毒を引き起こすのです」(山口先生)
アニキサス症にかかると、どんな症状が現れるのでしょうか。
「多くは胃に生じる急性胃アニサキス症で、食後数時間後~十数時間後、みぞおちの激しい痛みや悪心、嘔吐を生じます。急性腸アニサキス症は食後十数時間後~数日後、激しい下腹部の痛みや腹膜炎症状が起きます。
激しい腹痛などが生じ、アニサキス幼虫による食中毒が疑われる際は、速やかに医療機関を受診してください。
また、ヒラメにはクドアという粘液胞子虫が寄生している場合があります。食後数時間ほどで一過性の嘔吐や下痢が生じます。軽症で終わることが多く、発生件数も減少傾向にありますが、ヒラメの刺し身を調理したり食べたりする際には新鮮さへの配慮が必要です」(山口先生)
寄生虫が原因の食中毒を予防するにはどうすればよいのでしょうか。
「鮮魚を丸ごと一尾で購入したらよく冷やして持ち帰り、すぐに内臓を取り除き、内臓を生で食べることは避けてください。
-20℃で24時間以上冷凍された魚介類なら、アニサキス幼虫は死滅していますが、家庭の冷凍庫は-20℃に設定されていない場合もありますので、設定をよく確認してください。中心温度60℃で1分以上加熱しても、アニサキス幼虫は死滅します」(山口先生)
「魚介類を生食するとき、特に注意が必要なのがアニサキス幼虫の寄生です。アニキサス幼虫が生きたまま人間の体内に入ると、食中毒の原因になる可能性が高まります。
アニキサスは線虫と呼ばれる寄生虫の一種です。幼虫は長さ2~3cm、幅は0.5~1mmほどで、白色のやや太い糸のように見えます。サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどに寄生します。
アニサキス幼虫が寄生している魚介類を生や不十分な冷凍・加熱状態で食べると、胃壁や腸壁に入って、アニサキス症と呼ばれる食中毒を引き起こすのです」(山口先生)
アニキサス症にかかると、どんな症状が現れるのでしょうか。
「多くは胃に生じる急性胃アニサキス症で、食後数時間後~十数時間後、みぞおちの激しい痛みや悪心、嘔吐を生じます。急性腸アニサキス症は食後十数時間後~数日後、激しい下腹部の痛みや腹膜炎症状が起きます。
激しい腹痛などが生じ、アニサキス幼虫による食中毒が疑われる際は、速やかに医療機関を受診してください。
また、ヒラメにはクドアという粘液胞子虫が寄生している場合があります。食後数時間ほどで一過性の嘔吐や下痢が生じます。軽症で終わることが多く、発生件数も減少傾向にありますが、ヒラメの刺し身を調理したり食べたりする際には新鮮さへの配慮が必要です」(山口先生)
寄生虫が原因の食中毒を予防するにはどうすればよいのでしょうか。
「鮮魚を丸ごと一尾で購入したらよく冷やして持ち帰り、すぐに内臓を取り除き、内臓を生で食べることは避けてください。
-20℃で24時間以上冷凍された魚介類なら、アニサキス幼虫は死滅していますが、家庭の冷凍庫は-20℃に設定されていない場合もありますので、設定をよく確認してください。中心温度60℃で1分以上加熱しても、アニサキス幼虫は死滅します」(山口先生)
「付けない」「増やさない」「やっつける」が予防三原則
細菌を原因とする食中毒の予防には、どのような方策がありますか。
「食中毒の予防には、細菌を食べ物に『付けない』、食べ物に付着した細菌を『増やさない』、 食べ物や調理器具に付着した細菌を『やっつける』という三原則があります。ウイルスの場合も同様です」(山口先生)
細菌を付けないためには、手洗いが大切です。
「調理を始める前、生の肉や魚、卵などを取り扱う前後、調理の途中でトイレに行ったり鼻をかんだりした後、おむつを交換したり、動物に触れた後、食卓につく前、残った食品を扱う前には必ず手を洗いましょう。
手に付着した細菌は、水洗いだけでは取り除けません。指の間や爪の中までせっけんを使って洗い、十分に水を流して清潔なタオルやペーパータオルでよく拭き取って、乾かしましょう。
また、細菌が生の肉や魚などを切ったまな板などの器具から、加熱しないで食べる野菜などへ付着しないように、使用のたびにきれいに洗い、できれば殺菌してください。焼肉などの際は生肉と焼けた肉をつかむ箸は別のものにしましょう。
食品を保管する際も他の食品に付いた細菌が付着しないよう密封容器に入れるか、ラップをかけるように心がけましょう」(山口先生)
細菌を増やさないための基本は低温で保存することです。
「食中毒の原因となる細菌の多くは高温多湿な環境で増殖が活発になりますが、通常の冷蔵庫の設定温度10℃以下では増殖が遅くなり、冷凍庫の-15℃以下では増殖が停止します。
生鮮食品や総菜などは、購入したらできるだけ早く冷蔵庫に入れてください。それでも細菌はゆっくりと増殖しますので、冷蔵庫を過信せず早めに食べることが大切です」(山口先生)
やっつけるにはどうすればよいのでしょうか。
「加熱処理が必要です。ほとんどの細菌は加熱によって死滅しますので、肉や魚はもちろん、野菜なども十分加熱して食べれば安全です。
特に肉料理は中心までよく加熱することが必要です。温め直しの際も含めて、中心部を75℃で1分以上加熱することを目安としてください。また、電子レンジを使うときはムラがないように均一に加熱されるように注意しましょう。
肉や魚、卵などの調理後の器具は洗剤でよく洗ったあとに、熱湯をかけて殺菌するとより安心です。
時間が経ち過ぎていたり、少しでも“あやしい”と思ったりした食べ物は、思い切って処分することも必要です」(山口先生)
湿気と気温が高い梅雨どきの6月。食中毒予防の三原則を徹底し、健康に留意して過ごしていきましょう。
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「食中毒の予防には、細菌を食べ物に『付けない』、食べ物に付着した細菌を『増やさない』、 食べ物や調理器具に付着した細菌を『やっつける』という三原則があります。ウイルスの場合も同様です」(山口先生)
細菌を付けないためには、手洗いが大切です。
「調理を始める前、生の肉や魚、卵などを取り扱う前後、調理の途中でトイレに行ったり鼻をかんだりした後、おむつを交換したり、動物に触れた後、食卓につく前、残った食品を扱う前には必ず手を洗いましょう。
手に付着した細菌は、水洗いだけでは取り除けません。指の間や爪の中までせっけんを使って洗い、十分に水を流して清潔なタオルやペーパータオルでよく拭き取って、乾かしましょう。
また、細菌が生の肉や魚などを切ったまな板などの器具から、加熱しないで食べる野菜などへ付着しないように、使用のたびにきれいに洗い、できれば殺菌してください。焼肉などの際は生肉と焼けた肉をつかむ箸は別のものにしましょう。
食品を保管する際も他の食品に付いた細菌が付着しないよう密封容器に入れるか、ラップをかけるように心がけましょう」(山口先生)
細菌を増やさないための基本は低温で保存することです。
「食中毒の原因となる細菌の多くは高温多湿な環境で増殖が活発になりますが、通常の冷蔵庫の設定温度10℃以下では増殖が遅くなり、冷凍庫の-15℃以下では増殖が停止します。
生鮮食品や総菜などは、購入したらできるだけ早く冷蔵庫に入れてください。それでも細菌はゆっくりと増殖しますので、冷蔵庫を過信せず早めに食べることが大切です」(山口先生)
やっつけるにはどうすればよいのでしょうか。
「加熱処理が必要です。ほとんどの細菌は加熱によって死滅しますので、肉や魚はもちろん、野菜なども十分加熱して食べれば安全です。
特に肉料理は中心までよく加熱することが必要です。温め直しの際も含めて、中心部を75℃で1分以上加熱することを目安としてください。また、電子レンジを使うときはムラがないように均一に加熱されるように注意しましょう。
肉や魚、卵などの調理後の器具は洗剤でよく洗ったあとに、熱湯をかけて殺菌するとより安心です。
時間が経ち過ぎていたり、少しでも“あやしい”と思ったりした食べ物は、思い切って処分することも必要です」(山口先生)
湿気と気温が高い梅雨どきの6月。食中毒予防の三原則を徹底し、健康に留意して過ごしていきましょう。
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参考資料など
厚生労働省「令和4年(2022年)食中毒発生状況」、同「食中毒の原因と対応」、同「家庭での食中毒予防」