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海水温が上がる時期に注意したい腸炎ビブリオ 対策の決め手は「熱」と「真水」

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2023/05/26 17:44 ウェザーニュース

そろそろ梅雨が始まり、その先には夏が待っています。これからの季節、気をつけたいのは食中毒です。食中毒の原因はさまざまですが、食物に細菌や微生物が付着して引き起こすものが少なくありません。

今回は、そうした夏に多発する食中毒のひとつ、「腸炎ビブリオ」の特性と防ぎ方を、管理栄養士の杉山絢美(すぎやま・あやみ)さんに伺いました。

これからの時期に注意したい「腸炎ビブリオ」

腸炎ビブリオというのは、どんな食中毒菌なのでしょうか。

「腸炎ビブリオは海の沿岸部にいる細菌で、水温が15℃以上になると活発になります。腸炎ビブリオが多い海域で獲れた魚介類に付着して水揚げされ、調理中の不適切な取扱いによって増殖し、人の口に入って食中毒を引き起こすのです。

発生は例年5、6月頃から始まり、7~9月の夏場に集中します。腸炎ビブリオは、ほかの食中毒菌よりも速く増殖できるのが特徴です」(杉山さん)

店や家庭の料理を食べて感染するのでしょうか。

「魚介類を生のお刺身やお寿司で食べた人が、この食中毒を起こします。まな板や調理器具、または手指を介し、二次感染された食品でも食中毒が起こります」(杉山さん)

腸炎ビブリオの症状

どんな症状が起こるのでしょうか。横浜鶴見リハビリテーション病院(横浜市鶴見区)の吉田勝明院長に伺いました。

「8~12時間ほどの潜伏期間の後、激しい腹痛、下痢、吐き気、嘔吐などの急性胃腸炎症状が起こり、頭痛や発熱を起こすこともあります。特に下痢は多いときで日に十数回みられることがあります。潜伏期間は、短い場合2~3時間です。

下痢などの主症状は一両日中に軽快し、回復にむかうことが多いです。高齢者の場合は特に注意が必要で、低血圧や心電図異常などがみられることもあり、過去に死に至った例もあります」(吉田院長)

対策のポイントは?

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これから海水温も上昇し、食中毒菌が増えやすい季節を迎えます。どのように対策すれば良いのでしょうか。

「腸炎ビブリオは、真水・酸・熱に弱く、低温ではあまり増殖しない傾向があります。予防のためには次に挙げる6点を守ってください」(杉山さん)

(1)魚介類は、調理前に水道水でよく洗う
(2)まな板や包丁など、魚介類に使った調理器具はよく洗浄・消毒する
(3)夏季の魚介類の生食は十分気をつけ、わずかな時間でも冷蔵庫(できれば4℃以下)で保存する
(4)冷凍食品を解凍する場合は、専用の冷蔵庫や解凍庫内で行う
(5)加熱調理する場合は、中心部まで十分に加熱する(61℃、10分以上)

「魚介類の下処理のときは、必ず真水(水道水)を使ってください。塩水で洗う人もいますが、腸炎ビブリオなど表皮に付着する微生物は、塩水を好みます(好塩菌)。

一方で真水は腸炎ビブリオに対して殺菌効果があるため、真水による洗浄が有効です。まず表面を真水で洗い、内臓を取り出してからさらに真水で洗うと、食中毒を防げます。

また、ほかの細菌と比較して増殖スピードが速いので、気温が上がるこれからの時期、生の魚介類はわずかな時間でも常温で放置することなく、必ず冷蔵庫内で保存するようにしてください」(杉山さん)

調理士の方々は真水洗いを徹底しているでしょうが、釣ってきたり買ってきたりした魚介類を家庭でさばくときは、塩水で洗わないようにしましょう。

これから、さっぱりしたものがおいしい季節になりますが、お刺身やお寿司を食べる際などは安全に気をつけて食中毒予防に努めていきましょう。