北海道は74%が「はく」、徳島・香川でも39~40%に
アンケートの結果、手袋を使用することは全国では「する」が50%と最も多く、「はめる」29%で2位、「つける」が14%と3位でした。
靴の印象が強い「はく」は7%と全体では少数派でしたが、都道府県別でみると北海道では74%と圧倒的多数を占め、隣接する青森が63%、秋田が20%と、雪が多い地域で比率が高い印象でした。
一方で、比較的温暖なはずの四国の徳島・香川も、39~40%が「はく」と回答しており、意外な高比率を示しています。
これらの地域で手袋を「はく」人が多いのはなぜなのでしょうか。「はく」が高い比率だった香川県の東かがわ市引田で、創業から80年以上手袋を製造し続ける江本手袋の三代目・江本昌弘さんに考察して頂きました。
靴の印象が強い「はく」は7%と全体では少数派でしたが、都道府県別でみると北海道では74%と圧倒的多数を占め、隣接する青森が63%、秋田が20%と、雪が多い地域で比率が高い印象でした。
一方で、比較的温暖なはずの四国の徳島・香川も、39~40%が「はく」と回答しており、意外な高比率を示しています。
これらの地域で手袋を「はく」人が多いのはなぜなのでしょうか。「はく」が高い比率だった香川県の東かがわ市引田で、創業から80年以上手袋を製造し続ける江本手袋の三代目・江本昌弘さんに考察して頂きました。
昔は手袋を手靴と呼んでいた?
手袋は冬の必需品ですが、日本人が手袋を用いるようになったのはいつ頃なのでしょうか。
「防寒具である手袋は昔から愛用されているように思われがちですが、日本における手袋の歴史は意外に浅いのです。外国からいまの手袋のような形をした『グローブ』がもたらされたのは、江戸時代の1640年頃といわれています。
日本で手袋が本格的に作られるようになったのは、明治時代になってからです」(江本さん)
手袋が外国から入ってくるまで、日本ではどのような手の防寒具を用いていたのですか。
「『手甲(てっこう、てこう)』という、腕から手首、さらに手の甲までを布や皮で覆う装身具が主流でした。和太鼓の奏者がよくつけているものです」(江本さん)
防寒よりも、職人さんが機械に袖を巻き込んだり、刃物で切創(せっそう)事故を起こしたりするのを予防することが主な目的だったようです。剣道の『籠手(こて)』もミトンタイプの手袋に似ていますが、手甲同様に防寒ではなく、木刀や竹刀から手をガードするためのものですね。
香川では4割近くの人が手袋を「はく」というようですが、その理由を教えてください。
「実は香川は、明治時代から手袋製造が始まった産地で、現在でも日本で製造される手袋の約90%のシェアを有する、『うどん県』ならぬ『手袋県』なのです。
手甲とグローブでは明らかに形も目的も違いますから、日本語でグローブを表現するのに苦労したと思います。初めてのグローブの日本語訳は、当時舶来の高級品とされた靴にちなみ、『手靴(てぐつ)』とされたと伝わっています。
手にまとうとはいえ靴ですから、使う時は同じように『はく』と表現しました。手靴の呼び方が手袋に変わった後も、香川では『はく』が方言のような形で残ったのではないでしょうか」(江本さん)
「防寒具である手袋は昔から愛用されているように思われがちですが、日本における手袋の歴史は意外に浅いのです。外国からいまの手袋のような形をした『グローブ』がもたらされたのは、江戸時代の1640年頃といわれています。
日本で手袋が本格的に作られるようになったのは、明治時代になってからです」(江本さん)
手袋が外国から入ってくるまで、日本ではどのような手の防寒具を用いていたのですか。
「『手甲(てっこう、てこう)』という、腕から手首、さらに手の甲までを布や皮で覆う装身具が主流でした。和太鼓の奏者がよくつけているものです」(江本さん)
防寒よりも、職人さんが機械に袖を巻き込んだり、刃物で切創(せっそう)事故を起こしたりするのを予防することが主な目的だったようです。剣道の『籠手(こて)』もミトンタイプの手袋に似ていますが、手甲同様に防寒ではなく、木刀や竹刀から手をガードするためのものですね。
香川では4割近くの人が手袋を「はく」というようですが、その理由を教えてください。
「実は香川は、明治時代から手袋製造が始まった産地で、現在でも日本で製造される手袋の約90%のシェアを有する、『うどん県』ならぬ『手袋県』なのです。
手甲とグローブでは明らかに形も目的も違いますから、日本語でグローブを表現するのに苦労したと思います。初めてのグローブの日本語訳は、当時舶来の高級品とされた靴にちなみ、『手靴(てぐつ)』とされたと伝わっています。
手にまとうとはいえ靴ですから、使う時は同じように『はく』と表現しました。手靴の呼び方が手袋に変わった後も、香川では『はく』が方言のような形で残ったのではないでしょうか」(江本さん)
シェア90%の香川県出身者から青森、北海道に広まった?
北海道では「はく」が74%、青森でも63%と高い比率を占めています。
「北海道へ旅行に出掛けたとき、バスガイドさんが『北海道の方言では、【手袋をはく】といいます』と話されたことで、『はく』は方言だったのかと初めて気づかされました。
明治以降の開拓時代に香川から青森で集合したのち、北海道へ渡った人が多かったようです」(江本さん)
確かに、道南の洞爺湖町(とうやこちょう)や道東の斜里町(しゃりちょう)、道北の苫前町(とままえちょう)などにも『香川』という地名が残っています。
「香川からの開拓者が使った『手袋をはく』という言い回しが、手袋の広がりとともに北海道や青森などの人たちにも定着したのかもしれません。
余談ですが、北海道では鶏の唐揚げを『ザンギ』と呼びます。この名前の由来は諸説ありますが、四国の今治市(愛媛県)伝統の鶏料理である『せんざんき』が由来で『手袋をはく』と同様のルートで北海道に伝わったともいわれています」(江本さん)
「手袋をはく」の由来について断定はできませんが、香川の職人が心を込めた手袋が北海道や青森で愛され、「はく」の言い回しも定着したという話はどこかロマンを感じます。
寒い冬の日、暖かな手袋を「したり、はめたり、つけたり、はいたり」するとき、手袋の歴史や技術などについても、思いをめぐらしてみてはいかがでしょうか。
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「北海道へ旅行に出掛けたとき、バスガイドさんが『北海道の方言では、【手袋をはく】といいます』と話されたことで、『はく』は方言だったのかと初めて気づかされました。
明治以降の開拓時代に香川から青森で集合したのち、北海道へ渡った人が多かったようです」(江本さん)
確かに、道南の洞爺湖町(とうやこちょう)や道東の斜里町(しゃりちょう)、道北の苫前町(とままえちょう)などにも『香川』という地名が残っています。
「香川からの開拓者が使った『手袋をはく』という言い回しが、手袋の広がりとともに北海道や青森などの人たちにも定着したのかもしれません。
余談ですが、北海道では鶏の唐揚げを『ザンギ』と呼びます。この名前の由来は諸説ありますが、四国の今治市(愛媛県)伝統の鶏料理である『せんざんき』が由来で『手袋をはく』と同様のルートで北海道に伝わったともいわれています」(江本さん)
「手袋をはく」の由来について断定はできませんが、香川の職人が心を込めた手袋が北海道や青森で愛され、「はく」の言い回しも定着したという話はどこかロマンを感じます。
寒い冬の日、暖かな手袋を「したり、はめたり、つけたり、はいたり」するとき、手袋の歴史や技術などについても、思いをめぐらしてみてはいかがでしょうか。
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